筆者が住む市街地にまで“まさかの避難命令と夜間外出禁止令” 高級住宅地はまるで戦場に ロス山火事現況
セレブも多数居住する高級住宅地パシフィック・パリセーズで発生した山火事をはじめ、7日から8日にかけて6件もの山火事に襲われたロサンゼルス。同地がこれほど大規模な山火事に襲われたことは、筆者が何十年も居住してきた限りにおいては、これまでなかった。気象予報会社アキュウェザーによると、山火事による経済的損失は500億ドルを超えると推定されており、米国で最も損害額の大きい自然災害の一つとなる。
“まさか”は起き得るということ
今回の山火事の大きな特徴は、火の手がサンタモニカやハリウッドといった、人口が多い市街地に迫ったことだ。山火事というと、これまでは、ビーチタウンであるマリブの山間部や内陸の山間部など木々が密集する森林地帯で発生することが多く、人口が多い地域にまで及ぶことはほとんどなかった。そのため、アパートやコンドミニアムなどの建物が密集しているサンタモニカの平地に住む筆者は、マリブで山火事が発生したとしても、まさか、さすがにここまでは火の手は迫って来ないだろうと、山火事をあまりリアルには感じていなかったところがある。
しかし、甘かった。今回、山火事が発生したパシフィック・パリセーズはサンタモニカのすぐ北にある地域。車で10分もあれば行ける、筆者も時々訪ねるショッピング・ビレッジがある、とても慣れ親しんでいた地域だ。その近さから、サンタモニカ市は「地域非常事態宣言」を行い、避難命令区域に対し、日没から日の出までの夜間外出禁止令を出した。筆者の住まいは当初は発令の対象区域に入っていなかったが、山火事が拡大する中、避難勧告区域に指定された。しかも、避難命令区域まで2ブロックもない。“まさか”の事態は起き得るのだということを今さらながら実感している。
高級住宅地はまるで戦場に
サンタモニカ市では大きな被害は出ていないようだが、今も鎮火が進んでいないパシフィック・パリセーズは50~75%が焼失したという報もある。実際、上空から写し出されたパシフィック・パリセーズは焼け野原だ(下の動画)。その光景を戦場と表現したり、爆撃を受けた跡のようだと表現したりしているメディアもある。同地は17,000エーカー以上が焼失したのだ。街がまるごと消失してしまったといっても過言ではないかもしれない。緑豊かだった美しい住宅地の面影は微塵も感じられない。住民の中には帰宅に向かっている人たちもいるというが、我が家を目の当たりにした住民の胸中はいかばかりか...。
山火事の現況
山火事の現況を見てみよう。
最も拡大したパシフィック・パリセーズの山火事での被害状況は調査中だが、同地で破壊された建物は数千棟にのぼると推定されている。NBCニュースによると、パシフィック・パリセーズの山火事により1人の死者が出たことが確認されたという。
山火事によるロサンゼルス郡全体での死者数は10人になったと報じられており、負傷者は避難しなかった住民を中心に多数で、36万人以上に避難命令が出されている。
また、ロサンゼルス・タイムズは、パシフィック・パリセーズの山火事とロサンゼルス北東部で起きた山火事(イートン・ファイアー)により、9,000以上の建物がダメージを受けたり破壊されたりしたと報じている。
カリフォルニア州森林火災保護局によると、現在、ロサンゼルス郡では、パシフィック・パリセーズの山火事を含め5件の山火事が続いている。うち、3件の山火事の鎮火率は今も0%だ。山火事は出火後48時間で約30,000エーカーという広範囲に拡大したという。
また、9日午後には、新たに、ロサンゼルスのダウンタウンの北西部に位置するウエスト・ヒルズでも火事が発生し、瞬く間に500エーカー以上に広がっている。警察は、9日夕方、男がこの火事が起きた近くのウッドランド・ヒルズで火をつけようとしているとの報告を受け、この男を放火の容疑者として逮捕したが、この男がウエスト・ヒルズで起きた山火事と何らかの関係があるのかについては確認していない。
トランプ氏は政敵ニューサム知事を非難
行政の対応を見ると、カリフォルニア州知事のギャビン・ニューサム氏は、鎮火のため、地元、州、連邦の消防隊員7,500人以上と消防車1,200台を配備したと発表した。
トランプ氏と次期民主党大統領候補になる可能性もあるニューサム氏が犬猿の仲であることは知られているが、トランプ氏はここぞとばかりにニューサム氏の水管理政策を自身のプラットフォームTruth Socialで「アメリカの最も素晴らしく美しい場所の一つが焼け落ちつつある。灰だ。ギャビン・ニューサムは辞任すべきだ。これはすべて彼のせいだ」と批判。トランプ氏は水資源が減少していることを非難したが、それに対しニューサム氏は「南カリフォルニアでは現在水不足は起きていない」とトランプ氏の主張を否定している。
バイデン氏はカリフォルニア州に対し、連邦政府が今後180日間、消防など復興に必要な費用の100%を負担すると話しているが、同氏も「ロサンゼルスを襲った過去最悪の山火事」と述べている大規模山火事が収束するまでには、長い時間と多大なコストがかかることは間違いない。
(飯塚真紀子・著 ロサンゼルス山火事関連記事:Yahoo!ニュース エキスパート )
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