ロサンゼルス史上最も破壊的な山火事との報も 6件の山火事収束せず ハリウッドスター宅も燃える
とうとう、住まい横にある木まで折れてしまった。それほどの強風が吹き荒れたのだ。強風というより、その風は台風級の暴風と言っていい。何せ、最大風速が時速100マイル(約160キロ)近い風が吹いた瞬間もあったというのだから。“サンタアナ・ウィンド”と呼ばれるその超強風が、7日、“ロサンゼルス史上最も破壊的”とも報じられている山火事を拡大させ、今も吹き続ける風で山火事は全然収まっていない。10万人超の住民に避難命令が出されており、バイデン大統領は大規模災害宣言を発令した。
市中まで迫る山火事
山火事は、7日午前10時30分頃、パシフィック・パリセーズと呼ばれる、セレブたちも数多く居住しているビーチ近くの小高い高級住宅地で発生、強風に煽られて、急速に周辺地域に拡大した。パシフィック・パリセーズの南に位置する、日本の人々も観光に多数訪れているビーチタウン、サンタモニカ市も避難命令と避難勧告を発令。筆者の住まいから2ブロック先の通りの北側が発令の対象地域になっている。ロサンゼルスのビーチ沿いの地域では、やはり、セレブたちが多数居住しているマリブでよく山火事が起きるのだが、山火事による避難命令や避難勧告がサンタモニカで出されたのは、筆者が知る限り、これが初めてだと思われる。しかも、発令されている地域が拡大している。人口が多い市中まで山火事が迫っている状況だ。
ロサンゼルス史上最も破壊的な山火事との報も
パシフィック・パリセーズでは山火事で被害を受けた家々は現在までに千棟以上に上り、その被害の大きさから、AP通信は“ロサンゼルス史上最も破壊的”とまで言及している。
しかも、7日は、この山火事に続くかのように、ロサンゼルスのダウンタウンの北東部でも山火事が発生し、アルタデナやパサデナにも避難が呼びかけられた。さらに、ロサンゼルスのダウンタウンの北の郊外にあたるシルマーでも山火事が発生、8日にはさらに2件の山火事が発生、ロサンゼルス郡は5件の山火事に襲われた。加えて、8日朝には、ロサンゼルス郡の北に位置するベンチュラ群でも山火事が発生している。さらには、8日夕方にはハリウッド・ヒルズでも山火事が発生。これら7件の山火事の多くが鎮火率が0%と消火が進んでいない。ロサンゼルス郡では現時点までに5人が亡くなり、150万戸超で停電が起きたと報じられている。
惨事はパニックを引き起こすものだが、この山火事でも避難する人々の車で通りが大渋滞し、中には、車を乗り捨てて避難する人もいたため、通りが乗り捨てられた車で塞がれてしまったところもあった。
ハリウッドスター宅も燃える
パシフィック・パリセーズに住むハリウッドスターたちも山火事の状況を報告している。避難したジェームズ・ウッズ氏は、Xに火事の動画を投稿、CNNでは自宅が失われたことや1人で家にいた認知症を患う94歳の隣人の避難を助けたことについて涙しながら話し、「大混乱が起き、まるで地獄絵図のようだった。周りの家はすべて燃えていた」と火事の惨状を伝えた(下の動画)。
ジェイミー・リー・カーティス氏もインスタグラムで「私のコミュニティ、そして、たぶん私の家は燃えています。私の家族は無事です。私の友人の多くは家を失うでしょう。他の多くのコミュニティも同様です。矛盾している報告がたくさんあります。テクノロジーがあるのに、情報はほとんどないようです。事実を投稿してください! どうしようかと思っている人々の助けになります! これは恐ろしい状況です。消防士と人々を助けている善良な人々に感謝しています」と投稿している。
山火事が拡大したワケ
山火事の出火原因は調査中だが、ロサンゼルスでこれほどまで山火事を拡大させたのは前述したサンタアナ・ウィンド(サンタアナの風)だ。内陸部から南カリフォルニア地域に吹きつけてくる風だが、今回の風は特に強く、前述したように、最大風速が時速100マイルに近づいた瞬間もあったと報じられている。
干ばつ状態が続いていたことも影響を与えたと思われる。ナショナル・ウェザー・サービスによると、ロサンゼルスのダウンタウンでは、5月6日以降の降雨量はわずか0.16インチだった。
さらに、近年、気候変動により世界の平均気温が上昇していることも影響を与えているようだ。カリフォルニア州で発生した大規模な山火事のトップ20は、2020年以降に発生した山火事だという。
6つの山火事の収束には時間を要すると思われるが、一刻も早く消火し、避難した人々が無事に帰宅できるよう祈りたい。