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代表ウイングの起用。乾、小林悠がいても、 ハリルは原口、浅野なのか

杉山茂樹スポーツライター
昨年末 代表デビューした右ウイング・伊東純也(柏レイソル)(写真:つのだよしお/アフロ)

はたして、日本代表メンバーとしてロシアW杯に出場できるのは誰なのか。今回は最大の激戦区とも言える、サイドアタッカー(ウイング)について検証する――。

◆代表入りの可能性(4枠)

80%=乾 貴士(エイバル/スペイン)

60%=小林 悠(川崎フロンターレ)

50%=伊東純也(柏レイソル)

45%=久保裕也(ゲント/ベルギー)

45%=中島翔哉(ポルティモネンセ/ポルトガル)

40%=原口元気(デュッセルドルフ/ドイツ)

35%=武藤嘉紀(マインツ/ドイツ)

30%=浅野拓磨(シュツットガルト/ドイツ)

10%=宇佐美貴史(デュッセルドルフ/ドイツ)

5%=家長昭博(川崎フロンターレ)

 昨年11月の欧州遠征には、原口元気(デュッセルドルフ/ドイツ)、乾貴士(エイバル/スペイン)、久保裕也(ゲント/ベルギー)、浅野拓磨(シュツットガルト/ドイツ)が、国内組主体で臨んだ12月の東アジアE-1選手権には、伊東純也(柏レイソル)、土居聖真(鹿島アントラーズ)、倉田秋(ガンバ大阪)、小林悠(川崎フロンターレ)が、それぞれ選ばれている。

 この中で土居と倉田は、攻撃的(高めの)MFのほうが適しているのではないかということで、その回(※3月3日配信。第2回:攻撃的MF編「本田圭佑、香川真司を押しのけて、ロシアW杯に行ける攻撃的MFは誰だ」)ですでに可能性を探っている。本田圭佑(パチューカ/メキシコ)もしかり。ここでは触れないが、多くのポジションをこなす多機能型は、1箇所しかできない選手より、有利であることは言うまでもない。

 土居、倉田以外では、小林にユーティリティな魅力がある。東アジアE-1選手権でも4-3-3のCF(センターFW)として2試合先発を飾る一方で、4-2-3-1の「3」の右でも1試合、先発を果たしている。ウイング兼ストライカーだ。

 今季の川崎でも、昨季の得点王にもかかわらず、これまで4-2-3-1の「3」の右で先発を重ねている。2つのポジションを兼ねることができる小林。彼が23人のメンバーに加われば、余剰が1人生まれることになり、その1人分の枠を他に回すことができる。

 浅野も、代表でCFとしてプレーした経験がある。しかし、そこに適性があるとは思えない。2トップの一角ならわかるが、3FW系の1トップとなると厳しい。現状では、右サイド単独での候補と見るべきだろう。

 だが、所属のシュツットガルトでは、年明けからスタメンはおろか、サブでも試合に出場できずにいる。「海外組」というブランド力も手伝い、これまでは小林に対して優位なポジションを築いてきたが、苦しい立場になりつつある。

 右サイドで浅野と五分五分の戦いをしてきた久保は、ゲントでコンスタントにスタメンの座を維持している。しかし代表で、ここのところいいプレーができていない。W杯アジア最終予選の前半部分で見せたような驚きを、見る側に提供できなくなっている。

 久保も適性は2トップにある。その一角こそがベストポジションだが、ハリルジャパンの基本布陣は3FW。浅野同様、そのギャップに苦しんでいるという印象だ。

 そのライバルとして急浮上してきたのが、同い年生まれの伊東だ。東アジアE-1選手権で代表初招集。中国戦、韓国戦でスタメン出場を飾った。右サイドのスペシャリストは長い間、代表に存在しなかった待望久しい人材だ。

 柏の一員として、今季アジアチャンピオンズリーグに出場。不足しがちだった経験も積んでいる。先の傑志(香港)戦では決勝ゴールも挙げた。

 右利きの右ウイング、しかも縦に抜いて出ようとするこのタイプは、世界的に見てもかなり希少だ。バロンドール級のスターはフィーゴ以来、現れていない。右利きの選手にとって、そこは難易度の高いポジションなのだ。

 というわけで、伊東がもうワンランク上の選手に育てば、日本の売りになる。ハリルホジッチはそれに気づいて、抜擢することができるだろうか。

 右サイドは、かつて左利きの本田がスタメンだった。ボールはそこによく収まり、安定したクロスボールの供給も見込めるなど、攻撃の基点になっていた。昨季のJリーグでは、本田と同い年の家長昭博が右サイドで構える左利きとして活躍。川崎Fの優勝に貢献した。

 本田の代表復帰なるかに世の中の注目は集まりがちだが、家長という声がまったく出ないのはどういうわけか。本田のようなパワフルさはないが、細やかさという点では上だ。

 今季のポジションがそうであるように、家長は左で構えることもできる。パスワークの安定には欠かせない人材だが、ハリルホジッチはそうした川崎F的なサッカーをあまり好まない。惜しい選手で終わってしまう可能性は高い。

 しかし、それでいいのだろうか。小林をはじめ、MF大島僚太、DF谷口彰悟、DF車屋紳太郎など、ボーダーライン上の選手を多数抱える川崎Fのファンは、ハリルホジッチにプレッシャーをかける必要がありそうだ。サッカー先進国なら、起きていても不思議ではない現象である。

 右利きの右ウイングでは、スピード豊かな横浜F・マリノスの遠藤渓太も気になる若手(20歳)だ。攻撃的(高めの)MF編でも触れた鹿島の安部裕葵(19歳)も、右ウイングでプレーできる。さらに言えば、左でも可能だ。

 今回のロシアW杯は、結果の追求もさることながら、若手の登用に力点を置くという選択もある。

 1998年フランスW杯に臨んだ日本代表の平均年齢は25.3歳だった。その中には、当時18歳だった小野伸二も含まれていた。昨年11月の欧州遠征に参加した日本代表が27.4歳なので、現代表はフランスW杯のときより2歳以上も高齢化している計算になる。

 2002年W杯のベスト16は、1998年フランス大会に多くの若手を登用した産物に他ならない。力が接近しているなら若手を選べ。循環することが宿命づけられている代表チームの、これはセオリーでもある。

 左サイドの争いは海外組中心だ。

 ハリルホジッチのお気に入りは原口だ。乾は、所属のエイバルでそれ以上の活躍をしても、なかなか代表に呼ばれなかった。昨季終盤のスペインリーグで、バルサ相手に2ゴールを奪う活躍を見せて初めて、招集された格好だ。また、昨年11月に行なわれた欧州遠征でも、所属クラブでの明暗が大きく分かれているにもかかわらず、スタメンを飾ったのは2試合(ブラジル戦、ベルギー戦)とも原口だった。

 所属のデュッセルドルフで今季、これまでたった229分しか出場していない(3月8日現在。以下同)原口が、この2試合で計148分間も出場した。対して、現在スペインリーグ8位のエイバルで、今季すでに2074分間も出場している乾には、交代出場のみの32分間しかチャンスが与えられなかった。

 スペインリーグは、UEFAリーグランキングで断トツの首位をいく欧州の盟主だ。対するブンデスリーガは同3位。デュッセルドルフはその2部チームだ。3月23日にマリと、3月27日にウクライナと対戦する今回の欧州遠征でも、普通なら選外が順当な原口を使い続けるつもりなのか。

 乾と競わせる相手は、原口と同じドイツでも1部のマインツで奮闘する武藤嘉紀(※チームはブンデスリーガ16位。1568分間出場し7ゴールを記録)であるべきだろう。

 さらに、その次に来るべきは、ポルトガルリーグ(UEFAリーグランキング7位)のポルティモネンセ(現在リーグ12位)で、チーム2番目の9ゴールを叩き出している中島翔哉が妥当だ。

 3番手は、原口と同じデュッセルドルフに所属し、703分間出場している宇佐美貴史になるが、この選手も一時期、ハリルホジッチが寵愛した選手だった。

 突っ込まなければならないポイントだと思う。監督にとって、好き、嫌いが選考の重要な基準になることは理解できる。だが、そうであるなら、ハッキリとそう口にすべきだ。それでも原口を選ぶ理由を、堂々と語ればいい。

 こちらのインタビューに「私はいくら侮辱されても構わない。だが、それでもキミたちが、私の好みを変えることはできない」と述べたのはイビチャ・オシムだが、それくらいパワフルな言葉は吐いてくれないと、諸々のバランスは取れないのだ。

第3回・守備的MF編はこちら>>

第2回・攻撃的(高めの)MF編はこちら>>

第1回・センターバック編はこちら>>

(集英社 webSportiva 3月9日掲載)

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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