幻の次世代スペースシャトル計画「ベンチャースター」燃料タンク軽量化に苦戦し、惜しまれながらも計画凍結
本記事では、NASAがスペースシャトルの後継機として開発していた「ベンチャースター」について解説していきます。ベンチャースターが切り拓くはずだった宇宙開発の未来、そしてその苦難の開発の歴史について詳しく見ていきましょう。
■約30年の間大活躍したスペースシャトル
皆さんも良くご存知のスペースシャトルは、初めて打ち上げられたのは1981年で、それから2011年までにかけて合計135回の飛行ミッションを行いました。より低コストで、繰り返し使用可能な宇宙船として計画され、国際宇宙ステーションやハッブル宇宙望遠鏡をはじめ、多くの成果をあげています。
初飛行からすでに20年を超えた機体は老朽化が進み、アメリカはスペースシャトルの退役を決定。 残されたほんのわずかなミッションで国際宇宙ステーションを完成し、2011年に運用を停止しました。
■次世代スペースシャトルとして開発が始まった「ベンチャースター」
そして、スペースシャトルが運用されている1990年代には、その後継機として「ベンチャースター」計画が始動していました。 ベンチャースターの主な目的は、スペースシャトルの後継機として、人工衛星を既存の10分の1のコストで打ち上げられる再利用型で無人のスペースプレーンとなることです。無人での打ち上げが条件でしたが、積荷として乗客を運ぶことも予想されていています。
ベンチャースターの機体形状は、機体に揚力が発生するように工夫されたリフティングボディであり、4枚の尾翼を持つ機体が構想されています。全長46m、全幅48m、総重量1,192tで、最高速度はマッハ25に到達する見込みです。機体は垂直に離陸し、飛行機のように滑走路に着陸します。機体中央部に貨物室を持ち、胴体背面にカーゴ・ベイが設置されています。
耐熱装置も金属製の新型のものを採用し、スペースシャトルよりも整備が低費用で安全であることを目指しました。
■技術的課題を克服できず、残念ながら計画凍結へ
そして1996年より、無人実験機となる「X-33」の開発がNASAとアメリカ、ロッキード・マーティン社の共同で始まりました。
当初は1999年の初飛行を目指していました。試験はエドワーズ空軍基地に専用施設を建設し、そこで打ち上げを行なうことが予定され、15回の飛行が計画されていました。しかし、幾度となく大きな技術的な壁にぶつかります。
まず、燃料タンクに亀裂が発生するなどの不具合が発生。軽量のグラファイトエポキシ複合材からアルミニウム合金に材質を変更するという事態に見舞われます。その他にも、推進装置であるリニアエアロスパイクエンジンにも想定を超える圧力がかかり、歪みが大きくなるという問題も発生します。
その結果、重量過多と技術的困難を克服することができず、残念ながら2001年3月にX-33の開発は中止となり、ベンチャースターの開発も凍結となりました。
その後、様々な後継機案が検討されてきましたが、NASAのXシリーズは実現することはありませんでした。やはり、宇宙往還機の開発というのは非常に困難ということですね。
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