公明党の得票は都内で1割減、常勝伝説はなぜ崩れたのか
今回の統一地方選挙では、後半日程において公明党が公認候補者を複数落選させたことが話題になりました。2019年の統一地方選挙では公認候補がすべて当選したことから公明党・創価学会の代名詞である「常勝」が示された結果でしたが、今回は合計12名の候補者が落選したことで、「公明が異例の「大量落選」 東京・練馬区議選で4人、全区議選では擁立152人中8人」(東京新聞)など、メディアでも話題となっています。
特に東京都では練馬区で複数候補が落選するなど、当落ラインの見誤りと思われる事態も発生しました。実際のところ、どのような理由で今回の事態が起きてしまったのか、得票数の減少を可視化しつつ考えていきます。
都内全体で公明党公認候補の得票は1割減
統一地方選挙における公明党公認候補の得票数は、645,524票(2019)から581,278票(2023)と約1割(9.95%)減少しました。統一地方選挙に含まれない市町村もあることから一概に比較できませんが、減少傾向にあることは間違いないようです。
実際に2019年統一地方選挙と2023年統一地方選挙における、市区町村の公明党公認候補の得票数の減少率を可視化したのが上記図です。地域差などがみられるわけでなく、都内全体で大きく減少していることがわかります。2019年よりも得票数が増えたのは、大島町と瑞穂町のみで、それ以外の地域では得票数は減っており、特に中央区では2割近く得票が減っていることが分かります。
支持母体たる創価学会員の高齢化
創価学会の会員には、高度経済成長を支えた当時の若年(中卒)労働者が多いとされています。これは「金の卵」と称された集団就職の人間たちの多くは次男、三男と「家督を継がない」人たちが多かったことで実家の宗教宗派を継ぐ必要がないことから、創価学会がアプローチをして入信させるケースが多かったという流れです。
「金の卵」が流行語大賞を取った1964年は、今から59年前。中卒であれば74歳、高卒であれば77歳となります。年代別投票率は「若いほど投票率が低い」が通説ですが、高齢ほど投票率が高くなるわけではなく、60歳代と70歳代では70歳代の方が投票率が低くなる傾向にあります。このことから、「金の卵」と呼ばれる高度経済成長を支えた創価学会員のコア世代が高齢化を迎え、投票率が下がる世代となったことから、得票数が下がったとみられます。
このこと自体は、なにも創価学会員に限ることはありません。有権者(国民)全体の高齢化により投票所へのアクセスができなくなることで投票率が下がる減少は、特に75歳以上に多くみられる減少です。公職選挙法により、候補者や候補者陣営が有権者を送迎することは認められていませんから、投票したくても投票所に行けない方も多くなっていると思われます。
若い世代が投票に行けば、「票読み」は難しくなる
4月24日に行われた山口那津男代表の記者会見では、「新規参入の陣営が高得票した分、わずかに当選ラインに届かない人が出てしまった。教訓を今後にいかしたい」と敗因分析を総括していました。実際のところ、23区では日本維新の会が躍進したほか、多くの選挙区で候補者が多数立候補して票が分散しつつも、高得票した陣営と低得票した陣営との分散が広がり、票読みがしにくい状況にあったとみられます。
特に若い世代の投票行動は地上戦ではなく空中戦の影響を受けやすく、また地域コミュニティなどと関わりの無い中での投票行動ということから票読みがしづらく、投票率も読み違えてしまえば当落ラインを誤ることになります。統一地方選挙の前半日程と異なり、電話による情勢調査などが行われない後半日程では、支持者の拡大と積み上げのみで「票読み」をすることからも、このような事態が発生したと言えるでしょう。
更に4年後の統一地方選挙では、いわゆる団塊の世代が80歳近くになることから、更に高齢者の投票率が下がることが想定されます。一方で若い世代が政治的関心を高めて投票率を上げることができれば、全体の投票率を維持しつつ、投票全体における若い世代の得票割合が増え、いわゆる「シルバー民主主義」からの脱却もできることでしょう。公明党は創価大学をはじめとすうる教育機関を持つなど、若い世代との接点もあります。今後、若い世代こそが、選挙における「ダークホース」から「メインストリーム」に代わっていくことは間違いないことですから、各党各陣営が若い世代にどのようにアプローチするかが問われていくことでしょう。