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「受動的攻撃とは何か?」を、現役プロ心理カウンセラーである竹内成彦がわかりやすく解説します。

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

今日のテーマは、「受動的攻撃とは何か?」です。

⇒ 受動的攻撃とは、相手に自分の意志をハッキリと伝えることをせず、相手に損害を与えることによって、相手の言いなりになることを拒むことを言います。
受動攻撃をする人は、期待されていることを、きちんと行わず、約束しても、その約束を破ったり、何か依頼をされると、じれったいほどゆっくり行なったりします。

私は、受動的攻撃という言葉を聞くと、いつも自分が会社員時代だった頃のことを思い出します。もう20年以上も前の話ですが、私の職場に、Sさんという先輩がいました。Sさんは、仕事が出来なくって、出世街道から完全に外れていました。仕事の遅いSさんは、上司から、よく叱られていました。Sさんは、上司から「急いでやってくれ!」と言うと、「はい、わかりました」と言うものの、急がされれば急がされるほど、わざとゆっくり仕事をするのです。そして、上司が「早くやれって言ってるだろう!」と怒ると、「すいません、すいません」と言いながら、今度はわざと失敗をするのです。

私は、そんなSさんの行動を見ていて、不思議でたまらなかったのですが、そんなある日、Sさんが私に話をしてくれたことがあります。Sさんは、「竹内君ねぇ。僕は、急かされると、わざとゆっくり仕事するようにしているんだよ。すると上司が焦るだろう。そんな姿を見ていると、おかしくってたまらないんだよ。上司から怒られてもヘッチャラさ。どうせ出世もあきらめているし。上司の怒った顔や困った顔を見ると、内心、ざまあみろと思うのさ」と、言ったのです。

私はその時、大変に驚いたのですが、それと共に、「やっぱりそうだったのかぁ」とも思いました。これこそが、正に受動攻撃です。

Sさんは、いつも穏やかな顔をして、感情的になったことなど1度もないけれど、そうやって自分に命令して来る相手に、攻撃をしていたんだなぁ…ということが、今の私ならわかります。

受動的攻撃には、いろいろな種類がありますが、Sさんの場合は、言行不一致です。口では、「はい、わかりました」とか「すみません」と言う。でも行動では、わざとゆっくりやったり、わざと失敗したりする。そうすることによって、相手を困らせる…という攻撃です。

続いての受動的攻撃。2種類めです。それは、「気付かない振りをする」です。
相手が困っていても、決して、手を出さない。声をかけない。気付かない振りをし続ける…というものです。
相手がどんなに忙しくしていても、「手伝おうか?」とか「私に何か出来ることある?」とかは言わない。あくまでものんびり、自分のペースを守り続ける。そして相手をどんどん窮地に追い込む…というものです。この気付かない振りというのは、わざとしている場合も多いのですが、無意識にしている場合もあります。

続いての受動的攻撃、3種類めです。
それは、「被害者ぶって、相手に罪悪感を抱かせる」というものです。
軽く注意しただけにも関わらず、泣いたり叫んだりして、「私が悪いのです。私なんか生まれて来なければ良かったのです。私なんか死ねばいいのです」等と言って、注意した本人に、罪悪感を強く抱かせる…というのが、彼らの常套手段です。

この記事をご覧の皆さんで、「あの人といると、なんかわからないけれど、知らぬ間に自分が加害者にされてしまう」とおっしゃる人はいないでしょうか? そう、あなたは、受動攻撃を受けたのです。

被害者ぶって、相手に罪悪感を抱かせる人は、何かお願いをしただけで、熱を出して寝込んだり、体調を崩したりするなどして、結局、お願いした相手を悪者にしたりします。この、不都合なことが起こると、直ぐに体調を崩す…というのは、受動攻撃をする人がよくやる手口です。

では、次に、受動的攻撃をする人は、
どうして、そんな手の込んだ攻撃、受動攻撃をするのでしょうか?

今のところ、理由は、まだハッキリとは解明されてはないのですが、
幼少期の頃の家庭環境に、問題があったのではないかと推測されています。

たとえば、厳しい親や、過保護・過干渉の親に育てられた場合は、自分の言いたいことを言うことが難しいです。それで、陰湿でねじ曲がった方法で、自分の要求を押し通そうとします。それが受動攻撃の使い手になる理由のひとつです。

そして、もうひとつは、自分の親が受動的攻撃の名人だった場合も、その子どもが受動的攻撃の使い手になる可能性が高いです。どうしても子どもというのは、親の真似をしてしまう生きものですからね。親が受動的攻撃の使い手だったら、子どもも受動的攻撃の使い手になりがちだ…ということです。

あと、生まれつき性格も大いに関係しているでしょうね。「人と正面だって対立することが嫌い」という人は、受動的攻撃をしやすい側面がある…ということは、否めない事実かと思います。

では、次に、自分が受動的攻撃の使い手だったら、どうするか?
自分の周りに受動的攻撃の使い手がいた場合はどうしたらいいのか?
については、次の記事で、また詳しくお話していきたいと思います。

というわけで、今日は、「受動的攻撃とは何か?」というテーマでお話しさせて頂きました。

今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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