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傍観するだけのメディアは要らない。ミランの低迷から学ぶべきこと

杉山茂樹スポーツライター

アテネで行われた06〜07シーズンのチャンピオンズリーグ決勝。ミランがリバプールを倒して7度目の欧州一に輝いた時、その現在の姿を予想した人はどれほどいただろうか。一昨季国内リーグ8位、昨季10位、そして今季現在11位。ミランは来季も欧州戦線進出が難しそうな位置にいる。

UEFAクラブランキングでは、データの集計が過去5年間に遡るので、現在21位につけているが、この状態がもう2、3シーズン続けば、欧州で100番以降に転落することは確実だ。ビッグクラブと言われたチームが、ここまで凋落するケースは珍しい。欧州サッカー史上初の出来事になる。

とはいえ、ある程度、予想されたことではあった。危険な兆候は、欧州一に輝いた直後から漂っていた。これはイタリアサッカー界全体に通じる話だ。もちろん例外チームはいくつかあるが、その多くは、欧州サッカー界の流れとは、異なる方向に進んでいた。

決して攻撃的ではない。「カテナチオ」に支配された90年代後半ほど極端ではないが、イタリアには他国にはない独自の空気に覆われていた。ユーロの時代になったにもかかわらず、鎖国をしているような状態にあった。

そうなった理由は、さまざま考えられるが、一つにはメディアの存在がある。他とは異なる方向に進み、なおかつ成績が急降下すれば、客観的な視点の持ち主なら、その特異性に疑問を抱いて当然。メディアは真っ先にその役に回らなくてはならない。だが、僕の知る限り、イタリアのメディアからそうした様子をうかがうことはできなかった。

UEFAリーグランキングでスペイン、ドイツ、イングランドに次ぐ4番というポジションがすっかり定位置になったいまなお、自己を批判する声はほとんど聞かれない。鎖国化に拍車が掛かる大きな理由の一つと言っていい。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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