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続々と新しい需要を引き出す「カフェ・ド・クリエ」の発信力とは

千葉哲幸フードサービスジャーナリスト
池袋サンシャイン通りの次世代型店舗「カフェ・ド・クリエ グラン」(筆者撮影)

東京・池袋の東側にあるサンシャイン通りに「カフェ・ド・クリエ グラン」という巨大なカフェがある。167坪210席というスペースは四六時中満席状態だ。利用者数は平日1000人をコンスタントに超えて、土日祝日には1200人となる。このカフェを運営しているのは株式会社ポッカクリエイト(本社/東京都千代田区、代表取締役社長/上野修)、カウンターサービスのカフェ「カフェ・ド・クリエ」をメインに全国に196店舗を展開している(2021年12月末現在)。

利用目的別に客席をゾーニングする

「カフェ・ド・クリエ グラン」サンシャイン通り店が誕生したのは2020年11月のこと。この背景について、代表の上野氏はこう語る。

「業態を変える前は250席と大きな店だったが稼働率が6~7割という状態だった。それをもっと効率のよい客席構成にして特別感のあるメニュー構成を考えた」

そこで、客席空間はお客様の利用目的をとらえて「仕事に打ち込めるワークエリア」「ゆったりとくつろげるラウンジエリア」「カジュアルに休憩できるカフェエリア」と3つのゾーンに分けた。店内は全席禁煙で喫煙ルームを2か所設置、Free Wi-Fi環境を整え、ワークエリアにはコンセントを増設している。BGMでは新しい試みとしてお客様の利用状況をAIが判断して、その雰囲気にふさわしい音楽を自動選択するようにしている。

「仕事に打ち込めるワークエリア」には六角形の客席があり、利用者が広く使えることからノマド環境が快適になっている(筆者撮影)
「仕事に打ち込めるワークエリア」には六角形の客席があり、利用者が広く使えることからノマド環境が快適になっている(筆者撮影)

ドリンクはプレミアムなものを提供、キッチンをオール電化にしてフードはオーブンを使用したものを多彩にし、スイーツはチルド品もラインアップしている。これらで客単価は「カフェ・ド・クリエ」に対し120%となっている。

現在「カフェ・ド・クリエ グラン」はサンシャイン通り店のほかにクイーンズスクエア横浜店、渋谷桜丘スクエア店がある。

リモート会議に対応したサービス開始

ポッカクリエイトでは、12月15日から店内で個室が利用できる「RemoteworkBOX」(リモートワークボックス)サービスを開始した。この個室はFree Wi-Fi環境を一層充実させているほか、リモート会議など声を発することや、3密を避けたいという需要に応えている。オフィス街にある渋谷桜丘スクエア店と日比谷通り内幸町店で1室ずつスタート、これを全国12店舗に広げていく予定だ。

リモートワーク需要の高まりに応えて、一部店舗で「リモートワークボックス」を導入した(ポッカクリエイト提供)
リモートワーク需要の高まりに応えて、一部店舗で「リモートワークボックス」を導入した(ポッカクリエイト提供)

「RemoteworkBOX」は店舗DX事業などを手掛ける2Links株式会社が展開しているもの。利用客は「カフェ・ド・クリエ」のドリンクなど商品を購入することが必須で、利用料金は15分間125円、事前にスマホ等で日時を予約して利用することができる。今後は12店舗での稼働状況を見ながら設置店舗を検討していきたいとしている。

“映える”メニューでいつも新しい

ポッカクリエイトはDPEショップのFC展開を進めていた株式会社プラザクリエイトと飲料メーカーの株式会社ポッカコーポレーション(現ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社)の共同出資によって1994年10月に会社設立、同年11月愛知県名古屋市に「カフェ・ド・クリエ」1号店を出店した。

同社の最大の特徴はその発信力である。プレスリリース配信サービス『PR TIMES』を利用して1週間を空けず新情報を広く発信している。そのほとんどは、ドリンク、フード、スイーツの新作が出たことなど商品に関すること。「カフェ・ド・クリエはいつも何かが新しい」ということだ。代表の上野氏によると「新作はかつて年間120品目リリースしたこともあり、現在では75品目に減らしている」というが、商品はみな“映える”形で紹介され、ストーリーが存在している。同チェーンは「女性客65%」ということだが、このような商品サイクルによって常にリフレッシュされている雰囲気がもたらしていることだろう。

オリジナルの新作スイーツが女性客からの支持を高めている。9月15日から販売された「福岡八女抹茶のショートケーキ」と「りんごのベークドタルト」各450円(ポッカクリエイト提供)
オリジナルの新作スイーツが女性客からの支持を高めている。9月15日から販売された「福岡八女抹茶のショートケーキ」と「りんごのベークドタルト」各450円(ポッカクリエイト提供)

例えば、コロナ禍で旅行を控えることが強いられていたさなか、昨年秋に「クリエで旅するin北海道」というフェアを開催、北海道の牛乳や夕張メロンなどの食材を使用したドリンク、スイーツ、フードなどあらゆるメニューで展開した。このノウハウを生かして今年10月に「クリエで旅するin九州&沖縄」を開催。福岡のブランドいちご「あまおう」を使用したラッシーがSNSで話題になった。また、観光客が減ったことで影響を受けている沖縄の菓子メーカーと共に1年がかりで商品化した「沖縄紅いものモンブランタルト」がヒット、これによって若い女性客を引き寄せた。

昨年11月からオンラインショップを開設して店内での外販と共に販売チャネルを開拓した。

今年はオンラインショップ限定の福袋を販売。こちらは「カフェ・ド・クリエ福袋」3980円(送料込み)(ポッカクリエイト提供)
今年はオンラインショップ限定の福袋を販売。こちらは「カフェ・ド・クリエ福袋」3980円(送料込み)(ポッカクリエイト提供)

病院内の出店ケースが相次ぐ

メニューでは今年から新しい試みを行っている。

まず、「からだハピネス」というキャッチコピーで健康に配慮したメニューを訴求。野菜がメイン、発酵食品、植物性食品、新鮮な果物、糖質オフ麺、雑穀米などをラインアップすることで、目的来店をもたらしている。次に、「クリエのサブスク」。月額6000円(税込)で対象ドリンクを1日2杯まで飲める定額制サービス。これは月に20回以上利用しているヘビーユーザーが存在していることから発案されたことだ。

他の業態としては、店内の居住性を高めた「メゾン・ド・ヴェール」を2013年4月東山動植物園(名古屋市千種区)に出店。現在は商業施設を中心に7店舗展開、女性関連の売り場のコーナーに出店しているセレオ国分寺店では女性客比率が80%となっている。

「カフェ・ド・クリエ」は病院内での出店ケースが多いということも特徴だ。総店舗のうち2割となる40店舗が病院内にある。この端緒となったのは2011年8月国立がん研究センター(東京都中央区)に出店したこと。同病院には全国の医療機関から医師や事務局などの医療従事者が研修に訪れることから、同病院での「カフェ・ド・クリエ」の利便性が評価されて、地元の病院のリニューアルのタイミングで導入されるパターンが多い。病院内では医療従事者や職員の利用が多く、常にメニューラインアップで新しさを発信していることがリフレッシュ効果をもたらしている。今年4月には慶應義塾大学病院内に100席の店舗を構えて医療従事者や病院利用者の利便性を広げている。

このようにポッカクリエイトが次々と新しい可能性を引き出しているのは商品開発力が原動力となっている。上野氏によると新作のメニュー数を減らしたとのことだが、これによってよりヒットの精度は高くなったといえる。新しい試みを行うことによって発信の動機をもたらし、それが消費者に活発なものとして映る。それがさらに店の現場を生き生きとさせているのであろう。

フードサービスジャーナリスト

柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』とライバル誌それぞれの編集長を歴任。外食記者歴三十数年。フードサービス業の取材・執筆、講演、書籍編集などを行う。

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