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慶應一筋の新人、ホークス廣瀨隆太は“プロ初”猛打賞もなぜ渋い顔だったのか

田尻耕太郎スポーツライター
ライト方向へ長打を放った廣瀨隆太。

 ドラフト3位ルーキーの廣瀨隆太内野手が2軍とはいえ公式戦で初めての1試合3安打をマークした。

 しかし、試合後の表情は渋かった。

「3安打放ちましたけど、6打席あった。半分は凡退だったので」

西純矢から2本の長打

 初回先頭の第1打席、阪神先発・西純矢の146キロ外角直球を逆らわずに打ち返すと右翼フェンス直撃の二塁打。さらに2回裏2アウト一塁の第2打席も西純の外角直球に素直にバットを出して右翼線へ適時二塁打。6回裏の第4打席では阪神2番手・石黒佑弥から中前ヒットを記録した。

 一方でいずれも得点圏に走者を置いた4回裏の第3打席(三ゴロ)、7回裏の第5打席(捕ゴロ)で結果を残せず、最終回の第6打席も体勢を崩された一ゴロを打たされて結果的に敗戦の最後の打者となった。

「右方向にいい当たりが出たのはいい傾向だと思います。悪いときは左肩の開きが早くなっていたので、練習からそこを意識して修正してきた。ただ、凡退した打席は自分の打撃が出来なかった。状態が良かった中で、チャンスで打てなかった。そこは反省しないといけません」

本塁打は欲しいけど狙わない

 廣瀨はこの日がウエスタン・リーグ28試合目の出場。打率.245、9打点。本塁打はまだ0本だ。

 二塁を守れる右の長距離砲として期待されている若鷹は、慶應義塾幼稚舎(小山ドラゴンズ)~慶應義塾普通部(世田谷西リトルシニア)~慶應義塾高校~慶應義塾大学と歩んできた生粋の“慶應ボーイ”である。慶應幼稚舎出身初のプロ野球選手で、慶大では東京六大学野球リーグで阪神・岡田監督(早稲田大学)に並ぶ歴代4位の通算20発をマークしたスラッガーだ。

「タマスタ筑後は神宮より広い。最初の二塁打も神宮だったら入っていたと思います。ホームランを狙いすぎると、また左肩が開く悪癖が出てしまう。ここ最近は打球の角度もそれほど悪くない。本塁打は欲しいですけど、狙わずにあまり気負わずにやりたいです」

 大輪の花を咲かせるために、今は足元をしっかり耕しているところ。今のソフトバンクのチーム状況を考えれば焦ることはない。大砲はじっくりと育っていく。

リチャード特大3号も空砲

【4月26日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 1,338人】

阪神     `000222101 8

ソフトバンク `020010000 3

両監督のメンバー交換。
両監督のメンバー交換。

<バッテリー>

【T】○西純、石黒、川原、石井、佐藤蓮――藤田

【H】●笠谷、フェリックス、大城、風間――嶺井、吉田

<本塁打>

【H】リチャード3号

本塁打を放ったリチャード
本塁打を放ったリチャード

<スタメン>

【T】6高寺 8井坪 D榮枝 9井上 7ミエセス 3渡邉 5戸井 2藤田 4遠藤

【H】4廣瀨 8笹川 5野村大 9正木 D柳町 3リチャード 2嶺井 7大泉 6イヒネ

※写真はすべて筆者撮影

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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