友近さん(本人)、「西尾一男」の商標登録を断念か?
3年前に「友近さん(本人)、”水谷千重子”(および、”西尾一男”)を商標登録出願」という記事を書きました。お笑い芸人の友近さんが自身のネタキャラクターである「水谷千重子」(ベテラン演歌歌手の設定)と「西尾一男」(普通のおっさんの設定)を「演劇の上演」等を指定役務にして商標登録出願していたというお話です。なお、出願人が事務所(東京吉本)ではなく、本人個人名義である理由は不明です。
その後、「水谷千重子」については、拒絶理由通知に対して、水谷千重子氏の承諾書を提出した後に、2021年2月16日に無事6352483号として登録されています。
しかし、「西尾一男」につうては、拒絶理由通知に対して西尾一男氏の承諾書を提出したにもかかわらず、拒絶理由が解消されていないとして2022年3月14日に拒絶査定となりました。その後、同じ商標が2022年6月10日に商願2022-66770として再出願されたことが商標速報botにより明らかになっていたのですが、なぜか、まだ特許情報プラットフォームには掲載されていません。
今までに何回も書いていますが、これは他人の氏名を含む商標を登録しないとする商標法4条1項8号によるものです。おそらくは、水谷千重子の同姓同名者は少ない(ひょっとすると、友近さん本人による「水谷千重子」が著名な芸名と判断された可能性があります)ので、承諾書を出すのは容易(あるいは本人が本人に対して承諾書を出せば解決)であったのに対して、西尾一男の同姓同名者は比較的多かったため全員の承諾書をもらうことができなかったのではないかと思います。
この審査段階での同姓同名者のチェックはハローページ等を使って行うようです。たとえば、「マツモトキヨシ」は音商標としては知財高裁でなんとか登録を認められたものの、今後文字商標を追加出願すると現状のルールでは4条1項8号により拒絶されてしまうでしょう(なお、登録から5年経てば4条1項8号を理由に商標が無効にされることないので既登録分は大丈夫です)。
他にも著名なファッションデザイナーの人が自身のブランドを商標登録したくてもできない等、4条1項8号の規定が現実的でなくなっているとの批判が増していました。しかし、日経の報道によると、特許庁は、他人の氏名が著名でない限り登録を許す方向性での商標法改正を進めるようです。この改正が行われれば、西尾一男も無事登録されるでしょう。友近さんのみならず、ファッション業界や芸能界でこの改正を待ち望んでいる方は多いと思われます。