叱るだけではダメ 「ゲームばかりで宿題をしない」子どもの理解と試してほしい工夫とは
子どもがゲームに夢中になってしまい、学校や塾の宿題になかなか手を付けてくれない、とお悩みの保護者の方は多いのではないでしょうか。
「ゲームをやめて宿題しなさい」と声をかけてもやめてくれず、次第にイライラしてきて「いつまでゲームをしているの?」と強めに注意すると、子どものほうは意地になってますますゲームをやめない、という悪循環に陥ることもあるでしょう。ガミガミ言う自分自身を責めてしまうことも含め、親子関係で一層の負担を感じる要因になってしまっているかもしれません。
そこで今回は、子どもがゲームに夢中になって勉強に取り掛からないことが習慣化している場合に、家庭で一度試してみてほしい方法を紹介します。
なぜ勉強に取りかからない状況は生まれるのか
まずは「ゲームに夢中になって勉強に取りかからない状況」を分析してみましょう。
最初はちゃんとゲームを終えて勉強に取りかかることができていた場合でも、量が多すぎる・課題が難し過ぎる・親からできていない点を責められるなど、子どもにとって不快や苦痛を感じる結果が続くと、「楽しいゲームをやめ、楽しくない勉強をする」という行動をする可能性は低くなってしまいます。
一方で、自発的に勉強に取り掛かっているケースでは、勉強をした結果、保護者からたくさん褒められる、問題を解くこと自体に達成感を得られるなど、その子どもにとって良い結果が得られているのではないでしょうか。このような場合であれば、「ゲームをやめ、勉強をする」という行動を繰り返す可能性が高くなるかもしれません。
勉強をしてからゲームという流れを作る
では、ゲームを楽しみながら、勉強をするという習慣も身に付けるためにはどうすればよいのでしょうか。ここでは「プレマックの原理」を適用した具体的な工夫例をあげて考えてみたいと思います。プレマックの原理とは、「低頻度行動の結果として高頻度行動(好きな行動)をさせると、低頻度行動の頻度が増加する」という、行動主義心理学研究者のデイヴィッド・プレマック氏が提唱した理論です。
つまり、「日常でゲームを自然と楽しんでいる子どもに対し、勉強など普段自然には取り組まない行動(低頻度行動)をした結果として、ゲームのような高頻度行動を付随させると、勉強する頻度が高まるのではないか」ということが考えられるわけです。
とはいえ、宿題をしてからゲームをするという理想的な流れをいきなり実現させるのは、相当ハードルも高いと思われます。そこで、誰でも簡単に取り組むことができる以下4つのステップで実践をしてみましょう。
1.子どもに提案し、話し合う
ゲームをしておらず、かつ子どもが比較的気分のよいタイミングで、「宿題をしてからゲームをしよう」と事前に提案をします。提案するときは、「お母さんはこうしてくれると嬉しい」というようにポジティブに気持ちを伝えるようにすると子どもも受け止めやすくなります。子どもが納得しない場合は、無理強いはせず、どういう時間帯や状況であれば取り組みやすいかについて話し合いましょう。
2.効果的な声がけをする
提案の結果、宿題をしてからゲームをすることを約束してくれた場合でも、いざその場面になると「やっぱりゲームをしたい!」となってしまうかもしません。その場合は、スムーズに宿題に取りかかるよう効果的な声がけをすることが大切です。
まずはお説教にならないよう、「落ち着いた声と態度で」「短く具体的に」声がけしましょう。一回の声がけですぐに行動に移すとは限りません。もし「嫌だ!」という応答が返ってきたときは、言い返したりせず、視線をそらしてその場を離れます。そして、しばらく経ってから、改めて穏やかに声がけをしてみましょう。
逆に、どんな小さなことでも子どもが行動しようとしたら、肯定的な注目を与えるということが大切です。例えば、渋々でも教科書を出したら、「早速始めるんだね!」「今日はどんなことをするの?」など承認を与えたり、関心を示したり、子どもの行動を褒めたりといったように肯定的に関わることで、子どもの意欲を高めていきます。
3.小さな成功を積み重ねさせる
ゲームをやめて宿題に取り組むことで、達成感や充実感を得られるなどの「良い結果」がもたらされるのだと子どもが感じられるよう、保護者のほうで工夫をしてあげましょう。例えば、子どもが好きな教科や得意な教科からやらせてみる、苦手な科目や難しい課題はスモールステップで取り組むなど、子ども自身に「出来た」という感覚が得られるような工夫です。この「出来た」という感覚を積み重ねることで、少しずつ自信が持てるようになり、少々ハードルの高いことにも取り組めるようになるかもしれません。
4.宿題が終わったらゲームができるという約束をお互いに守る
子どもが宿題を終わらせたら、親子で約束した時間はちゃんとゲームができるようにしましょう。同時に、「宿題をしない場合はゲームはできない」という約束も守ることが大切です。宿題をするかしないかは子ども次第であり、もしやらなかった場合はゲームをするという結果が得られないだけなので、子ども自身を責める必要もありません。
このステップで、宿題をしてからゲームをする、という習慣も自然と身に付いてくのではないでしょうか。
ゲーム障害が疑われる場合は早めに専門家に相談を
家庭の状況や子どもの特性などによって効果的な方法は当然異なるため、今回紹介させていただいた方法はあくまで一例となります。
なお、これまで宿題や部活、習い事などに取り組めていたにもかかわらず、ゲームを優先してしまい、そのほかの活動が出来なくなった場合やゲームの時間・頻度をコントロールできなくなってしまった場合は、ゲーム障害の可能性も考えられます。心配なときは医療機関や相談機関に早めに相談し、専門家の助言を得てください。
〈引用・参考文献〉
杉山 尚子・島宗 理・佐藤 方哉・Richard W. Malott・Maria E. Malott(1998).行動分析学入門 産業図書
上林 靖子・北 道子・河内 美恵・藤井 和子(2009).こうすればうまくいく発達障害のペアレント・トレーニング実践マニュアル 中央法規出版