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C・ロナウドも長谷部もいないインテル、1年を左右する「審判の夜」でリーダーとなるのは?

中村大晃カルチョ・ライター
イヴァン・ペリシッチはインテルをけん引できるか。写真は2月3日のボローニャ戦(写真:ロイター/アフロ)

インテルは3月14日、ヨーロッパリーグ(EL)決勝トーナメント2回戦セカンドレグで、長谷部誠が所属するアイントラハト・フランクフルトを本拠地サン・シーロに迎える。

◆監督進退にも影響の2連戦

チャンピオンズリーグ(CL)でグループステージ敗退に終わり、コッパ・イタリアでも準々決勝で姿を消したインテルは、EL優勝や来季のCL出場権獲得にルチアーノ・スパレッティ監督の進退が懸かるとも言われている。

フランクフルト戦の3日後には、セリエAでミランとのダービーマッチ。ELで準々決勝に勝ち上がり、直接対決を制してミランを抜いて3位に浮上すれば勢いを得られる。逆に、欧州の舞台から去り、ダービーも落とせば、スパレッティ続投の可能性はさらに小さくなるはずだ。

つまり、フランクフルト戦とミラノダービーは、インテルとスパレッティにとって、今シーズンそのものを左右するかもしれない大事な2連戦となる。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は14日、フランクフルト戦がインテルにとって「審判の夜」になると伝えた。

◆GK以外は12人のみの緊急事態

フランクフルトとは、敵地での初戦で0-0と引き分けている。インテルはアウェーゴールを許さないように守備を気にしつつ、得点を挙げなければならない。だが、チームは緊急事態にある。

負傷でラジャ・ナインゴランとミランダを欠き、クワドォー・アサモアとラウタロ・マルティネスは出場停止。ダウベルト、ロベルト・ガリアルディーニ、ジョアン・マリオは登録外で、リーグ前節で負傷交代したマルセロ・ブロゾビッチも、指揮官がベンチスタートを明言している。そして、キャプテンはく奪騒動から1カ月が経ったマウロ・イカルディは、いまだにチームから離れたままだ。

ブロゾビッチや負傷明けのケイタ・バルデを含め、招集されたトップチームのフィールドプレーヤーは12名。そのほかは、ほとんどが2000年以降生まれのユース選手となっている。

◆「インテルへの愛」は示されず?

一時期は、イカルディの復帰が期待された。6日、仲介役が同席し、ジュゼッペ・マロッタCEOとイカルディ夫妻が「解決策を求めて和やかな話し合い」の場をもうけたからだ。一部では、フランクフルトとのファーストレグ終了後のチーム練習合流もあり得ると言われた。

ルイジ・ガルランド記者は、9日の『ガゼッタ』で「インテルを愛する者はそれを示す時」と主張。イカルディ、対立する(とされる)選手たち、スパレッティの3者に、「良識と責任を示すタイミング」「絶対に友人でいる必要はない。優れたプロであればいい」と、クラブとチームを優先すべきと訴えた。

だが、イカルディはその後もチームに合流せず、14日のフランクフルト戦でも復帰しなかった。よほどのことがない限り、ミラノダービーという大一番にも不在と言われている。

マリオ・スコンチェルティ記者は、『Calciomercato.com』で、イカルディの問題が「サッカー界における大きな変化」を示しており、「雇用者と被雇用者の関係が完全に打ち消される」と述べた。

「(選手と合意するために)仲介役と話し合わなければならず、選手はプレーすることを望まず、それで結局サラリーを支払わなければならない」

◆期待は「CR7のようなペリシッチ」か

イカルディの言動の是非はさておき、インテルが近年のチームの顔だった男を欠いたまま戦わなければならない状況は変わらない。

一方、フランクフルトには、例えば長谷部がいる。ファーストレグでラウタロを完封し、守備ラインを統率したほか、不利な判定を下した主審に対する猛抗議など、プレーでもそれ以外の場面でも日本代表の元主将はリーダーシップを十二分に発揮した。

大事なのは、腕章を巻いているかどうかではない。アトレティコ・マドリーとのCL決勝トーナメント1回戦でハットトリックを達成し、ユヴェントスを逆転ベスト8進出に導いたクリスティアーノ・ロナウドも、リーダーシップの重要性を示している

圧倒的な得点力と大舞台での存在感はもちろんだが、C・ロナウドはハーフタイムでの一幕にも賛辞が寄せられた。後半のピッチに向かう仲間の一人ひとりに声をかけて鼓舞する動画は、SNSですぐに話題となり、「これこそリーダー」と絶賛されている。

今のインテルには、長谷部も、C・ロナウドもいない。

イカルディ不在に加えてラウタロも出場停止とあり、スパレッティはマッテオ・ポリターノを4-2-3-1のトップに据えると予想されている。

ただ、リーダー格としての奮闘が求められるのは、反イカルディ派の筆頭とみられているイヴァン・ペリシッチだ。『ガゼッタ』は、「インテルがベスト8進出を目指すにはCR7のようなペリシッチが必要」と報じた。

ワールドカップで見せたパフォーマンスを再現できず、冬にはプレミアリーグ移籍を志願して、サポーターから批判を浴びたペリシッチは、「審判の夜」に存在感を発揮できるのか。それとも、C・ロナウドのようなリーダーシップを発揮できる選手が別に現れるのだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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