海外要因に左右されるアベノミクスに日本の未来は託せない
フーテン老人世直し録(202)
如月某日
日銀が1月29日にマイナス金利導入を決めてから市場の動揺が止まらない。円安と株高を狙った政策が、逆に円高と株安を劇的に進行させた。
2月11日のロンドン市場で円は1ドル110円台と1年3か月ぶりの円高水準、一方の株価は10日の日経平均が1万6千円を割り込んで日銀が追加緩和を決めた一昨年10月31日以来の安値水準になった。
石原経済再生担当大臣はこの間「日本経済のファンダメンタルズはしっかりしている」とやけにハイテンションな声で答えていたが、この人物は何があっても同じ発言を繰り返すようセットされたロボットなのだろう。それは安保法制を巡る国会審議で安倍総理が演じたのと同じで、議論にさせないための答弁術なのだが、それが成功したと捉えているところにこの政権のかつての自民党とは異なる水準の低さがある。
そして「この道しかない」と言い募るところにこの政権の特色はあり、何があっても日銀が「異次元緩和」の政策を捨てる事はありえない。この政権が続く限り更なる緩和策へと突き進むはずである。
円高・株安はアベノミクスの円安・株高効果で潤ってきた大企業を直撃する。政府は企業業績の好調を設備投資や賃上げに振り向けさせようと必死になっているが、そもそも製品の売り上げが増えて業績が好調になったのではなく、円安の為替効果で利益が膨らんだ大企業はこれまでも設備投資や賃上げに積極的になれないでいた。
そこに企業利益を失わせる円高・株安が起きたのである。ますます設備投資や賃上げに慎重になる。いくら政府が「デフレマインドから脱却せよ」と言っても聞く耳を持てない。史上最高益を上げた大企業がそうなれば利益の滴りを待っていた中小企業や消費者は財布の紐を締めざるを得なくなる。
マイナス金利で利益が減る銀行は、預金金利を下げ手数料を上げてカバーするとみられるが、それもまた消費者に心理的影響を与え、さらに財布の紐は締まる。そして将来に思いを馳せれば、当然ながら年金の運用にもマイナスになる事から、受け取れる年金は減額されると考えられ、財布の紐はますます締まるのである。
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