「往復乗車券」「連続乗車券」発売終了、2026年3月に そもそもどんなもの? なぜなくなる?
JRグループは、2026年3月に、「往復乗車券」と「連続乗車券」の発売を終了すると発表した。JR各社と連絡会社線にまたがる連絡乗車券も含めてのことだ。
往復乗車券の発売終了にともない、片道601キロ以上を往復する場合にも、往路と復路の運賃がそれぞれ1割引になる「往復割引」も、取り扱いを変更する。学生割引やジパング倶楽部なども、扱いが変わるという。
往復乗車券・連続乗車券の行程での利用の場合は、2枚の片道乗車券を購入することになる。なお、こういったケースでの片道乗車券の購入では、指定席券売機で現在と同じ操作により帰りのきっぷを購入できるように検討しているとのことだ。
販売が減少している「往復乗車券」「連続乗車券」どんなもの?
往復乗車券や連続乗車券は、販売枚数が減少しているという。ではそもそもどのようなものだろうか。『JTB時刻表』(JTBパブリッシング)の「営業案内」を参考に記す。
往復乗車券とは、行きと帰りが同一の区間、同一の経路の乗車券のことを指す。出張の際に同じルートを行き来するような場合や、短距離でも帰りの列車のきっぷを買おうとする際に券売機に人が殺到するような場合(野球やコンサートなど)に使用することが多かった。行きに往復分きっぷを買っておけば、帰りはきっぷを買わなくて済むということで利便性の高いものであった。
この往復乗車券は、片道のJR線の営業キロ601キロ以上の場合に「往復割引乗車券」になり、行き・帰りの運賃が1割引になる。
そのため、東京から大阪まで往復の乗車券を買うよりも、東京から西明石まで往復乗車券を買う方が安いという事態も起こっていた。
往復乗車券では、学生割引と組み合わせた場合、1割引になった運賃がさらに2割引きになるということにもなっていた。
連続乗車券とは、乗車区間が1周を超える場合や、乗車区間の一部が重複するなどで片道乗車券や往復乗車券にならない場合に、片道乗車券2枚を組み合わせて発売する乗車券である。この場合、1枚目の着駅と2枚目の発駅は同じ駅でなければならない。
たとえば、東京から仙台に出かける際に、日光に寄る場合。東京から日光、日光から仙台という乗車券をセットで発券できる。旅程の途中にどこかに寄る場合に便利なきっぷである。
だがこれらの乗車券があることが、多くの人は知らないようになってきた。往復乗車券は指定席券売機での扱いの面倒くささ(指定席券のみを取るのはちょっと手間だ)や、ネット予約の普及で運賃・料金が一体になったもので多くの人が新幹線に乗るようになるなどの事情で、利用が減っていった。
連続乗車券は、そもそも知る人が少ない状況だ。
学割証の扱いは、駅の窓口でないとならない場合も多く、窓口が減っている現状では使いにくいものとなっている。
なぜ、「往復乗車券」「連続乗車券」はなくなるのか?
JRグループは、交通系ICカードの全国的な普及拡大や、乗車の都度インターネットで予約できるサービスを多くの鉄道利用者が使用していることを理由に、「往復乗車券」「連続乗車券」の発売を終了するとしている。
長距離の移動は新幹線が中心となっており、新幹線ではチケットレスがほぼ行きわたっていて、それを利用する人が多くなっているという現状がある。短距離の在来線特急は、特急券をチケットレスで買い、運賃は交通系ICカードで支払うという、私鉄特急のような状況が普及している。
多くの長距離移動者は、高速鉄道で移動することを基本とするようになり、乗車券のみの割引というものの使い勝手の悪さを敬遠するようになった。
インターネットでの予約サイトはチケットレスに誘導するようになっており、乗車券と指定席を分けて、さらに往復などで紙を券売機で発券、というとそれなりに操作がわかっていないといけない。JR東海などの「エクスプレス予約」のように、在来線に対応していない予約システムもある。
チケットレスで、乗車券と特急券がセットになったものを普通の人が多く利用するようになっていった。それゆえ往復乗車券・連続乗車券のような乗車券のみのきっぷを買う人は少なくなった。また、在来線の長距離普通列車というのももうない。乗車券のみで乗り通す人は「青春18きっぷ」を使う人も多いのではないだろうか。
JR各社は、「みどりの窓口」を減らしている。人手不足が原因だ。うがった見方をすれば、窓口を減らしても十分に対応できるように手間のかかる往復乗車券や連続乗車券の発売を終了するともいえるのだろう。
たいていの人が長距離を新幹線でしか移動せず、かつチケットレスが相当程度行きわたっている現状、こういった割引のある乗車券は役目を終えたのではないだろうか。