ソープランド店で働く女性が、認知症の進む祖母の介護を１週間限定ですることに。店ではお客の身体を、実家では祖母の身体を＜ウォッシュ＝洗う＞二重生活（ダブルワーク）に入った彼女は何を思うのか？また、彼女から見えてくる現実とは？

　なかなかにチャレンジングで、どう受けとめていいのか少々戸惑う設定の映画「うぉっしゅ」。

　俳優としても活躍する岡﨑育之介が監督を務め、主人公の加那役を『暁闇』などに出演する中尾有伽が演じる本作については、制作進行中であることを2022年に岡﨑監督のインタビューで伝えた。

　それから１年とちょっと経つが、作品は無事完成、３月１日～10日まで開催の＜第19回大阪アジアン映画祭＞のインディ・フォーラム部門に見事選出された。

　そこで映画祭開催前に岡﨑監督と主演の中尾有伽にインタビュー。

　いよいよ船出を迎えることになる映画「うぉっしゅ」について、今回の映画祭への期待などを一足早く訊いた。全三回。

「ひと言で表すと、プロフェッショナル」（岡﨑）

　前回（第二回はこちら）は、主人公の加那について、演じた中尾、岡﨑監督、それぞれの視点から語ってもらった。

　その加那が介護することになる祖母を演じたのは、研ナオコ。

　二人にとってはいわずと知れた芸能の世界の大先輩に当たるが、どういう時間になっただろうか？

岡﨑「ひと言で表すと、もうプロフェッショナルな方でした。

　正直、断られるのを承知でオファーさせていただいたんですけど、受けてくださった。

　しかも、オファーを打診したとき、最初に研さんから釘を刺されたというか、こう言われたんです。『監督が妥協するならば出ません』と。

　僕が変に気を遣って、納得していなくてもＯＫだしたりするならば出ない。わたしがどれだけしんどそうでも苦しんでいても、まったく妥協せずに作品を突き詰めていくのならば出ますとおっしゃってくださいました。

　もう痺れますよね。

　そう言われたら、もう僕は全力で研さんにぶつかっていくしかない。だから、遠慮せずにいろいろとお願いしました。実際の現場でもすごくフラットなんです。

　僕と研さんとのキャリアはそれこそ何十年という違いがある。でも、同じ表現者として対等の立場で考えてくださる。

　僕の演出を信頼してくれて、それに全力で応えてくれようとする。

　で、こうおっしゃられるんです。『わたしには芝居の素養がないから』と。

　メインはシンガーでしょうから、確かにお芝居自体の勉強はそれほどされてこなかったかもしれない。

　でも、いくつも映画やドラマに出演されてきた実績がある。

　その実績は確かなもので、たとえば僕がふと思いついて、何かを求めたとします。

　すると、その求められたことを研さんは即座にキャッチして、すぐに答えをだして提示することができる。

　もっと言うと、あるシーンがあったら、その場面がどのように切り取られていて、その中で自分がどう動いて何をすればいいのかをイメージできている。

　僕が言うまでの事でもないと思いますが、さすがだなと思いました」

「研さんに引き出されたものがありました」（中尾）

　いくつものシーンで共演した中尾はどうだったろう？

中尾「おちゃめな方というのが第一印象でした。

　でも、それもいま岡﨑監督がおっしゃったプロフェッショナルの一環といいますか。

　たぶん、研さんは自分がどのように見られているのかをよくわかっていらっしゃる。

　それこそ何十年もそういうことを意識して、この世界で生きてきた方だと思うんです。

　あまり自分が仰々しい感じになってしまうと、おそらくわたしが変に緊張してしまう。

　それを見越して、そうならないように研さんが気を遣ってくださったのではないかと思います。

　それぐらい現場に気を配ってくださっていて、研さんがいらっしゃるとその場がなんかパッと明るくなる。

　すると現場がすごくいい空気になるんですよね。こういう役者さんに自分もなりたいと思いました。

　あと、お芝居に関していうと、もう感謝しかないといいますか。

　研さんの存在によって、わたしからいろいろと引き出されたものがありました。

　ここまで自分がなにかを引き出されたと実感したことはありません。

　それによって、加那になれたと思うんです。

　ですから、研さんには感謝です」

この作品がいい船出をできれば

　では、今回の＜大阪アジアン映画祭＞の選出はどう受け止めているだろうか？

中尾「『ワォ！』といった感じで驚きました。

　主演として、このような映画祭の場に立つことができて、世界初上映することができる。

　やはりうれしいです」

岡﨑「光栄でほんとうにうれしいですね。

　日本の国内映画祭に参加するのは今回が初めてのこと。

　いい機会にして、この作品がいい船出をできればと思っています」

（※本編インタビュー終了）

【「うぉっしゅ」岡﨑育之介監督＆中尾有伽インタビュー第一回】

【「うぉっしゅ」岡﨑育之介監督＆中尾有伽インタビュー第二回】

「うぉっしゅ」

監督：岡﨑育之介

出演：中尾有伽、研ナオコ、嶋佐和也（ニューヨーク）、髙木直子、磯西真喜ほか

<第 19 回大阪アジアン映画祭(OSAKA ASIAN FILM FESTIVAL 2024)>

期間:2024 年 3 月 1 日(金)~10 日(日)

会場:ABC ホール、シネ・リーブル梅田、T・ジョイ梅田、大阪中之島美術館

※「うぉっしゅ」の上映は終了

詳細は公式ホームページ https://oaff.jp