ボーイングが宇宙事業から撤退か 業績不振のスターライナー、長期化するストライキ
本記事では、ボーイング社で発生しているストライキをはじめ、スターライナーの売却、SLSロケットの今後の行方などを解説していきます。
■不具合が続いたスターライナーを売却か
苦境が続くボーイング社ですが、宇宙事業の売却が検討されている旨が報道されました。現在ボーイングでは、労働組合によるストライキも長期化しており、混乱状態が続いています。インフレによる物価上昇の中、ボーイング社の賃上げが実現しないことで、労働者はストライキを決行。経営層は35%の賃上げ案を提示しましたが、それが拒否されたことで益々混迷を極めています。
売却の検討がされているのは、新型の有人宇宙船「スターライナー」です。度重なる不具合から不採算事業の一つとなっており、売却をすればこれ以上の損失を抑止することができると見られています。
■宇宙飛行士をISSへ運んだが無人で地球に帰還
2024年6月5日、ボーイング社の新型宇宙船「スターライナー」が打ち上げられ、宇宙飛行士2名が国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングにも成功します。
しかし、燃料漏れやスラスターの突然停止など、様々なトラブルが発生し、本来8日間であったミッションは長期化していました。そして、スターライナーによる宇宙飛行士の地球帰還は断念され、スターライナーは9月7日に無人で地球へ帰還したのです。そして、ISSに残された宇宙飛行士は今後、スペースX社が運用している「クルードラゴン」で地球へ帰還することが決定されています。
■SLSロケットの開発は継続する見通し
一方、ボーイングが担当しているSLSロケットの開発事業は今後も継続する見通しのようです。
SLSロケットはNASAが主導する有人月面探査計画「アルテミス」のために開発された巨大ロケットです。SLSとは「スペース・ローンチ・システム」の略語です。全長は111.3m、直径は8.4mで、22階建てのビルに相当します。アポロ計画で活躍したサターンVロケットに次ぐ、世界最大級のロケットです。打ち上げ形態によっては、130トンもの重量物を地球低軌道上に飛ばすことができます。
2022年11月16日、SLSロケットの最初の打ち上げとなる「アルテミス1」が行われ、メインペイロードに無人の新型有人宇宙船であるオリオンと、10個の超小型衛星を搭載し打ち上げに成功しました。続く「アルテミス2」では、2025年9月に宇宙飛行士4名が月周回飛行を行い、地球へ帰還します。そして、2026年9月には「アルテミス3」でいよいよ半世紀ぶりに人類が月面へ降り立つことになります。
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