妖怪ウォッチ「何でも妖怪のせい」は良いこと?悪いこと?を心理学的に解説
■何でも妖怪のせい?
ゲーム、アニメの「妖怪ウォッチ」が大流行です。その大流行の心理的なポイントが、この質問にあると思います。
■「妖怪ウォッチ」大流行の心理学的原因
ゲームの魅力、キャラクターの魅力といった意外のお話です。
子どもや、世の中の悪いことの原因は、「妖怪」だというのが、「妖怪ウォッチ」の世界観です。
何か人知では計り知れないものが、この世界や私に悪さをしている。この発想は、大昔から人間がしてきたことでしょう。そうやって、わけの分からないこの世界や、人生を納得しようとしてきました。勇気を持って新しい一歩を踏み出そうとしてきました。
自己肯定感が低いと言われ、ストレスがたまっている現代の子どもたちにとっても、「妖怪のせい」は、心を癒すのでしょう。
■外在化「この手が悪いのね」「魔が差した」「鬼」「悪魔」
たとえば、万引きをした子どもに対して「この手が悪いのね」と叱るような方法が、心理学で言う「外在化」です。本当に手がかってに動いて万引きしたわけではありません。その子が盗んだのです。
でも、「泥棒するなんて最低の子どもだ!」と言っても、子どもはなかなか反省してくれません。落ち込んで、泣いたり、怒ったり、やけを起こすかもしれません。
そこで昔の人が思いついた方法が、「この手が悪いのね」です。罪を憎んで人を憎まずの発想です。
あなたは本当はよい子なのに、「この手が悪いのね」「魔が差したのね」と言うわけです。鬼とか、悪魔とは、外の力が働いたと考えます。
■小学校の豆まきで
ある小学校の節分行事を見学しました。子どもたちは、事前に自分の欠点を「鬼」として書いていたようです。なまけもの、泣き虫、ねぼすけ、そんな心の中の「鬼」を子どもたちは書いています。
校長先生が、子どもたちの前に立ち言います。「さあ、みんなの心の鬼は何かな? みんなで鬼を追い出そう!」。そのあとは、先生達が鬼となり、楽しい豆めき大会です。
これも心理学的に言えば、「外在化」です。
■子どもたちはいろいろなことが上手くいかないけれど
子どもたちは、いろいろなことが上手くいきません。歯磨きをしなかったり、勉強をしなかったり。その度に叱られます。叱ることは大切ですが、子どもの自尊感情を下げてしまうと逆効果です。
たとえば、こどもの勉強嫌いを直すためには、なぜ嫌いなのかを冷静に考えれ必要もあるでしょう。
大人としての冷静さは必要です。でも同時に、子どもに理屈だけで話せば言いわけでもありません。
悪いことをした子どもを鬼が怒ってくれる、「鬼から電話」なんてアプリもありますね。子どもはとても怖がります。ただし、使い方に注意は必要です。
「勉強しなさい」も「兄弟仲良くしなさい」も、言い過ぎれば逆効果になります。人は、言われすぎると反発し、時には正反対のことまでしたくなってしまうものです。
■反省しなくてもいいの?
「悪いことしたのは、失敗したのは、妖怪のせい」。こう考えれば、心は傷つきにくいでしょう。心を守るためには、賢い方法です。しかし、それだけで良いのか、反省しなくて良いのかと親は悩むでしょう。
時に厳しく叱ることは必要です。ただし、その時こそ忘れてはいけないのは、「お母さん(お父さん)は、何があってもあなたを大好きよ」という土台です。
子どもは、親からの絶対的な愛が揺るぐことを恐れます。たとえば、兄弟ゲンカは親の愛の奪い合いです。子どもは比較されるだけで腹を立てます。「兄弟を平等に愛するだけでは不十分」なのです(「きょうだいトラブルの心理学:兄弟喧嘩、カイン・コンプレックス:兄弟は平等に愛してはいけない!?」。
そんな子どもたちは、叱られるだけでは反省しません。叱られて親の愛が離れていくことを恐れ、自信をなくすだけでしょう。それは、心理学的に言えば歪んだ「恥意識」です。悪いことをした自分を恥じ、逃げ出したい気持ちです。この気持ちでは、前に進めません。時に、自分のしたことをごまかして謝れないでしょうし、時にやけを起こして乱暴をするでしょう(大人だと犯罪に走る人もいます)。
本当の反省は、健康的な「罪意識」を持たせることです。「悪いことをしてしまった」と心から反省し、正しい罪意識を持つと、つぐないの心が生まれます。建設的で前向きな行動が生まれます。
■「妖怪ウォッチ」の使い方
悪いことや、失敗を、小さな子が妖怪のせいにするのも、良いでしょう。ただし、その妖怪をやっつけなくてはなりません。お母さん、お父さんと一緒に、その妖怪をやっつけましょう。
悪いことは悪い。でも、君のことが大好き。君は失敗や悪いことをきっと乗り越えていけると、教えてきましょう。