中間決算で117億円の黒字を発表のJR北海道 いったいなぜ!?そのからくりとは
営業収益はコロナ前の94%まで回復も本業の赤字額は213億円
2023年11月13日、JR北海道は中間決算での純利益が117億円の黒字になることを発表した。中間決算が黒字となるのは2年ぶりとなり、北広島市の北海道ボールパークの開業効果や空港アクセス輸送が好調で鉄道運輸収入が増加したことが理由にあげられる。しかし、JR北海道の本業の儲けを示す営業利益は213億円の赤字となっており、黒字決算となったのは、経営安定基金の運用益や国からの支援金が大きなウエイトを占めており、一般的な民間企業とは同じイメージでとらえることはできない。
JR北海道の営業収益は、コロナからの回復もあり前年度中間決算の350億円から429億円となり、新型コロナウイルスの影響を受ける前であった2019年度の94%にまで回復した。鉄道運輸収入については、特急列車による都市間輸送のほか、富良野美瑛ノロッコ号などの観光列車。さらに、インバウンド旅客収入などいずれも好調だった。
営業費用は電力費高騰の影響や安全対策のための修繕費が増加したことにより、前年度の611億円から642億円に増加。関連事業を含めた本業の赤字額は前年度の261億円から213億円に48億円圧縮されたが、本業は依然として赤字決算であることには変わりはない。
背景には、国からの手厚い支援
JR北海道の生命線を握る経営安定基金については、2021年7月より6822億円のうち2970億円を(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構に貸し付けており、年5%の利息を受け取ることにより財政支援を受けてるほか、円安株高も影響し38億円増加。さらに国からの支援金75億円などを計上した結果、最終的に中間決算で117億円の黒字を計上できることとなった。
JR北海道の黒字決算の背景には、コロナからの回復による79億円の売上の増加ももちろん関係はしているが、それ以上に、経営安定基金の運用益の増加分と国からの支援金によるところが大きい。また、前年度の中間決算で鉄道の廃止の合意に至った留萌本線にかかる諸費用27億円が特別損失として計上されており、こうした特別損失がなくなったことも黒字決算への影響を与えている。
赤字路線廃止での業績への影響は軽微
赤線区に指定されていた留萌本線の石狩沼田ー留萌間については、年間約9億円の赤字が出ているとされ2023年3月31日限りで廃止されたが、留萌本線の廃止による人件費、動力費、修繕費などからなる営業費用への影響は軽微だ。特に人件費については変化はなく、動力費、修繕費については、営業路線が縮小しているにもかかわらず増加傾向にある。
JR北海道は1987年の国鉄分割民営化時に、年間約500億円の赤字額が適正とされ、その金額を経営安定基金の運用益で穴埋めすることで制度設計された会社で、本業が黒字化することはそもそもは想定されていなかった。しかし、バブル経済が崩壊した1990年代半ば以降、国の低金利政策によって日本は低金利時代に突入し経営安定基金の運用益が大幅に減少し2010年代に深刻な経営危機が表面化したことは2023年10月22日付記事(JR北海道が経営不振に陥った根本原因は何か 発足当初の適正赤字額は年間500億円とされていた)ことは詳しく触れたとおりだ。
昨今、深刻化するバスドライバー不足の影響により、鉄道を廃止した際の代替交通がいつまで持続できるのか、問題が表面化している。さらに、国土交通省では、ドライバーの残業規制が強化される2024年問題を前に、今後10年間で鉄道貨物の輸送量を倍増させる方針を発表した。
こうした状況の中で、今後、さらに北海道の鉄道路線の廃止が進むことになれば、鉄道代替交通を確保しなければならない自治体側で別の行政コストがかさむことや、物流への影響も心配される。さらに、鉄道路線の廃止は、一時的に多額の特別損失を計上することになるほか、その後の業績への影響も軽微であるということであれば、もともと国鉄から引き継いだ北海道の鉄道路線を維持することを前提に本業の黒字経営が求められおらず、現在でも国からの多額の支援により経営を維持しているJR北海道は、今ある路線をすべて活かし関連事業との相乗効果を追求することでグループ全体での売上増加を狙ったほうが、経営改善と地域活性化の両立を図ることができるのではないだろうか。
(了)