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相手はDHを使っているのにこちらは投手が4番。7年前にはマッドン監督もア・リーグの試合で投手を3番に

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケンドール・グレイブマン(オークランド・アスレティックス)Apr 20 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

4月20日、ヤンキー・スタジアムで先発登板したケンドール・グレイブマン(オークランド・アスレティックス)が、4番として打席に入った。

マネー・ボールの新バージョンではない。4回表に「4番・三塁」のダニー・バレンシアが左の太腿裏を痛め、その裏から「2番・二塁」のクリス・コグランが三塁、「6番・DH」のジェド・ラウリーが二塁へ回り、グレイブマンが「4番・投手」となった。DHとして出場していた選手が試合途中から守備についた場合、代わって他の選手をDHに起用することはできない。途中出場でDHを務められるのは、DHの代打か代走として出場した選手しかいない。

2009年にオープンしたヤンキー・スタジアムで、投手が打席に入るのは初めてのことだ。グレイブマンにとっては、メジャーリーグのみならずマイナーリーグを含めても初打席だった。

グレイブマンの打席は5回表に回ってきた。3球三振を喫したとはいえ、2球目と3球目はバットを振り、ファウルも放った。グレイブマンは7回途中でマウンドを降り、この打席のみに終わったが――7回表の攻撃は3番打者で終わった――ヤンキースを1点に抑え、前年7月以来の白星を手にした。

7年前には、先発した投手が打順3番に座ったこともある。タンパベイ・レイズのアンディ・ソナンスタインだ。こちらはグレイブマンと違い、1回裏から打席に3度立った。ソナンスタインはその前の2シーズンに、インターリーグの5試合で10打数4安打、2四球(打率.400、出塁率.500)を記録していた。

ただし、打順3番の理由はそこにはない。ジョー・マッドン監督はラインナップ・カードの3番と5番――エバン・ロンゴリアベン・ゾブリスト――のいずれにも、ポジションを「5」と書き込んで提出してしまった(5=三塁)。1回表が終わったところで、クリーブランド・インディアンスのエリック・ウェッジ監督が審判にアピール。1回表に三塁を守ったのがゾブリストだったため、ロンゴリアはラインナップから姿を消し、DHも使えなくなって、ソナンスタインが3番に座った。

ソナンスタインは5.2回を投げて5点を失ったものの、味方打線の援護によって勝利投手になった。4回裏に回ってきた3打席目には、タイムリー二塁打を放ってチーム7点目を挙げた。また、ゾブリストはこの回の先頭打者として三塁打を打ち、打者一巡で5点を挙げて逆転する口火を切った。

ロンゴリアもずっとダグアウトに座っていたわけではない。6回表、2死一塁の場面でソナンスタインを降板させた時、マッドン監督はダブル・スイッチを使った。ライトのゲーブ・キャプラーと投手のグラント・バルフォアを交代させ、ゾブリストを三塁からライトへ動かし、ソナンスタインに代えて出場させたロンゴリアに三塁を守らせた。当初の予定だった3番に入ったロンゴリアは、1打席に立って四球を選んだものの、牽制球でアウトになった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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