叩けばホコリの出る菅・二階連合軍vs安倍・麻生連合軍の戦い
フーテン老人世直し録(536)
長月某日
コロナ禍がなければ東京五輪の閉会式が行われたはずの8月9日、毎日新聞朝刊は1面トップで「ジャパンライフ立件へ」という記事を掲載した。マルチ商法で全国7千人から2千億円を騙し取ったジャパンライフの山口隆祥元会長らを警視庁が詐欺容疑で8月下旬に逮捕する方針を固めたという記事である。
そして社会面では国立公文書館が前日の8日に2006年の小泉政権下での「桜を見る会」の招待者名簿を初めて公開した記事を掲載し、総理の招待者枠の整理番号が「60」であることを指摘した。
ジャパンライフの山口元会長が2015年の安倍政権下での「桜を見る会」に招待された時の整理番号は「60」である。安倍総理からの招待であることが証明されたことになる。山口元会長はその招待状の写真を広告に使って詐欺を働き多くの国民が被害を受けた。
この2つの記事から、警視庁と国立公文書館は時を同じくして安倍総理に不利な情報を流したことになる。8月下旬まで総理を続けていれば「桜を見る会」疑惑が再燃し、山口元会長との関係が追及されることは必至の情勢だった。
すると安倍総理は、1週間後の17日に、車列を組んで仰々しく病院を訪れる様子をメディアに取材させ、7時間半も病院に滞在した。6月に人間ドックを受けた後の追加検査という説明だが、フーテンは病気を理由に国民の同情を引き、追及を逃れようとするのではないかと見ていた。
一方、公明党の山口代表は7月22日に日本記者クラブで記者会見し、麻生副総理兼財務大臣が安倍総理にけしかける解散・総選挙について否定的な見解を述べた後、安倍内閣の支持率の低さについて記者から質問を受けると、「それは安倍総理の個人的な問題でしょ」と言った。
つまり「モリカケ桜」という安倍個人のスキャンダルが問題なので、連立政権が批判されているわけではないとの立場を鮮明にしたのである。ブログにも書いたがフーテンはその発言に驚いた。連立を組む政党の代表がこれほど総理に冷たい態度を見せるのは儀礼上ありえない。公明党が総理を見限ったと思わせる発言だ。
その直後の8月6日発売の「週刊文春」には「安倍晋三コロナでも五輪強行指令」の記事が出た。安倍総理は祖父の岸信介が東京五輪招致に成功しながら安保条約改定で退陣を余儀なくされ、開催の時の総理になれなかったのを超え、自分は「招致も開催も」総理としてやるため、不完全な形でも良いから知恵を絞れと各省庁の局長級を集め、9月からプロジェクトチームをスタートさせるという。異様な執念を感じさせる記事だ。
この記事のネタ元はそうはさせたくない霞が関の官僚からだとフーテンは思った。そこに前述の毎日新聞の記事が重なり、フーテンは政治の底流で安倍退陣への動きが始まったと感じた。
従ってフーテンの見方は、追い詰められた安倍総理が少なくも8月初旬には退陣を決意し、同情を引く形の演出を今井尚哉総理秘書官兼補佐官が考えて振り付けた。そして8月下旬に突然の退陣表明を行い、叩けばホコリが出るからコントロール可能と考える菅官房長官に後継を託した。
警視庁によるジャパンライフ摘発はそれによって時期がずれ、菅内閣誕生後の9月18日になった。これからの政局は、菅・二階連合軍と安倍・麻生連合軍の双方が相手を叩いてホコリを出す構えをみせ、牽制し合う情報戦が展開されるとフーテンは予想する。
その見方からすると、ジャパンライフ元会長と安倍晋太郎・晋三親子のスキャンダラスな関係は、無関係の菅総理にとっては都合が良い。それを見越して警察を監督する国家公安委員長に兄弟同様の小此木八郎氏を就任させたのではないかとフーテンは考えた。
山口元会長は政界のタニマチで、中でも中曽根康弘、安倍晋太郎の両氏を特に支援していた。安倍晋太郎氏は「政界往来」という雑誌で山口元会長と対談し親密ぶりを披露している。その安倍外務大臣が1984年の国連総会に出席するためニューヨークを訪れた時に山口元会長がお供したことを国会で安倍外務大臣は認めた。
その外遊には安倍晋三秘書も同行している。外務大臣一行は日本航空を使って往復したから日本航空の乗客名簿を見れば山口元会長が同行していた事実は確認できる。この詐欺事件の捜査がどのような事実を明らかにするのか、あるいはしないのか、フーテンは政局の動向と絡めて注視している。
対抗上の動きも早速出てきた。菅内閣誕生に伴い「週刊新潮」や「週刊文春」には菅総理の人脈と金脈が掲載された。一人は横浜で港湾荷役業を仕切る「藤木企業」の藤木幸夫会長、もう一人はパチンコ機器メーカー「セガサミーホールディングス」の里見治会長である。
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