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和田毅と牧原大成の苦言。揺らぐ「育成のホークス」は来季復権するのか

田尻耕太郎スポーツライター
契約更改後の会見に応じた和田毅投手

 あえて苦言を口にした。ソフトバンク・和田毅投手が25日、PayPayドーム内の球団事務所で契約更改を行い、22年目となる来季の契約書にサインをした。その後の取材の中で「球団との交渉の中で話したわけではないんですが」としたうえで、若鷹へ痛烈な言葉を放った。

和田「ユニフォームを変えても」

 和田は今季、自身7年ぶりとなるシーズン100投球回をクリアし、8勝6敗で防御率3.24の成績を残し、先発ローテの一角を担った。勝ち星をはじめ先発登板数(20)、奪三振(85)もチームで2番目に多かった。

 来年2月の誕生日で43歳。この活躍には感服するしかないのだが“その反面”という思いを持つのは誰もが同じだ。取材の中で「若い後輩たちへの思い」を問われた時だ。和田は「これは阪神に移籍した大竹が育成で入った時に言った言葉ですが、僕は育成選手はプロ野球選手ではないと思っている」と切り出した。さらに「少し厳しい言い方になりますが」と言葉を継いだ

「(1軍と同じ)ユニフォームを着てプレーをするのは贅沢だなと思う。メジャーでは3Aとか2Aとかマイナー選手は違うユニフォームを着る。メジャーに上がらないとメジャーのユニフォームは着られない。日本では背番号3桁の育成選手でも、同じチーム名を背負って同じユニフォームを着られる。日米の違いはあるにせよ、それを認識して日々を過ごしているのかなって疑問に思うことがたくさんある。ユニフォームを変えてもいいんじゃないかなと思うぐらいです。育成選手の這い上がる覚悟…。どれくらいの気持ちで入ってきたのかは人それぞれだけど、ちょっと甘いかな。這い上がりたいという気持ちが見えるのは仲田(慶介)選手くらい。僕の目に入るだけなので見落としているかもしれないけど、自分は(米国時代に)マイナープレーもした。彼らのハングリーさも見ている。それと比べると甘いかなと思うんです」

 普段はうるさ型のベテランではない。その和田がここまではっきりと物申すのは珍しいことだった。

牧原大「絶対に越えられない」

牧原大成
牧原大成

 このオフ、同様の声を上げたのは和田だけではなかった。牧原大成は以前から警鐘を鳴らしており、先日の契約更改後の取材でも厳しい言葉を発した。

「(今年の夏、リハビリのため筑後で調整した際に)育成の選手がすごく多かった。伝えられる範囲で、こういうところを頑張ったらいいんじゃないのかという話をしました。技術のことじゃない。それよりも君たちは育成だよ、自覚を持たないと終わってしまうよ、と」

 牧原大は育成ドラフトでプロ入り。同期育成ドラフト4位に千賀滉大(現メッツ)、育成5位に牧原大、そして育成6位が甲斐拓也だった。ファーム施設は筑後移転前の雁の巣・西戸崎時代。今ほど充実したものではなかった。

「今の子たちは(チームで)決められた時間の中でしか練習をしていない。チームで決められた練習を育成選手が同じようにやっても絶対に越えられない。それに、プロ野球に入っていろんなブランド物を身につけたりとかは稼いでからでもできるじゃないですか。お金を持てれば楽しいこともできるし、欲しいものも買える。今は我慢して野球をやるのもいいんじゃないのっていう話はしました」

 ソフトバンクは今年から球界初の四軍制を導入。これまで数々の育成出身スターを輩出したシステムの拡充と強化を狙ったが、今年54人の育成選手が在籍した中で支配下登録を勝ちとったのは木村光(一軍登板なし)の1人のみだった。もちろん、たった1年で四軍制の是非を問えるものではない。

支配下枠問題。現時点で「63」に

 だがしかし、ソフトバンクの育成選手たちの目に輝きがないように映る……。それは筆者もたびたび指摘をしてきた。今季については春季キャンプの時点で支配下67名と残り枠はこの時点で3つしかなく、そのうえ6月にはデスパイネを再獲得、登録期限直前の7月にはリリーフ左腕のヘルナンデスも入団してきたため前述の木村光を支配下登録しただけで「70人」が埋まってしまったのだ。

ファーム本拠地のタマホームスタジアム筑後
ファーム本拠地のタマホームスタジアム筑後

 同じ轍は踏まない――。ソフトバンクはこのオフはチーム編成に大きなメスを入れた。主力を担ってきた森唯斗や嘉弥真新也、上林誠知らを自由契約にし、1対2のトレードも敢行。外国人選手を含む17人が退団した(支配下のみ/現役ドラフト・その後育成再契約も含む)。一方で支配下入団はドラフトを含めて10人。現時点では支配下63人。今後まだ補強の可能性はある(一方で山川獲得の人的補償で流出の可能性も)が、まずは23年シーズンより余裕を持たせて来春のキャンプに入っていくことになりそうだ。

 球団は施設面などのハードに加えてソフトの部分も整えてきている。先輩たちの声も若鷹に届いているはずだ。もう言い訳はできない。24年シーズンこそ新たな育成の星が誕生するか注目したい。

(※写真はすべて筆者撮影)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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