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「殴った客重体 コンビニ店員逮捕」報道から考える怒りと高齢者の心理

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:コンビニレジ(写真:アフロ)

■殴った客重体 コンビニ店員逮捕

報道によると、コンビニ店員が客を殴ったと見られる事件が発生しました。

千葉市のコンビニで釣り銭の渡し方を注意されたことに腹を立て、客の男性の頭を床に打ち付けるなどしたとして、千葉東署は26日、傷害の疑いで、千葉市若葉区千城台南、アルバイト店員花沢元容疑者(32)を逮捕した。署によると、客の男性は病院に運ばれ意識不明の重体。

出典:釣り銭注意され傷害疑い、千葉 客重体、コンビニ店員逮捕 8/26(水) 共同通信Y!

報道によれば、客として来た70歳の男性から注意を受けたことに対して、怒った店員がレジのカウンターから出て、客を投げ飛ばしたり、殴ったりした疑いが持たれています。

■ヤフーコメントの反応

コメント欄を見ると、「腹が立つ客や利用者は多いが、やはり暴力はいけない」といった意見が並びます。ごもっともです。

それぞれの投稿者が、ご自分が経験したり見聞きした理不尽な客の事例や、客と店員のトラブルなどを紹介しています。また、高齢者の問題を指摘する声もあります。

それだけ、このようなトラブルは多いのでしょう。

人間関係トラブルは日常的に起きていますし、暴行事件や傷害事件も毎年何万件も発生しています。それなのに、この事件は大きく報道され、今現在1万1千を超えるコメントが寄せられるほど、注目されています。

それは、同種のトラブルの多さと、意識不明の重体という事の重大さ、そして事件現場がコンビニという日常的な場面だということがあるでしょう。

■怒りとは

人には様々な感情がありますが、怒りの感情は、人生を台無しにしかねない感情です。たとえば殺人の動機の第一は、人間関係トラブルで、「つい、カッとなって」です。

怒りに我を忘れ、暴力をふるえば刑事事件になりかねませんし、暴言一つで社会的生命を奪われることもあります。あおり運転も、大きな社会問題です。

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ストレスが多い現代であり、かつ暴言暴力には厳しい現代社会で、怒りのコントロールは、重要な課題です。

報道によると、カウンターから出て複数回の暴力とありますが、これが事実だとすると、単に突発的に一発殴るよりも、深い問題も推測できます。

一般に、激しい怒りが爆発した、キレたと周囲が感じるようなケースでは、その出来事の以前から怒りやイライラがたまっていることが多く見られます。

それは、相手との以前からのトラブルもありますし、まったく無関係なストレスがたまっていることもあります。風船がぱんぱんに膨らんだ状態になっていると、小さなきっかけでも風船は破裂するのです。

あるいは、日常的に暴力に触れているケースもあります。自分が日常的に暴力をふるっていたり、暴力を見ていることで、怒りの解決策として暴力をふるいやすくなることがあります。

大切なのは、問題解決です。ほとんどの場合、暴力をふるっても問題は解決せず、かえって悪化します。全ての職業の人々が、普段から心の調子を整え、自分の感情のコントロールを学ばなければなりません。

怒りの感情コントロールの一つの方法が、相手の言動の下にある心の理解です。

■高齢者の言動

横暴で、乱暴な高齢者の問題を、よく耳にするようになりました。高齢者が増え、以前よりも高齢者が活発になって街中に出るようになったこともあるでしょう。

また、高齢者にもストレスがたまっていることもあるでしょう。

現代は、変化が激しい社会です。昔なら、高齢者は豊かな経験をしており、地域における物知りでした。ところが、現代の変化についていけない高齢者は、物を知らない人間になってしまいます。

さらに、知らないこと、新しいルールに従っていないことを指摘されると、若者以上にプライドが傷つき、怒る高齢者もいます。

長年の経験から、高齢者は自分なりのルール、価値観を持っている人もいます。それを、店員など他人に押し付け、説教しようとする人もいます。

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心の中で思っているだけなら良いのですが、自分の中の抑制力が弱っていると、つい口にしまいます。説教された側も余裕があれば良いのですが、心の余裕がないと傷つき怒りがわき、トラブルになるでしょう。

■人間関係の事件事故を防ぐために

日常的な欲求不満は、怒りを増幅させ、攻撃行動を誘発します。

最初から金目当ての空き巣などは別の問題ですが、人間関係の些細なすれ違いから大きな事件になることは、とても残念です。

自分の心を知ること、相手の心を知ることが、人間関係トラブル防止に役立つでしょう。自分と相手を客観視することが、激しい感情を鎮めるのです。

自分自身に対して「ストレスたまっているなあ」とか、相手に対して「まあ、しょうがないかなあ」と思えれば、怒りも下がるのです。

さらに、周囲の協力があれば良いでしょう。冷静な人が間に入ってくれることで、場が収まることはよくあることです。

現代社会のストレス、さらにコロナ禍のストレスもあります。世の中にギスギスした雰囲気が増えています。だからこそ、より良い人間関係のために、一人ひとりの思いやりと配慮が求められています。

~被害者の回復をお祈りしております~

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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