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セリエAが歴史的大混戦、名将たち称賛のアタランタは「真のマエストロ」と夢の優勝なるか?

中村大晃カルチョ・ライター
11月10日、セリエAウディネーゼ戦でのアタランタのガスペリーニ監督(写真:ロイター/アフロ)

2024-25シーズンのセリエAは、史上まれにみる混戦となっている。

首位のナポリとアタランタ、フィオレンティーナ、インテル、ラツィオの2位グループは勝ち点1差。さらに6位ユヴェントスも彼らから1ポイントしか離れていない。

開幕から12試合を消化して2ポイント以内に上位6チームというのは、セリエAの歴史で2回目だ。勝利に勝ち点3が与えられるようになった1994-95シーズン以降では初めてとなる。

昨季は、インテルが圧倒的な強さで通算20回目の優勝を飾った。だが、そのインテルがユヴェントスの連覇に終止符を打った2021年以降、セリエAで王座を防衛したチームはない。

そこで期待が高まりつつあるのが、いまや強豪の立場となったアタランタだ。9年目を迎えたジャン・ピエロ・ガスペリーニ体制が、夢のスクデット獲得(優勝)を果たせるか注目されている。

■序盤の困難を乗り越えて上昇

船出は決して順調ではなかった。トゥーン・コープマイネルスを放出し、アデモラ・ルックマンも去就騒動で開幕から起用できず。ジャンルカ・スカマッカが負傷で長期離脱となり、急きょマテオ・レテギを獲得することになった。

そのレテギは得点王争い首位に立つ爆発ぶりだが、ニコロ・ザニオーロなどその他の新戦力はブレイクに至っていない。ケガにも悩まされ、9月末には昇格組のコモにも敗れた。開幕から6試合までは、2勝1分け3敗と中位をさまよっていたのだ。

だが、アタランタはここからセリエAで6連勝と浮上。チャンピオンズリーグ(CL)でも開幕から4試合負けなしの9位と、決勝トーナメント進出を決められるトップ8もうかがえる位置にある。欧州最高峰の舞台で4試合無失点は、アタランタとインテルしかいない。

■EL優勝で「100%信頼できるコンテンダー」に?

レジェンド監督たちも感心している。

『La Gazzetta dello Sport』紙のインタビューで、アッリーゴ・サッキはアタランタのスクデット獲得もあり得ると話した。チェーザレ・プランデッリはインテルの対抗馬と評している。

サッキはアタランタが見せるサッカー、それを支えるサポーターやクラブと、「かなり先までいけるだけのすべてがそろっている」と指摘。プランデッリは優勝候補の筆頭ではないが、危険な存在になると賛辞を寄せた。

特に、昨季のヨーロッパリーグ(EL)を制した経験は大きい。ガスペリーニにとって、そしてクラブにとっても国際舞台でも初めてとなったタイトルが、アタランタの自信を深めたことは確かだろう。

サッキは「20年以上にわたってイタリア勢が優勝できていなかったELでの勝利が、グループに新たなエネルギーを与え、自信をもたらした。技術的・精神的な価値がなければ、リバプール相手やレバークーゼンとの決勝で勝てるものじゃない」と述べている。

泥臭い勝利に自信の深まりが見えると話したのは、ファビオ・カペッロだ。

「EL優勝は大きな自信を与えた。今のアタランタが以前と違い、絶好調でないときも勝っているのは偶然じゃない。例えばウディネーゼ戦ではフィジカルの点からとても苦しんだが、勝ち点3を手に入れた。そういう試合でも結果を出し続けられるなら、100%信頼できるコンテンダーになる」

■決定的な存在は…

アタランタが現在の地位にたどり着くうえで不可欠だったのは、やはり指揮官の存在だ。サッキもプランデッリも、「真のマエストロ」とガスペリーニを絶賛した。

サッキは「サッカーを教え、選手たちの成長を助け、鼓舞し、しっかり鍛えて、それぞれの選手が最大を得る。戦略家で、チームに国際的なサッカーをさせ、その打つ手で勇気を与えた」とたたえる。

プランデッリはガスペリーニが「イングランド流のマネージャー」になっているとし、「選手たちを向上させ、各々に自分と集団が力を発揮できる役割をデザインする」との見解を示した。

■2年連続の歴史的快挙なるか

もちろん、シーズンは長い。秋に優勝を占うことなど不可能だ。

サッキはアタランタの障害になり得る要素に「経験不足」をあげている。上位で安定するようになったが、トップに立つのは別物と指摘している。さらに、リーグ戦とCLの両立には「堅実なグループと最高の交代要員が必要」と話した。

そのうえで、サッキは「ガスペリーニを強く信頼している」という。

EL優勝に続き、セリエAでも歴史に新たな1ページを刻むことができるのか。ガスペリーニとアタランタの挑戦から目が離せない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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