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Vaundyが幕張メッセ公演で見せた多彩な才能と新たな挑戦

柴那典音楽ジャーナリスト
(撮影:日吉”JP”純平)

7月28日、千葉・幕張メッセで開催されたVaundyのワンマンライブ「Vaundy one man live "HEADSHOT" at Makuhari Messe」に訪れた。

昨年の「オリコン年間カラオケランキング」1位となった「怪獣の花唄」を筆頭に数々のヒット曲を放ち、今の時代を代表するシンガーソングライターとなったVaundy。作詞・作曲・アレンジにとどまらず、デザインや映像のディレクションも手掛けるマルチアーティストであることも大きな特徴だ。ライブは、そんな彼の多彩な才能と、ミュージシャンとしての類まれなる表現力を実感させられる場所だった。

ライブ会場は、中央に四角形の360度ステージを設置、その周囲をぐるりとオールスタンディングのフロアが囲むという、まるで格闘技のリングのような形態だ。4人のサポートメンバーが1曲目の「東京フラッシュ」の演奏を始めると、Vaundyは歌いながらフロアを貫く通路を歩き、ステージに上がる。さらに「灯火」「花占い」と代表曲を続け、オーディエンスを惹き込んでいく。

まず感じ入ったのは、歌声の持つ生々しい力だ。この日のセットリストは初期の楽曲から最新曲まで万遍なく選んだ内容。「東京フラッシュ」や「そんなbitterな話」などのグルーヴィーな楽曲、「踊り子」や「常熱」のようなダンサブルなロックナンバー、「napori」や「宮」のような繊細なスローナンバーなど、多彩なスタイルの楽曲を次々と披露していく。ときに荒々しく迫力たっぷりに、ときに優しく親密に響くヴォーカルが、楽曲の魅力を引き出して伝える。4人のサポートメンバーの演奏も力強くそれを支える。

アリーナ規模のライブでは大型ビジョンによる映像演出が一般的だが、あえて映像を用いず、こだわった照明技術によって高揚感あふれる雰囲気を生み出す舞台演出も印象的だった。

また、この日のライブでは新たな試みへの挑戦も見られた。それが「GORILLA芝居」と題された、この日初披露の新曲だ。リズミカルな楽曲に乗せてステージにダンサーが登場しVaundyと共に踊る。その模様は事前に収録撮影された映像スタジオパートと掛け合わされ、生配信の形でYouTubeにミュージックビデオとして公開された。

そして、この日のライブでハイライトのひとつになったのが、7月にリリースされたばかりの新曲「ホムンクルス」。8月2日に公開されたアニメ『僕のヒーローアカデミア』の劇場版第4弾『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』オープニング主題歌として書き下ろされた一曲だ。ダイナミックなギターサウンドと激しいシャウトが持ち味の痛快なハードロックナンバー。観客のシンガロングも加わり、大きな盛り上がりを見せていた。

8月5日発売の週刊少年ジャンプ合併号をもって原作漫画が完結し大きな話題を呼んでいる「ヒロアカ」。劇場版も公開3日で観客動員60.8万人、興行収入8.9億円を突破とスマッシュヒットの走り出しとなっている。

Vaundy自身も「ヒロアカ」のファンで大きな影響を受けてきたことを明かしている。主題歌に関しては「ヒロアカのキャラクターたちにどういう風にエールを送ってあげられるか考えて、僕なりの回答を込められたかなと思います」とコメント。エンディング主題歌の「Gift」も含めて、本人にとっても思い入れの強い楽曲になったようだ。

11月からは自身最大規模の全国10都市20公演のツアーもスタートする。ライブアーティストとして、クリエイターとしてのさらなる飛躍を確信させられるようなステージだった。

音楽ジャーナリスト

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。京都大学総合人間学部を卒業、ロッキング・オン社を経て独立。音楽を中心にカルチャーやビジネス分野のインタビューや執筆を手がけ、テレビやラジオへのレギュラー出演など幅広く活動する。著書に『平成のヒット曲』(新潮新書)、『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)、『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『ボカロソングガイド名曲100選』(星海社新書)、『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。

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