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性的暴行容疑が浮上した韓国人メジャーリーガー、カン・ジョンホの“告発の行方”

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
性的暴行疑惑がふりかかるカン・ジョンホ(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

韓国の野球ファンたちに衝撃が走っている。メジャーリーグのピッツバーグ・パイレーツに所属するカン・ジョンホが、23歳の女性に性的暴行を働いた疑いで告発されたとの情報が、アメリカの『シカゴ・トリビューン』紙で報じられたのだ。

カン・ジョンホと言えば、2015年に韓国プロ野球出身の野手として初めてメジャーリーグ進出を果たしたスター選手。遊撃手でありながら長打力も備えていることで「韓国のAロッド(アレックス・ロドリゲス)」ならぬ「Kロッド」とも呼ばれていたカン・ジョンホは、韓国野球ファンの誇りでもあった。

(参考記事:阪神の鳥谷や西岡とも比較された韓国人遊撃手カン・ジョンホの転落

その期待に応えるかのようにカン・ジョンホも大活躍。シーズン終盤の接触プレーで左脚の骨折と靭帯断裂という大ケガを負い規定打席こそ届かなかったが、打率2割8分以上・58打点、15本塁打を記録し、新人王投票では3位にも選ばれた。今季は5月にケガから復帰し、復帰戦でいきなり2試合連続本塁打を放っていた。

韓国メディアによると、テキサス・レンジャースのダルビッシュ有が自身の復帰戦でカン・ジョンホとの対戦を熱望していたことを、韓国人メジャーリーガーでダルビッシュとチームメイトであるチュ・シンスが明かしたこともあった。

(参考記事:レンジャース同僚韓国人選手が明かしたダルビッシュ復活勝利の意外なエピソード

ただ、6月下旬になると調子を落とし、7月は先発とベンチを行き来していた。『スポーツ韓国』などはその時期が女性から告発された時期と重なりそのせいで心的ストレスも多かったとして、「カン・ジョンホ、性的暴行容疑のその日からスランプが始まった」という憶測記事まで出ている。

韓国のファンたちも失望を隠せない。記事にぶら下がっている掲示板やSNSには、「最近までスランプだった理由があったわけか」「やっと渡ったアメリカ・メジャーリーグで節度なき行動をして自分や球団のみならず、韓国のイメージまで黒塗りにした」との書きこみが並ぶ。

現在、シカゴ警察が捜査しており、カン・ジョンホも取り調べを受け、パイレーツ側は「メジャーリーグ機構と選手会の方針に沿って対応していく」としているが、どんな結果に終わってもカン・ジョンホへの逆風は収まらないだろう。韓国メディアの多くが、「本当に(性暴行を)したのなら選手生命は終わり。違ったとしてもイメージ下落は免れない」としている。

それにしても現役スポーツ選手、それも海外で活躍するスター選手が性的暴行容疑をかけられるのは、韓国でも前代未聞のことだ。韓国球界は昨年、元ヤクルトのイム・チャンヨンら三星ライオンズの一部選手たちが海外で不正賭博に講じていたことが一大スキャンダルになったが、それをはるかに凌ぐほどショッキングである。

(参考記事:日本球界でも活躍した名投手たちが違法賭博でイメージ失墜

果たしてカン・ジョンホの容疑は事実か、晴れるのか。韓国メディアは厳重な懲戒処分は避けることはできないとしているが……。韓国人スラッガーに襲いかかった“告発の行方”に注目が集まる。

(参考記事:どうなる!?性的暴行容疑で告発された韓国人メジャーリーガー、カン・ジョンホの処罰

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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