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派遣法案の施行日、到来!! まぁ、まだ成立してないんですけど。

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長

施行日を過ぎた欠陥法案

現在国会で審議されている派遣法案は、施行日が

平成27年9月1日

となっています。

ところが、ご存じのとおり、本日(平成27年9月1日)時点でこの法案はまだ成立していません。

法律の施行日については、「公布の日から〇ヶ月以内に政令で定める」などと記載してもいいのですが、今回の法案は、あえて平成27年9月1日と、ピンポイントで施行日を明記していました。

この狙いは、平成27年10月1日から施行される予定の、違法派遣があった場合に派遣先企業が派遣社員を直接雇用する制度(=労働契約申し込みみなし制度)の施行前に新法を施行させ、その影響力を削ごうというものです。

この労働契約申し込みみなし制度は、派遣可能期間の制限違反など、派遣法違反があった場合に派遣社員を保護しつつ違法状態を解消させることを目的とした制度で、平成24年改正で導入されました(そのときは、自民党・公明党も賛成しています)。

しかし、労働者を保護する制度である分、経営団体等からの反発が強く、安倍政権ではこれを葬り去ることが悲願でした。

このことは、今回、法案に記載された施行日に施行することが絶望的になった際に、政府が提案した新たな施行日からも明らかです。

提案された新たな施行日は、

平成27年9月30日

です。

露骨にも1日前を施行日に提案してきました。

これに対し、当然、野党は反発しています。

「しんぶん赤旗」の報道によれば、8月28日の参議院の厚生労働委員会の理事者懇談会で、自民党はこう答えたそうです。

「労働契約申し込みみなし制度が10月1日に施行されるので、この問題を解決するため」

出典:派遣法改悪案 問題噴出で施行延期

ここまで露骨に本音を言うものなんだなぁ、それほど追い詰められているのか、と私は思いました。

労働契約申し込みみなし制度は、労働者保護の制度ですから、問題と感じるのは業者側の感覚ということになります。

政府・与党は、口では、派遣労働者のための改正だと言いながら、本音は業界のための改正だということを認めたことになります。

異様に短い施行までの周知期間

そもそも、今回の派遣法案は、現行法を大きく変える内容です。

それを、9月30日という1カ月にも満たない期間の周知で施行することも異常です。

そこまで労働契約申し込みみなし制度を避けなければいけないのか、と思うほどです。

ちなみに労働契約申し込みみなし制度は施行まで3年を要しています。

他の法令と比較しても、この短さは異常と言えるでしょう。(下図参照)

画像

派遣社員も反対が多数!!

派遣社員も反対が多数との調査結果が出ています。

派遣社員、7割近く法改正案「反対」 本社など調査 地位向上に懐疑的、正社員希望6割超す

改正案の賛否を問う質問では、どちらかを含めた「反対」が全体では68%、派遣社員だけでは67%だった。ここでも26業務の人の反対は77%と高くなっている。

理由を複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは「派遣社員の根本的な地位向上にならない」。次いで「人が変われば会社は同じ業務を派遣社員に任せ続けられ、派遣社員が固定化する」「26業務の人が契約更新されない可能性がある」で、とりわけ26業務の人は3年で雇い止めになることへの危機感が強い。

出典:派遣社員、7割近く法改正案「反対」

そりゃ、普通に考えれば、あれがキャリアアップになるとは思えないような内容ですし、本音はそんなこと考えちゃいない法案なので、当然の反応だと思います。

ちなみに、この調査では、「正社員になりたい」という回答が全体では67%、派遣社員だけに絞っても65%にものぼっています。

廃案こそ!

今回の法案は問題が多く、派遣労働者の保護やキャリアアップ、雇用の安定にはつながるものではありません。

これは派遣社員も見抜いています。

むしろこの法案は、不安定かつ低賃金である派遣労働者を増やすものです。

こうした問題のある中身な上に、予定していた施行日を過ぎても成立していないのですから、素直に廃案が一番であると思います!

9月8日に強行採決の動きもあるようなので、是非、反対の声を!!(^O^)/

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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