ソフトバンク育成は過去最多56名も「今年は枠がある」。野手最年長、緒方理貢25歳が示す覚悟
育成大国のソフトバンク。現時点で56名の育成選手が在籍しており、昨年同時期よりも2人増えた。過去最多の在籍人数となっている。
昨季は54名の中から支配下昇格を勝ちとったのは木村光ただ1人のみだった。球界初の四軍制を導入したものの活性化にはつながっていない印象。加えて、オフの契約更改時には大ベテランの和田毅や育成出身で昨年WBCにも出場した牧原大成が育成選手たちへの苦言(参考記事→和田毅と牧原大成の苦言。揺らぐ「育成のホークス」は来季復権するのか)を口にしたこともあった。
組織が大きくなった分の運用の難しさもあるだろうが、球団自体も編成面において反省が必要だった。
育成選手は増えたが、支配下選手は減少
22年は春季キャンプ開始時点で育成38名に対して支配下66名(上限70名)。23年同時点は育成54名を抱えながら、支配下は67名とただでさえ狭かった門がさらに狭まり、若手選手のモチベーション低下につながっていたように見えた。
ソフトバンク球団も今オフは改善に踏み切り、1月8日時点で支配下登録選手は63名としている。また、山川穂高内野手の獲得による人的補償が発生する見込みとなっており、そうなれば支配下登録選手が62名となる。今後、外国人選手を中心とした補強が行われる可能性もゼロではないが、春季キャンプ開始時点では昨年に比べて「枠」が用意された状況で、育成選手たちは競争に挑んでいくことになりそうだ。
そんな中、1人の育成選手を取材する機会があった。
背番号127の緒方理貢は昨年に引き続き、チームの先輩の牧原大成、野村勇の自主トレに同行しており、1月7日に練習公開が行われた。
2年目にウエスタン盗塁王
緒方は駒澤大学から2020年育成ドラフト5位で入団。1年目は故障でほぼリハビリに時間を費やしたが、2年目は二軍公式戦で68試合出場し打率.259、1本塁打、14打点をマークし、自慢の俊足を武器に17盗塁も記録してウエスタン・リーグの盗塁王に輝いた。だが、昨季は50試合、打率.140、4盗塁と低迷した。三・四軍戦が主体の非公式戦では90試合、打率.344、52盗塁の成績を収めたものの、昨季が育成ドラフトから入団3年目で規定により自動的に自由契約となることもあり、首筋に冷たいものを感じながらオフを迎えていた。
それでも再契約。来季が大卒4年目。現在25歳は、球団育成枠の野手では最年長である。
「もう1年チャンスをもらった。だけど、今年がラストだと思っている。まだまだ野球をしたい。もう支配下にならないといけないので、バッティングも守備も走塁も全て鍛えたい」
先輩たちの苦言をどう受け止めたか
そして、緒方は先輩たちの育成選手に向けた苦言をどのようにとらえているのか。それも訊ねてみた。
「僕もずっとそう思ってた。言われたから別にどうこうじゃなくて、僕もずっと思ってたこと。言ってくださったなって感じで、正しいと思います」
年齢もさることながら東都リーグの伝統校出身だけあって、緒方は10代の育成選手たちとは全く違う雰囲気を醸し出している。
「自分が結果出せば、上に行ける世界。その気持ちが足りてないだけの話だと思う。自分がやらなかったらクビを切られるし、頑張って結果を残せば上にいける」
上に行くために――緒方は「飛びぬけた数字を残さないといけない」と覚悟をにじませた。
「支配下登録期限は7月末。もし、そこまで上がっていないとしたら打率3割以上、盗塁は30個。それくらいの数字を残しておきたい」
先述したように、今季は「枠」がある。「チャンスだと思ってる。やっぱり去年とか一昨年は、大体分かってしまっていたというのが正直なところ。キャンプ中に結果を出せないと上がれないとか、外国人選手も入ってくるだろうから育成から支配下になれるのは何人くらいだとか。今年は枠がある。狙っていきたい」とさらに力を込めて話した。
【写真はすべて筆者撮影】