面接解禁直前に厚労省から334ブラックリスト公表のなぜ
2018年卒の内定率は昨年より約10ポイント増加し、34.8%
いよいよ6月1日、面接解禁日がやってきました。昨年に引き続き現状の内定率が気になったので調べてみたところ、5月1日時点で昨年より約10ポイントも上がり全体の34.8%が何かしらの内定をもらっているということでした。これは、一昨年、昨年と続伸している状況です。
出典:株式会社リクルートキャリア【速報版】「2017年5月1日時点 内定状況」 就職プロセス調査 2018年卒
また、5月30日に発表された有効求人倍率は、1974年2月以来となる43年ぶりに1.48倍になったとのことで、就活生に限らずこれ以上ない売り手市場が続いています。
ところで、この1年の間に起った大きなニュースとしては、政府が主導する「働き方改革」があります。これは、労働に関する様々なテーマを掘り下げ戦後70年ぶりに労働基準法を大きく改正していく動きで、3月28日に全10回の「働き方改革実現会議」を終了し、形となったものが9つのテーマです。(図1)特に大きなものとしては、非正規の処遇改善や長時間労働の是正といったところでしょう。残業時間を原則45時間、年間で360時間とし、労使協定を結べば年間720時間まで認めるとしたことや、特に忙しい月は特例として100時間未満の残業を容認するという今までなかなか労使で折り合いがつかなかった部分に首相が裁定を下した格好となりました。
それにしても、この「働き方改革」は、労働環境を大きく賑わせているようで、この4月に新年度を迎えた各社の人事担当者は「働き方改革」への取組に躍起になっており「働き方改革」と銘打ったセミナーはどこも人が押し寄せていると聞きます。とはいえ、具体的に何をしていけばいいかを模索しているといった状況で、まだまだ混沌とした状況がしばらくは続いていきそうです。
5月30日付で、日本商工会議所と東京商工会議所がこの9つのテーマを自分たちなりにまとめたものを発表しましたので、特に中小企業などは参考にするといいかもしれません。
http://www.jcci.or.jp/hatarakikataikengaiyo.pdf
さて、もう一つ忘れてはいけないのが、悲しい出来事として記憶に新しい電通事件です。特に就活生にとっては教訓として活かしてほしい出来事でした。この事件は、被害者(24歳女性)の母親が安倍首相に直接対話をするところまで話は進み、その甲斐あってか山は動きブラック企業への対応を強化するといったことにつながっていったのです。
ここに一つ驚くべき事実があります。これは、Wikipediaの電通事件のページです。(図2)たまたまですが、私の知人が半年ほど前にこのページを使って資料を作成していました。(図3)
見比べると分かると思いますが、(図3)の下段の囲みの部分が(図2)現在のWikipediaのページでは完全に削除されているのです。電通なのでこの程度の削除は容易いのかもしれません。どう見ても関係者が意図的にしたとしか思えません。このような状況を我々は改めて認識する必要があるでしょう。
ブラック公表基準の改定
平成27年5月18日に厚生労働大臣からいわゆるブラック公表基準が発表されました。これには主に3つの基準があり、一つ目は残業時間が1カ月100時間以上になっていないか、二つ目は1事業所において10人以上または1/4以上の労働者がそれに該当していないか、三つ目は1年の間に3回又は3ヵ所でそれが発生していないかという基準でした。この運用の結果、公表されたのは全国で1社だけで千葉県の上場会社が労働局のホームページに掲載されました。
しかし、その裏では電通のような事件が氷山の一角として起きていたわけで、この事件が大きな契機となり、平成28年12月26日に「『過労死等ゼロ』緊急対策」が発表され、その内容は(図4)のように強化されました。100時間が80時間に、3事業所が2事業所にといった内容です。
そしてその運用は平成29年1月1日からとなったわけですが今回ブラックリスト(「労働基準関係法令違反に係る公表事案」)として平成28年10月1日から平成29年4月30日までの間に何らかの理由で書類送検された会社(正確には事業所単位)が公表されたのです。その数334社。(図5)
このリストに掲載されているのは、突発的な事故などによる労災などのケース、または労働基準監督署が何度も是正勧告等をしたが改善をしない、いわば悪質なケースの2種類によるもので1年間を目安に掲載されることになっています。しかし、当然のことながら是正処置等をすればブラックリストからは削除され、新たに書類送検となった企業が掲載されるといったものでリストは毎月更新されるそうです。
では、なぜもうすぐ面接が始まるこの時期にブラックリストを発表したのでしょう。実は、電通事件がきっかけで、厚生労働省はいわゆるホワイト企業マークの基準を一様に改定しました。電通の事件に合わせて、改定が行われブラックリストが紹介されたのです。これは暗に、「一定の信用力をつけるなら、ホワイト企業になりなさい」というメッセージを投げかけているのだと思うのです。
ホワイト企業は、3343社
悪い話ばかりが続きましたが、厚生労働省では就活生や求職者に対して採用環境の改善に努めていたり、現役の労働者が働きやすい環境を確保できるように取り組んでいる企業に対して、ホワイト企業の証となる各種認定マークを定めています。
特に「ホワイトマーク」(安全衛生優良企業公表制度)といわれる認定マークは、労働安全衛生法に則した基準となっており、非常に厳しいものとなっています。上記のブラックリストの詳細を見ると分かりますが、掲載されているほとんどの企業が労働安全衛生法違反となっており、このホワイトマーク認定を取得している企業は総合的に見て、ホワイトレベルの最も高いものであることが言えます。他にも、若者雇用促進法に則した「ユースエール認定」を取得している企業は、特に若者(~35歳程度)の採用に力を入れており募集要項の内容は法律に則ったものを提示している企業群となります。
女性活躍推進法に則したものとしては「えるぼし認定」があります。こちらは10年間の時限立法ですが、女性活躍の場を大いに活性化させている企業群が選ばれています。次世代育成支援対策推進法からは「くるみん認定」、「プラチナくるみん認定」があります。比較的取得が簡単であることから認定を受ける企業が多いです。子育て支援に力を入れている企業群であり、全国でも取得企業は一番多い認定マークとなっています。
これらの認定マークを手に入れた企業は全国に約3343社あり、採用活動に有利に働いていると聞きます。私のミッションのひとつであるホワイトリボンキャンペーンの中でも、ブラック企業を社会的に追い詰め、撲滅をよびかける運動を展開しており、ホワイト企業についてはどんどん応援していきたいと思っています。上記、ホワイト企業の一覧は、厚生労働省の委託事業者であった非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構で、そのすべてが確認できます。
就活の新たなスタイル
人生を決める重要な就活において、新たなスタイルを築いてほしいと思います。むやみに有名だからとか大手だからといって活動を進める前に、まずはホワイト企業の証を手にしている企業をチェックしてみてください。ブラック企業とグレー企業は調べきれないほどありますが、ホワイト企業の証を手にした企業はまだまだ少ないのです。世の中には、自称ホワイト企業を謳っている会社もありますが、国のお墨付きを手にしているかが見分けるコツです。そして、社畜になりに行くような就活はもう止めにして、堂々と採用面接を勝ち取る学生になってほしいと思います。ずっと昔から言われていることで昨年発表された、『働き方の未来2035』にもあります本当の意味での「就社から就職」を目指して頑張ってもらえればと思います。