ゲノム編集魚の一般流通が始める 大手鮮魚チェーンの反応は 日本消費者連盟が公開質問状で尋ねた
いま企業による食開発の流れはゲノム編集に移っている気さえする。ついにゲノム編集魚二種類が厚労省で受理され、販売可能になった。マダイとトラフグだ。動物のゲノム編集食品の商品化は世界初で、日本が実験場ということになる。特定非営利活動法人日本消費者連盟(以下、日消連)は、ゲノム編集食品は安全性が確認されてないとして、回転寿司大手など鮮魚を提供する大手チェーン18社にゲノム編集魚の取り扱いについて公開質問状を送り、回答が出そろった。「安全性に疑問がある」などで「取り扱わない」と回答したのは3社のみで、多くの大手チェーンからは回答がなかった。日消連は「このままでは食べる側が何も知らされないまま知らないうちにゲノム編集食品を食べさせられる」と危機感を強めている。
厚労省が2021年9月と10月に相次いで受理したゲノム編集のマダイとトラフグは京都大学発のベンチャー企業、リージョナルフィッシュが開発したもので、肉厚と高成長が売り。生産性が上がり、飼料効率が良いため環境への負荷が低減されるなどとして新聞、テレビでも大きく報道された。
ゲノム編集とは、ある種のハサミを使って標的となるDNAを切断する技術で、例えば成長を抑制する遺伝子を切断すると、成長促進のみが働き、肉厚になったりするという効果が現れる。政府は、こうしたことは自然界でも突然変異として起こりうることであり、問題はないとして、ゲノム編集食品への表示は必要ないとしている。
しかし、人為的にDNAを切断する行為は、思いがけない変異をその生物体に引き起こし、食べたあとに何が起こるかは予断できないと安全性に懸念を示す研究者も少なくない。
日消連が発行する『消費者リポート』2021年12月号は、ドイツでバイオテクノロジーの影響評価に携わっている民間研究機関「テストバイオテック」のクリ
ストフ・ゼン事務局長にインタビューし、開発者が学術誌に発表した論文をもとに、「このマダイは、体のサイズが大きくなる一方で、体長は短くなり、椎骨の位置が変わっています。いわゆる骨格障害です」と指摘したうえで、
「このゲノム編集のマダイの食用部分の組成がどのように変化したのか、それを食べる消費者にどのように影響するのか、疑問を持っています」と述べている。
日消連は市民団体遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンと連名で、今回の寿司チェーンなどへの質問の前に、開発者のリージョナルフィッシュに公開質問状を送り、同社が行った全ゲノム解析のデータを利用した安全性評価や動物実験の実施について尋ねている。しかし、同社の回答はすでに公表されている厚労省などへの届け出をなぞったもので、消費者の懸念に誠実に答えるものではなかった、と同連盟では述べている。
今回は、使う側の意見を聞くために寿司チェーン及び海鮮居酒屋チェーン計18社に21年11月17日にやはり遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンとともに、ゲノム魚をどう扱うかについて公開質問状を出した。その回答の内容は以下のようなものだった。
――「回答しない」という回答を含めて9社から返事がありました。ゲノム編集魚を使用しない」と明確に回答したのは、すしざんまい、魚民、平禄寿司の3社です(分かりやすいように社名ではなく店名を使用)。「現時点で使用する予定はないが、方針は決めていない」と回答したのは、回転寿しトリトンです。使用しない理由について、すしざんまいは「安全性に疑問があるから」「消費者が不安を持たないか懸念があるから」、魚民と平禄寿司と回転寿しトリトンは「消費者が不安を持たないか懸念があるから」と回答しました。
リージョナルフィッシュ社等とゲノム編集魚の共同開発を発表したスシローの親会社の回答は、「現時点では明確な方針を定めていないので回答を差し控える」でした。共同開発するゲノム編集魚のグループ内での活用や外部への販売を検討するという報道もあったため、改めて確認したところ、「今後リージョナルフィッシュ社等との共同研究を進めていく予定で、その旨広報させていただいております。なお、現状は『共同研究を開始する』という段階のため、従前にご質問いただきました点に関して明確な方針は定めていないという状況でございます」という全く説明になっていない回答がありました。
にぎりの徳兵衛、はま寿司、さくら水産、かっぱ寿司からは、「回答しない」という回答がありました。期限までに回答のなかった企業に対しては、電話で改めて回答をお願いしましたが、くら寿司、すし銚子丸、魚べい、がってん寿司、磯丸水産、庄や、丼丸、笹互からは何の回答もありませんでした。
(質問状回答の全文は日消連ホームページの以下で)
https://nishoren.net/new-information/17122