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しっかり得しているのは出張リーマン!?~ Go Toトラベルキャンペーンの影で

中村智彦神戸国際大学経済学部教授
(写真:アフロ)

・Go To トラベルを出張で使う

 

 Go To トラベルは、宿泊を伴う、または日帰りの国内旅行の代金総額の1/2相当額を国が支援する事業だ。給付額の内、70%は旅行代金の割引に、30%は旅行先で使える地域共通クーポンとして付与される。

 この制度は、企業で従業員が出張する際にも適用される。企業側からすれば、うまく使えば旅費の35%を削減できる。さらに15%分は地域共通クーポンで旅行者つまり出張者が手にすることができる。

 都内の中小企業経営者は、「観光客ばかり報道されているけれど、出張での利用で得している企業やサラリーマンがけっこういるのでは」と笑う。

・出張がじわりと戻りつつある

 JR東海が発表した東海道新幹線の利用状況によると、4月、5月と10%まで落ち込んだ利用率は、9月には38%、10月(14日まで)は44%と改善してきた。

 

 中部地方の機械メーカーの営業社員は、「これまで全社的に出張を自粛していたが、9月後半から徐々に出張を解禁している。東海道新幹線に乗っても、出張者が戻ってきている感じがする」と言う。別の中小企業の経営者は、「これから冬が本格化すると、また感染者が増加する可能性もある。まだまだ不安だが、小康状態に見える今のうちに、出張しておきたいという気持ちもある」と言う。

10月に入って新幹線のホームにも出張者が目立ってきた(筆者撮影)
10月に入って新幹線のホームにも出張者が目立ってきた(筆者撮影)

・Go To トラベルで得したのは?

 「予約サイトからホテルを取れば、支払い段階で値引きされているので、会社としては経費が削減されて助かっている」とそう話すのは、大阪の中堅企業の総務担当社員だ。

  しかし、Go Toトラベルを利用すれば、宿泊の際、地域共通クーポンが渡される。「うちの出張経費で認められるホテルだと、だいたい1,000円のクーポンが手に入りますね。東京出張で、新幹線代とホテルと込みで旅行代理店を経由して予約すると、そうですねえ、6,000円とかのクーポンになる可能性はありますね。しかし、総務部の上司とも相談したのですが、利用できるのが出張先だけで、有効期間も出張期間だけというものなので、不問にするかと。」

 北陸地方の中小企業経営者は、「出張経費からクーポン相当差し引くか、なんて冗談言ったんですが、あんまり細かなことまで言うのはねえ。営業担当者には、クーポンもらったら事務所にお土産でも買ってきてくれとは言ってますが、出張先での食事代などサラリーマンにとってはうれしいでしょうね」と言う。一方、東海地方の公務員は、「出張でGo Toトラベルは使うなと指示が出ている」と言う。出張での対応は、職場で別れているようだ。

・納得いかないという意見も

 40歳代の会社員は、久々の東京本社出張に行ってきたのだが、納得いかないことがあると言う。「得しているから文句は言いませんが、地域共通クーポンって、その地域の中小企業とか、個人商店の支援のためのものって思っていたのです。ところが、使えるところが大手のディスカウントショップとか、スーパーとか、コンビニとかで驚きました。結局、私もコンビニで昼食買うのに使っちゃいました。新たな消費を生むのでしょうかねえ。」

 地域共通クーポンの利用可能店舗は、地域共通クーポン取扱店舗マップ公式ホームページから見ることができる。それを見ると、スーパー、コンビニなどでの利用は可能な一方、個人商店などでは対応が少ないように見える。

地域共通クーポンの利用は現地で滞在期間中のみ(筆者撮影・一部加工してあります))
地域共通クーポンの利用は現地で滞在期間中のみ(筆者撮影・一部加工してあります))

・Go Toイートで、支払いには地域共通クーポンも使える

 30歳代の会社員は、出張先で友人と食事に出かけたが、「Go Toイートで予約して、ポイントをゲットして、支払いにはホテルでもらった1000円分の地域共通クーポンを使いました。こんな風に使えるんだと、ちょっとびっくりしました」と言う。

 Go Toトラベルで手にした地域共通クーポンで支払い、Go Toイートのポイント還元をもらえば、お得感は高いだろう。

・新たな消費を生み出しているのか、疑問だが・・

 そもそも企業の出張は、Go Toトラベルがあるから行こうというものではないだろう。地域共通クーポンも、コンビニやスーパーやディスカウントショップで使えるのであれば、日用品など、もともと必要だったものの購入に充てる可能性が高くなる。

 「いろいろ納得できないことが沢山あるが、どうせこの先、増税が待っているんだし、くれるというものはもらっておくかと考えるしかない。」先の会社員が言ったこの言葉がすべてをまとめているようだ。

 

神戸国際大学経済学部教授

1964年生。上智大学卒業後、タイ国際航空、PHP総合研究所を経て、大阪府立産業開発研究所国際調査室研究員として勤務。2000年に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程を修了(学術博士号取得)。その後、日本福祉大学経済学部助教授を経て、神戸国際大学経済学部教授。関西大学商学部非常勤講師、愛知工科大学非常勤講師、総務省地域力創造アドバイザー、京都府の公設試の在り方検討委員会委員、東京都北区産業活性化ビジョン策定委員会委員、向日市ふるさと創生計画委員会委員長などの役職を務める。営業、総務、経理、海外駐在を経験、公務員時代に経済調査を担当。企業経営者や自治体へのアドバイス、プロジェクトの運営を担う。

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