Yahoo!ニュース

「就活に克つポイント」を大学の就職支援担当者に聞いた

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 人手不足といわれているにもかかわらず、学生の就活(就職活動)は熾烈さを増してきている、と矛盾した状況にあるのが現実らしい。就活という制度に問題があるとはおもうが、学生にとって就活が最大のテーマになっているのは事実である。

 そこで、ある大学の就職支援部署の部長に話を聞いてみた。開口一番、彼は「相変わらずの大手志向ですね」といった。

 日本には421万もの企業があるといわれるが、そのうち99.7%を中小企業が占めている。つまり、いわゆる「大手」と呼ばれる企業は0.3%しかないわけだ。その数少ない大手に学生の大半が押しかければ、熾烈な就活になるのも当然である。大手志向が強いために、中小のなかでも小になると避けられる傾向になるので、これまた当然ながら人手不足となるわけだ。

「これに拍車をかけているのが親の存在です」と、就職支援部署の部長は溜息交じりにいった。

 子どもの就職に口をだす親が、ますます増えているという。「親を対象とした就職ガイダンスもやりますが、その出席率が高い。親の半数くらいが参加してきます」と、彼自身も驚いているようだった。

 その親が、揺るぎない大手志向なのだ。大手に入社できなかった後悔からなのか、大手に入社できて満足しているからなのか、理由はわからないが、とにかく揺るぎない大手志向で、我が子に大手への就職を求めるらしい。「いまは大手でも、明日には経営危機に陥りかねない時代なんですけどね」と、苦笑いしながら部長はいう。

 そして問題なのが、学生が親の意向に従順だということだ。自分が働きたいとおもった企業があっても、親に反対されれば内定をもらっても辞退してしまうことも珍しくないそうだ。これでは就職は決まらない。就職するのであれば、親の意向ではなく、自分の気持ちを優先することが、まず大事なことのようだ。

 人気殺到の大手にしても、採用の基準が釈然としない。「いちばん言われるのが、コミュニケーション能力の高い人材が欲しい、ということです」と、部長。しかし、そのコミュニケーション能力が何なのか、はっきりしない。ただ人間関係をソツなくこなせる人材、ということなのだろうか。組織がまるく収まるためには必要なことかもしれないが、「先のみえない時代」を強調する最近の企業が必要としている能力とはおもえない。採用の基準がはっきりしない企業に選んでもらおうというのだから、学生の苦労が並大抵ではないのは想像できる。

 そして就活を困難にしている最大の要因を件の部長は、「打たれ弱いこと」と指摘する。親にも怒られたことがなく、進学も高嶺を望まなければ比較的楽にやってこれたために、根拠のない自信に溢れているのが今の学生なのだそうだ。それが就活という場で不合格という挫折を味わうと、立ち直れなくなって、ズルズルと落ち続けるという傾向が強いという。

 親の意向に左右されるず、一度や二度の不合格にも負けない「打たれ強さ」をもつこと、それが就活に克つポイントなのかもしれない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

前屋毅の最近の記事