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「競い合わないと強くならない」。松島幸太朗の提言。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(写真:つのだよしお/アフロ)

 取材日の前日、31歳の誕生日を迎えた。

 松島幸太朗は静かに笑う。

「家族に祝ってもらって。…花粉症で頭が痛かったので、8時に寝ました」

 ラグビー日本代表として3度のワールドカップに出てきた走者は、2月28日、所属する東京サントリーサンゴリアスの練習に参加。リコーブラックラムズ東京との国内リーグワン第8節(東京・秩父宮ラグビー場)を4日後に控え、コンディションそのものは上向きであることをアピールした。

懸念の花粉症についても「きょうは、ましです」としたうえで、かねての食事改善がポジティブな変化をもたらしていると続けた。

「いま、一番、(状態が)いいのかなと。去年、アレルギー検査をして、(反応が)多く出たものは摂らないように。僕の場合は白米、小麦、ナッツ。(受検のきっかけは)まあ——そういう感覚はないですけど——昔と、身体が変わってきていると思うので。この先のラグビー生活で、いいパフォーマンスを出せる時期を長くしたいなというところです」

 桐蔭学園高校卒業後は、南アフリカへ武者修行。最初にサンゴリアスに入ったのは2013年度で、2シーズンのフランス挑戦を経て昨季から古巣へ戻っていた。

 今季はリーグ中断期間中にあたる3日、クロスボーダーラグビー2024のブルーズ戦で好ランを連発。チームが7―43と敗れるなか、爪痕を残した。

 国際舞台での強さを示す主軸格は、26日に公開されたチーム公式You Tubeチャンネルの動画で提言をしている。

 今度の共同取材で、話題に挙がった。

 以下、共同取材の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——上記の動画を通し、最近のサンゴリアスについてもっと「アグレッシブ」になるべきといった内容を話していました。

「単純に、泥臭さがなくなっています。(サンゴリアスは)一発で行くというより、継続してまとまってトライを獲りに行くチームなので、そういう我慢強さ(が必要)」

——フェーズを重ねながら組織的に相手防御を破ってゆく「我慢強さ」。どうすれば身につきそうですか。

「選手の意識だったり、日頃からお互いのミスに対してちゃんときつく言ったり。そうすることによって闘争心が生まれてくると思うし、競い合わないとチームが強くならない」

——以前、取材させていただいた際、いまの目標はサンゴリアスを「優勝するチームにする」といった趣旨で述べられていました。「優勝するチーム」には、何がありますか。

「やっぱり『自分はこれで勝つ』というもの。それはチームそれぞれによって違っておりますけど、サントリーは、相手陣に入ればボールを継続し、(トライを)獲り切ることを多くしたい。いまはそんなに簡単なリーグじゃなくなってしまったので(国内リーグワンは以前のトップリーグ時代より強度が高まった)、より一層、我慢することが必要なんじゃないかなと」

——「我慢」について。

「一発で(トライを)獲りに行こうと思っていつもと違う判断をする(べきではない)。そこで抜ければ(大きく突破できれば)いいですけど…。あとは、単純なフィジカルバトル(を制すること)。外国人選手も多くなったので、ラック周りをやられること(接点で圧をかけられること)も増えた。いまはそこを、フォーカスしています」

——次戦へ。

「相手に合わせず、自分たちの大事なところを守っていきながら、(フェーズを)継続する。あとはフィットネス、ボール持ってない時の動きを多くする。(サンゴリアスについて)昔からイメージしてるのは、『アグレッシブ・アタッキングラグビー』。そこを取り戻したいというのはあります」

 伝統的な部是を挙げながら言及した松島の提言について、就任2年目の田中澄憲監督は補足する。

「ブルーズ戦では——もちろん相手が強いこともありますが——自分たちがエフォート(努力)するところでできていなかったというの(課題)があり、そこを見直した。選手同士、僕らと選手で、重い、雰囲気が暗くなるようなミーティングをしたんです。以後、選手、コーチを含めてスタンダードをセットすることに取り組んでいった。その後のウィークは、いい形でできたんです」

 リーグ再開後初戦となった17日の第7節では、一昨季まで2連覇中の埼玉パナソニックワイルドナイツに20―24と接近(熊谷ラグビー場)。惜敗も手ごたえを掴んだ。指揮官は続ける。

「あとは、それをいかにコンシスタントに(一貫性を持って)できるか。そういうところはコーチが指摘するのも大事ですが、選手同士で求め合わなくてはいけない。まずは、言える関係性を作らないといけない。それは仲がいいという関係性ではなく、結果を出すためにプロフェッショナルな仕事をするため(の関係性)。(堀越康介主将などの)リーダー、マツ、(中村)亮土、流(大)といった経験値の高い選手はそれができるんです。ここへ、中間層の選手がいかに(一緒に)上がっていくか、です」

 自分たちの示す厳しい基準を満たせるよう、互いに厳しくなれるか。旧トップリーグ時代から通算して2017年度以来6度目の日本一に輝くべく、組織内の熱量を追い求める。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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