札幌リーディングを獲得したレジェンド・武豊、彼の勝利を皆が喜ぶその理由は?
初の札幌開催リーディング
レジェンド武豊がまた1つ打ち立てた金字塔に、ジョッキー仲間や大勢のファンの誰もが喜び、笑顔で祝福した。
9月1日に終了した今年の札幌開催で、武豊は17勝をマーク。函館と合わせた北海道リーディングを獲得すると共に、札幌開催でのリーディングにも輝いた。デビュー38年目で初の札幌リーディングだが、そもそもJRA最北の競馬場にフル参戦するようになったのがここ何年かの話。本人は苦笑しながら、言う。
「開催リーディング自体は初めてではないですからね。若手が頑張る所で大々的に表彰されてしまい、少し恥ずかしいです」
以前は夏といえば海外にいる事が多かった。1998年にはシーキングザパールを駆ってフランス・ドーヴィル競馬場で行われたモーリスドゲスト賞(GⅠ)を優勝。日本調教馬初の海外GⅠ制覇をサポートした。それ以降も夏は毎年のようにドーヴィルを中心にヨーロッパで暮らす事が多かった。
「ドーヴィルは街自体が可愛いところだし、海外の競馬に参戦する事で、刺激にもなります。勿論、技術的な向上もあるでしょうから、毎年、行っていました」
流れが変わったのは2019~20年くらい。この頃から始まった新型コロナ騒動で国境を跨いでの行動が制限されたため国内での騎乗に専念。当初は小倉競馬に参戦していたが、暑さもあって主戦場を北海道に変更した。
「最近やっとアウェー感がなくなってきたかな……」
笑いながらそう言うのはそういった理由があったからだ。
誰もがレジェンドの勝利を喜ぶ理由
そんな中で獲得した今回の開催リーディング。改めてのエピソードを本人が口にする。
「リーディングを取れた事も良かったけど、それよりもフル参戦した事であまり一緒に乗らない関東の若いジョッキーと交流出来たり、乗った事のない調教師の馬に乗ったり、久しぶりに依頼された厩舎もあるし、そういった刺激があったのが良かったです」
また、競馬場に滞在していたからこそ、分かった事があったと続けた。
「週末の競馬場にしかいないと分からないけど、平日にもいると、開催日の何日も前から沢山の人達が週末へ向けて色々な準備をしてくれているのに気付きました」
自分が開催リーディングを獲得出来たのは、オーナーや調教師、厩舎スタッフといった直接的に馬に関わった人達だけではなく、表には出て来ないそういう人達のお陰でもあると改めて強く感じたそうだ。
開催リーディングを取っても、GⅠをいくつ勝っても、1つ勝つたびにJRA最多勝記録を更新しても、国内外でレジェンドと呼ばれる存在になっても、日の当たらないところにまで目を配る事が出来る。だからこそ、武豊の勝利を誰もが喜ぶのだろう。秋は海の向こうから皆を喜ばせてくれるかもしれないレジェンドから、ますます目が離せそうにない。
(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)