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降水量の多い地方と降水日数が多い地方は必ずしも一致しないが、降水日数が多い日本海側で大雪注意

饒村曜気象予報士
大雪の住宅街(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

年降水量の多い県

 47都道府県庁所在地のうち、年降水量(平年値)が一番多いのは、高知市の2666.4ミリで、一番少ない長野市の965.1ミリの約2.8倍もあります。

 図1は、年間降水量が多いところを赤、少ないところを紫で示したものです。

図1 年間総降水量の多い地方(赤)と少ない地方(紫)
図1 年間総降水量の多い地方(赤)と少ない地方(紫)

 降水量が多いのは、台風や梅雨による雨が多い高知市・宮崎市・鹿児島市といった西日本の太平洋側と、冬の季節風による降雪が多い金沢市などの北陸地方です。

 日本で降水の原因の3本柱は、梅雨と台風、冬の季節風と言われている所以です。

 逆に、降水の原因の3本柱の影響が少ない長野市などの内陸部の地方や、岡山市などの瀬戸内海に面した地方、札幌市などの北日本です。

 しかし、年降水量の多い地方で降水日数が多いとは限りません。

降水日数の多い県

 気象庁では、都道府県庁所在地のうち、埼玉県さいたま市と滋賀県大津市は感雨計を設置しておらず、1ミリに達しない弱い雨の有無を観測していません。

 このため、さいたま市と大津市には降水日数(0.0ミリ以上の降水現象がある日)の統計値がありません。

 そこで、両市を除いて平年値のランキングを作ると、一番多いのは秋田市の277.0日です(表)。

表 年降水日数(0.0ミリ以上の降水日数)と年間総降水量の平年値の都道府県庁所在地ランキング(降水日数では、感雨計による観測がない大津市とさいたま市を除く)
表 年降水日数(0.0ミリ以上の降水日数)と年間総降水量の平年値の都道府県庁所在地ランキング(降水日数では、感雨計による観測がない大津市とさいたま市を除く)

 1年が365.25日ですので、76パーセントの日で降水があることになります。

 全国的には、北日本と北陸地方で降水日数が多く、東日本から西日本の太平洋側で少なくなっています(図2)。

図2 降水日数(0.0ミリ以上の降水日数)の多い地方(赤)と少ない地方(紫)
図2 降水日数(0.0ミリ以上の降水日数)の多い地方(赤)と少ない地方(紫)

 降水日数が多ければ総降水量も多くなるという単純なものではなく、降水日数が多くても総降水量が少ない都市や、逆に、降水日数が少ないのに総降水量が多い都市もあります。

・降水日数が多く総降水量が多い   金沢市、富山市、那覇市

・降水日数が多く総降水量が少ない  札幌市、仙台市、山形市、福島市

・降水日数が少なく総降水量が多い  静岡市、高知市、宮崎市

・降水日数が少なく総降水量が少ない 岡山市

秋田市の降水日数

 降水日数が一番多い秋田市は、月別にみると、「冬季が多く、夏季が少ない」という傾向があります。

 月別では、1月が一番多く29.7日、ついで12月が29.3日です(図3)。

図3 秋田市の降水日数(0.0ミリ以上、1ミリ以上、10ミリ以上の降水日数)
図3 秋田市の降水日数(0.0ミリ以上、1ミリ以上、10ミリ以上の降水日数)

 つまり、降水現象のない日は、1月が1日、12月が2日しかないことになります。

 これは、冬季に季節風によって雪が降ることの反映です。

 秋田の1月では、0.0ミリ以上の降水があるのは29.7日ですが、1ミリ以上の降水があるのは20.9日、10ミリ以上の降水があるのは3.4日です。

 つまり、日降水量が1から10ミリという日が多く出現していたのです。

 これに対して、太平洋側の地方の降水日数は、夏に多く冬に少なくなっています(図4)。

図4 高知市の降雨日数(0.0ミリ以上、1ミリ以上、10ミリ以上の降水日数)
図4 高知市の降雨日数(0.0ミリ以上、1ミリ以上、10ミリ以上の降水日数)

 高知市では、日降水量が1から10ミリの日の日数は、秋田市より少なく、6月から9月までの間は、日降水量が10ミリ以上の日が多くなっています。

 これが、高知市で降水日数が少ないのに、総降水量が多い理由です。

 令和3年(2021年)12月も、連日降水がありましたし、新年1月も連日降水があると思われます。

週間天気予報

 週明けの27日は、北~西日本は日本海側を中心に大雪となるでしょう。

 太平洋側では関東南部など晴れる所もありますが、山地を中心に大雪となり、平地でも積雪となるおそれがありますので、注意・警戒をしてください。

 週間天気予報をみると、日本海側の地方では、連日、降水現象があります。

 週の半ばころには、西高東低の冬型の気圧配置が緩んで気温が少し上昇し、西日本の日本海側では雪ではなく雨の予報となります。

 週の後半、新年となりますが、再び冬型の気圧配置が強まって寒くなる予報です(図5)。

図5 日本海側の週間天気予報(数字は最高気温)
図5 日本海側の週間天気予報(数字は最高気温)

 一方、太平洋側の地方では、晴れの天気が続き、南西諸島では曇りの日が続くという予報です(図6)。

図6 太平洋側と南西諸島の週間天気予報(数字は最高気温)
図6 太平洋側と南西諸島の週間天気予報(数字は最高気温)

 冬の日本でよくみられる、日本海側では雪や雨、太平洋側では晴れ、南西諸島では曇りという、3分割の天気が続きます。

図1、図2の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3、図4、表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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