Yahoo!ニュース

『競輪グランプリ2022』はこうなる! 好機到来を予感させる守澤太志と「もう一人の男」。

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
昨年のグランプリで優勝し右拳を突き上げた古性優作(写真:日刊スポーツ/アフロ)

ゴール前で守澤が伸びる

大晦日前日の朝、私は毎年必ず近くのコンビニエンスストアへ行く。

目当ては、新聞スタンド。

この日だけはスポーツ新聞の一面が競輪の予想記事に彩られるからだ。競馬が一面になることは多々あるが、競輪は皆無に等しい。

だが、12月30日は競輪界にとって特別な日。『競輪(KEIRIN)グランプリ』はディープなファンだけではなく、世間をも巻き込む特別なレースなのだ。

新聞スタンドを眺めながら思う。

(今年も一年間、頑張ってきてよかった)

大した成果を上げられず頑張りが足らなかったとしても、この日を迎えられたことに悦びを感じるのだ。

さて早速、『競輪グランプリ』の独自予想をしてみたい。

今回、もっとも目を引くのは北日本の「4車連結」。優勝賞金1億1880万円のビッグレース、それぞれに勝つチャンスをと考えるならば、2車、2車に分かれて闘う選択肢もあったが、新田祐大(福島・90期)、佐藤慎太郎(福島・78期)、守澤太志(秋田・96期)、新山響平(青森・107期)の4選手は、それを良しとせず結束を決めた。

もちろん、これには伏線がある。

11月の『競輪祭』決勝。グランドスラムを達成したばかりの新田が、北日本ラインの先頭を買って出て果敢に先行、自らは9着に沈んで7歳年下の新山にG1初Vをプレゼントした。

この時点で、新山は気持ちを固めた。

(大一番では、新田さんの前で目イチで駆ける)と。

ならば、新田─佐藤、新山─守澤に分かれる選択は消えて当然か。

北日本の並びは、新山─新田─守澤─佐藤。

近畿ラインは脇本雄太(福井・94期)─古性優作(大阪・100期)。

平原康多(埼玉・87期)、松浦悠士(広島・98期)、郡司浩平(神奈川・99期)の3人は単騎である。

先行するのは、新山だろう。それも捨て身の逃げだ。北日本が4車結束となったからには、ラインから優勝者を出さぬわけにはいかない。『競輪祭』のこともあり、新田の番手捲りは必然だろう。

そうなれば新田が優位、予想紙では彼が本命に推されるのではないか。だが私は、新田よりも3番手をまわる守澤に好機が訪れるように感じる。

新山が突っ張れば、それを許さじと脇本も早めに巻き返す。新山と脇本が踏み合い、その後ろで新田と古性が捌き合う。ここは古性に軍配が上がる可能性が高い。そして、彼の後ろに守澤がスイッチ。4コーナー過ぎで古性がショート捲りを仕掛け、ゴール前で守澤が彼を捉えるのではないか。

北日本ライン3番手からグランプリ初Vを狙う守澤太志(写真:公益財団法人JKA)
北日本ライン3番手からグランプリ初Vを狙う守澤太志(写真:公益財団法人JKA)

好調を維持する郡司浩平

だがグランプリレースは毎年のことながら、そう簡単にはいかない。「まさか!」のシーンが生じるのが常。新山と脇本がやりあえば単騎選手の強襲もあろう。その単騎3選手の中に好機到来の予感を漂わせる「もう一人の男」がいる。

郡司浩平だ。

早い段階で単騎の3選手がレースを掻き回す展開も考えられる。

新山が先行し、脇本が巻き返す前に3選手のいずれかが新田を捌きにかかるパターンだ。斬り込むなら松浦だろう。理由は、3選手の中では彼が一番「飛びつき」が巧いから。

松浦が捌きに出れば目を輝かせる平原と郡司は、おそらくは脇本よりも前に位置している。ダッシュタイプではない脇本が捲るのに合わせて出て強襲するのではないか。そのタイミングを逃さないのは、平原ではなく郡司と見る。

その根拠は3つ。

まず、郡司のコンディションが、ここにきてさらに良くなっていること。それは数字にも表れている。直近4カ月の「S級3連単ランキング」で郡司は首位に立っており、実に92%の確率で確定板入り(3着以内)しているのだ。これは脇本の87.5%をも上回る成績で、明らかに平原よりも好調だ。

2つ目は地の利。ホームバンクは川崎だが、平塚でも練習することが多い彼はバンクの特徴を熟知しており、踏み所とコース取りをカラダで憶えている。

3つ目は、単騎戦での勝率が滅法高いこと。後ろに誰もついていなければ自分が好きに走ることが許され、その時に郡司の勝負勘はさらに冴えるのである。

私が注視しているのは、守澤と郡司。

買い目は、まず2車単で両者の表裏を押さえる。2-4、4‐2。

3連単では両者を1着、3着に配し、

2-1‐4、2-5-4、2-6-4、2‐7-4、

2-8-4、2-9-4、4-1-2、4-5-2、

4-6-2、4-7-2、4-8-2、4-9-2の12通り。

これで勝負するつもりだ。

<『KEIRIN GP2022』 出走メンバー>

1.古性優作(大阪・100期/31歳)

2.郡司浩平(神奈川・99期/32歳)

3.新山響平(青森・107期/29歳)

4.守澤太志(秋田・96期/37歳)

5.松浦悠士(広島・98期/32歳)

6.平原康多(埼玉・87期/40歳)

7.新田祐大(福島・90期/36歳)

8.佐藤慎太郎(福島・78期/46歳)

9.脇本雄太(福井・94期/33歳)

ちなみに過去10年、3連単で万車券にならなかったことは1度しかない。対して10万を超える配当になったことが2度ある。セオリー通りの結果に収まらないのも『競輪グランプリ』の醍醐味─。

12月30日が待ち遠しい。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

近藤隆夫の最近の記事