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麺屋武蔵が「チョコレートつけ麺」に挑み続ける3つの理由とは?

山路力也フードジャーナリスト
今年で十年目を迎える麺屋武蔵バレンタインメニュー「つけガーナ」(写真:麺屋武蔵)

十年目を迎える「麺屋武蔵」×「ロッテ」のコラボレーション

麺屋武蔵×株式会社ロッテのコラボレーションによる「つけガーナ2018〜トリュフの香り〜」(写真:麺屋武蔵)
麺屋武蔵×株式会社ロッテのコラボレーションによる「つけガーナ2018〜トリュフの香り〜」(写真:麺屋武蔵)

 人気ラーメン店「麺屋武蔵」「株式会社ロッテ」がコラボレーションし、2月3日(土)から14日(水)まで、バレンタインデーに向けた創作つけ麺メニュー『つけガーナ2018〜トリュフの香り〜』を数量限定、一部店舗限定にて販売している(参考資料:株式会社ロッテ プレスリリース2018年1月30日)。

 麺屋武蔵とロッテがコラボレーションするのは、2009年のバレンタインシーズンに発表した『味噌ガーナ』以来、今年で十年目。ロッテの人気商品『ガーナミルク』をラーメンに使うという斬新なアプローチはラーメン業界に強烈なインパクトを与えて、バレンタインシーズンにチョコレートを使ったラーメンを提供する店も相次いだ。2014年までは「味噌ラーメン」をベースにした商品だったが、2015年からは「つけ麺」スタイルの商品を提供している。

 今年の作品は『つけガーナ2018〜トリュフの香り〜』(税込1,100円)。一人前のつけダレ(スープ)にロッテのチョコレート「ガーナミルク」を約1枚分使用。ガーナミルクと牛コンソメベースのスープに、人参やたまねぎ、ウイキョウなどの香味野菜を合わせたスープ。さらに、昆布で出汁を取った牛乳をムース状にして浮かべ、凍らせたガーナミルクを細かく粉砕したものをハート型にあしらった。麺にはトリュフを削って上からかけるだけでなく、中太の麺そのものにもトリュフオイルを絡めることでトリュフの豊潤な香りを演出。つけダレを潜らせることによりトリュフの香りとチョコの香りが融合して、唯一無二の味わいを現出させている。

チョコレートの調味料としての可能性に挑む

1996年の創業以来、ラーメン業界に革新的な手法を提案し続ける「麺屋武蔵 新宿総本店」。
1996年の創業以来、ラーメン業界に革新的な手法を提案し続ける「麺屋武蔵 新宿総本店」。

 なぜ麺屋武蔵はチョコレートをラーメンに使おうと思ったのか。そこには麺屋武蔵の挑戦し続ける姿勢があった。「『革新的で上質』これが麺屋武蔵創業からの理念です。ラーメンはこういうものだ、という既成概念に拘ることなく、常に進化し挑戦し続けていくのが麺屋武蔵だと思っています。チョコレートの「甘味・コク・香り」は調味料として成立するのではないか、というアイディアが原点です」(株式会社麺屋武蔵 代表取締役社長 矢都木二郎さん)

 ラーメンでチョコレートを調味料として使う。この自由で大胆な発想は、1996年の創業以来数々の革新的で先進的なアイディアを次々と形にしてきた、麺屋武蔵でなければ生まれなかったアイディアだろう。試作をして成功の可能性を感じた矢都木さんは、同じ新宿に本社を持つロッテに調味料用のチョコレートの開発を依頼した。同じくチョコレートを調味料として普及させ「チョコごはん」という新たな食シーンを創造する試みに取り組んでいるロッテと意見が一致し、まずは現行の「ガーナ」を使ったラーメンを作り「チョコレート=調味料」のイメージを浸透させるところからコラボレーションを始めることとなったという。

 「『隠し味』としてチョコレートを使うのでは、これまでにもありますし私たちがやる意味がありません。あくまでも『表味』として、チョコレートに調味料としての存在感を持たせることがポイントになります。しかし、存在感を出そうとたくさんチョコレートを使うとラーメンとしてのバランスが崩れてしまいます。『ラーメン・つけ麺』としての範疇の中で、チョコレートとしての存在感を最大限引き出すバランスが、このメニューの一番難しいところだと思います」(矢都木さん)

十年やり続けたことで可能性が広がった

 2009年に発表した「味噌ガーナ」は、チョコレートをラーメンに使うという奇抜さと、麺屋武蔵とロッテの異業種によるコラボレーションが話題を集めた。以降、毎年新しいアプローチを取り入れながら、チョコレートラーメンは進化し続けている。なぜ麺屋武蔵はチョコレートラーメンに挑み続けているのだろうか。「チョコレートを調味料として認知して頂くには時間がかかります。また、チョコレートが調味料として成立することを証明するには、そのバリエーションの豊富さも必須だと考えているので、毎年新たな商品を作らせて頂いています」(矢都木さん)

 麺屋武蔵がチョコレートラーメンに挑み続けて十年。このあいだに多くのラーメン店がチョコレートラーメンを開発し、他ジャンルの料理店でもチョコレートを料理に使ったメニューが増えた。また、各チョコレートメーカーも家庭向けにレシピを提案したり、チョコレートを調味料として使うことが当たり前になりつつある。先駆者として、これから麺屋武蔵はチョコレートラーメンにどう向き合っていくのだろうか。

 「チョコレートのラーメンを十年作って行く中で、バランスの調整が以前より格段に向上しました。向上した事により、チョコレートラーメンの新たな可能性が見えてきていると感じています」(矢都木さん)

 チョコレートは調味料として成立するのか。チョコレートラーメンはラーメンとして成立するのか。十年目を迎えた麺屋武蔵の「つけガーナ」で、その真価をぜひ体感して欲しいと思う。

『つけガーナ2018 ~トリュフの香り~』

 販売期間 : 2018年2月3日(土)~2月14日(水)

 販売店舗 : 麺屋武蔵 新宿総本店、浜松町店

 販売数量 : 各店1日20食限定

 価格 : 1,100円(税込)

フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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