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DHの初歩的な話。大谷翔平が登板して打席にも立つ場合に、「守るだけの野手」と「DH」は可能!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)Mar 21, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 3月21日、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は「1番・投手」としてスターティング・ラインナップに名を連ねた。DHを解除したのではない。そもそも、この試合はDHがなかった。大谷と投げ合ったブレイク・スネル(サンディエゴ・パドレス)は「9番・投手」として出場し、3回裏の打席で大谷に三振を喫した。

 この試合で異例だったのは、大谷の打順だ。通常、先発投手は打順9番(あるいは8番)に入る。

 エンジェルスはア・リーグに所属しているので、ほとんどの試合はDHがある。DHがないのは、ナ・リーグのチームと対戦する「インターリーグ」のうち、エンジェルスのアウェー・ゲーム(ナ・リーグのチームの球場で行われる試合)だけだ。今シーズンのDHなしは10試合。5月31日~6月1日のサンフランシスコ・ジャイアンツ戦、6月11日~13日のアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦、8月6日~8日のロサンゼルス・ドジャース戦、9月7日~8日のパドレス戦がそうだ。

 DHがある試合で、大谷が登板して打席にも立つ場合は、DHを解除する必要がある。大谷が「リアル二刀流」となる代わりに、守るだけの野手とDH、という組み合わせの起用はできない。DHは先発投手(と後続の投手)とセットにすることが、ルールで定められている。

 もし、大谷のように打てる投手がチームにいて、DHと野手のセットが可能であれば、好守だが打てない野手が、守るだけで打席に立たないこともあったかもしれない。思い浮かぶのは、2000年代にヒューストン・アストロズで遊撃を守ったアダム・エベレットだ。2003~07年のDRS110は全ポジションの1位、UZR66.7は外野手のアンドルー・ジョーンズ(103.9)と三塁手のエイドリアン・ベルトレー(72.7)に次ぐ3位――DRSとUZRはどちらも守備のスタッツ(成績)――ながら、この5シーズンに計2000打席以上の174人中、出塁率.300とOPS.663はワースト3位。ホームランは35本(年平均7.0本)しかなかった。エベレットの守備はあまり派手ではなく、難しい打球でも平凡な打球のように処理していた印象がある。

アダム・エベレット(上)とトニー・ウォーマック May 30, 2004
アダム・エベレット(上)とトニー・ウォーマック May 30, 2004写真:ロイター/アフロ

 なお、エンジェルスのジョー・マッドン監督は、意図せずにDHを解除したことがある。タンパベイ・レイズの監督だった時のことだ。それについては、「相手はDHを使っているのにこちらは投手が4番。7年前にはマッドン監督もア・リーグの試合で投手を3番に」で書いた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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