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日本代表ヘッドコーチ就任直前のエディーは…/リーグワンD1第1節ベスト15【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
左からコルビ、松島。田中監督は「コルビが入ったことでマツの負担が減った」(写真:つのだよしお/アフロ)

 報道陣の視線の向こうに、エディー・ジョーンズがいた。

 東京サントリーサンゴリアスの都内で練習公開日があったのは12月13日午前。このチームのディレクター・オブ・ラグビーであるジョーンズは、選手やスタッフとコミュニケーションを取りながらトレーニングを視察していた。

 日本ラグビーフットボール協会の説明を踏まえると、この数時間後、ジョーンズが同協会のヘッドコーチ選考委員会の面接をパスしたのが本人に伝わることとなる。その夜のうちに同協会の定例理事会で可決され、正式な就任が発表された。

 場面を戻す。この日、サンゴリアスのスタッフで唯一、取材に応じたのは田中澄憲監督だ。

 国内リーグワンの初戦を終えたのはこの3日前だ。昨季プレーオフを含め3度負けているクボタスピアーズ船橋・東京ベイに52―26で勝っていた。相手の死角へ蹴り込んだり、攻め込む流れで深いラインによる数的優位を作ったりと、目指す形を実践した。

「準備したプランを信じて、勇気を持ってやってくれた。勝ったことによって自信にもなりました」

 新加入した南アフリカ代表のチェスリン・コルビは、フルバックで先発して圧巻のパフォーマンスを披露。田中はSNSなどでコルビと顔立ちや背格好が似ていると指摘されている。指揮官は苦笑する。

「2019年から少し、言われていました。その時は、まさか同じチームになるとは思っていなかった」

 ニュージーランド代表の主将だったサム・ケインを含めた大物の存在を通し、既存の選手に何を学んで欲しいか。そう問われれば、フィールド上での話に絞って答えた。

「コルビは少年みたいなのにすごいプレーができる。(小柄な日本人選手も)言い訳ができない。ケインはタックルがすごいんですよ。(出足の)スピードというか、(相手の)芯にがつっと入る感じが。ブレイクダウン(接点)、ディフェンスで、彼から学ぶことはたくさんあるんじゃないかと思います」

 次戦は17日、東京・味の素スタジアムでの通称「府中ダービー」だ。こちらも初戦白星の東芝ブレイブルーパス東京は、選手のキャラクターが最大化される陣形を敷いて波状攻撃を仕掛けるのが得意。田中の展望は。

「府中ダービーっていつもわかりやすくて。フィジカルバトルは避けられない。相手とは違った、我々のフィジカルバトルを出し切る」

 空いた区画へ勢いよく駆け込み、素早いサポートとボールリサイクルで向こうの大型選手の立ち遅れを誘えれば吉か。

リーグワン ディビジョン1 第1節 結果

コベルコ神戸スティーラーズ 80—15 三重ホンダヒート

三菱重工相模原ダイナボアーズ 30―29 花園近鉄ライナーズ

東芝ブレイブルーパス東京 43—30 静岡ブルーレヴズ

トヨタヴェルブリッツ 15―8 リコーブラックラムズ東京

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 26―52 東京サントリーサンゴリアス

埼玉パナソニックワイルドナイツ 53—12 横浜キヤノンイーグルス

(表記はホスト、ビジターの順)

リーグワン ディビジョン1 第1節 私的ベストフィフティーン

1,稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…タックル、キャリー、球への絡み。

2,武井日向(リコーブラックラムズ東京)…ゲインライン上を通過させぬタックル。

3,伊藤平一郎(静岡ブルーレヴズ)…スクラム。姿勢が一貫。相手の押し込みを耐える流れで、左側からの第2波を促す。

4,ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)…相手走者が抜け出した先へ回ってジャッカル。タックル、キャリーともシャープ。ラインアウトでは自軍ボールを首尾よく確保し、相手ボールにも圧をかけた。

5,リアム・ミッチェル(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…タックル、肉弾戦で向こうの球出しを遅らせた。

6,アマト・ファカタヴァ(リコーブラックラムズ東京)…防御を破られた後の戻り、球への絡み。

7,アーディ・サヴェア(コベルコ神戸スティーラーズ)…ピック&ゴーでの前進、相手とクラッシュしながらのパス、防御でも鋭い出足で光った。

8,ジャクソン・ヘモポ(三菱重工相模原ダイナボアーズ)…自陣ゴール前での守り。

9,ファフ・デクラーク(横浜キヤノンイーグルス)…防御にカオスを生む鋭い仕掛け。

10,ブリン・ガットランド(コベルコ神戸スティーラーズ)…スペースがあれば自陣からでも果敢に展開。攻めに勢いをつけるなか、防御の裏側への短いキックでもトライを演出した。守りでも献身。

11,松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)…オフ・ザ・ボールの動きをチャンスメイクに昇華。加速。キックでも魅した。

12,眞野泰地(東芝ブレイブルーパス東京)…鋭い出足でのタックル、低い姿勢でのキャリー、仕掛けながらのチャンスメイク。

13,ナニ・ラウマペ(コベルコ神戸スティーラーズ)…チーム2本目のトライはスペースへパスを放ってからその箇所へサポートに走って決めた。重心の低さと強さと速さ。

14,チェスリン・コルビ(東京サントリーサンゴリアス)…乱れたボールを拾うや加速して局面を打開。再三のハイボールキャッチ。

15,山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…閃きと技術の合わせ技をチャンスに直結させた。自陣で防御網を破ってからのロングキック、高い弾道を捕球した後のフットワークとドリブル。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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