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スペイン代表の懸念材料。バルサの「三銃士」と強豪国ならではの贅沢な悩み。

森田泰史スポーツライター
スペイン代表で中心のペドリ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

世界最高峰の大会に向け、各国、代表チームの強化を進めている。

スペイン代表は先日行われたUEFAネーションズ・リーグでスイス代表、ポルトガル代表と対戦した。結果は1勝1敗で、準決勝進出を果たしている。

スペイン代表を率いるルイス・エンリケ監督
スペイン代表を率いるルイス・エンリケ監督写真:ムツ・カワモリ/アフロ

「すでに(メディアで)叫ばれていたような選手は、代表に呼んできた。彼らに求めるプレーを伝え、その結果を見た。そういった選手が代表に戻ってこられるかと問われれば、求めたプレーができれば、戻ってこられると思う」

これはルイス・エンリケ監督の弁である。

スペインは、カタール・ワールドカップに向け、最後の調整に入っている。そのラストの招集リストで、メンバーに大きな変更はなかった。今季のラ・リーガ序盤戦で活躍しているボルハ・イグレシアス(ベティス)、ニコ・ウィリアムス(アトレティック・クルブ)らが呼ばれたものの、「いつものメンバー」が揃った印象だった。

■W杯のメンバーは

指揮官の中で、構想は固まってきたと言っていい。そのラ・ロハ(スペイン代表の愛称)を紐解きながら、カタールW杯で日本代表も対戦するチームのメンバーを考察する。

GK

レギュラーを確保しているのはウナイ・シモンだ。ロバート・サンチェス、ダビド・ラジャがサブとして控える。

現在のスペインの特徴として、GKを使ったビルドアップが挙げられる。シモン、サンチェス、ラジャはいずれも足元の技術が高く、後方からパスをつなぐことができる。

DF

CBではエリック・ガルシア、パウ・トーレス、アイメリック・ラポルト、ディエゴ・ジョレンテといった選手が重宝されてきた。今回、ラポルトが負傷で不在となり、代わりにギジャモンが呼ばれている。

GKと同様に、ビルドアップ能力が高い選手が求められている。そう考えると、イニゴ・マルティネスにも、まだチャンスはあるだろう。

右SBはセサル・アスピリクエタ、ダニ・カルバハルが当確だと見る。

左SBはジョルディ・アルバとホセ・ガヤだ。スペインのSB(特に左SB)には攻撃的な選手が必要とされる。高い位置を取り、インサイドハーフ、ウィングと協働しながら、サイドを攻略しなければいけない。

ただ左SBに関しては、この夏にバルセロナに移籍したマルコス・アロンソがポジションを狙っている。アルバとガヤとはタイプが異なる選手であり、M・アロンソが空中戦の強さが買われてメンバーに滑り込む可能性はある。

MF

中盤には、セルヒオ・ブスケッツ、ペドリ・ゴンサレス、ガビのバルセロナの「三銃士」が構える。

ブスケッツの代役にはロドリ・エルナンデスが控える。インサイドハーフには、オーガナイザー型のコケ、2列目から飛び出すタイプのマルコス・ジョレンテとカルロス・ソレールがおり、戦い方にバリエーションがもたらされる。

負傷中のチアゴ・アルカンタラ、今夏にパリ・サンジェルマンというビッグクラブへの移籍を果たしたファビアン・ルイス、レアル・ソシエダで久保建英の同僚であるミケル・メリーノらにもチャンスはあるかもしれない。しかしながら、基本的には「バルサの三銃士」を中心に中盤が構成されるだろう。

FW

そして、前線だ。

CFに据えられるのはアルバロ・モラタだろう。ルイス・エンリケ監督のモラタへの信頼は厚い。

モラタの代わりの選手として、今回選ばれたのがボルハだった。このポジションには、ラウール・デ・トーマスがいたが、彼は夏のマーケット閉鎖直後にラージョ・バジェカーノに移籍して、1月までプレー不可という状況に陥っている。

WGはフェラン・トーレス、パブロ・サラビアがルイス・エンリケ監督の評価を高めてきた。

また、今回、選ばれたニコ・ウィリアムスが代表戦でどれだけできるか。しかし、そのポジションにはジェレミー・ピノもいる。突破力が要求される純粋なアタッカーという意味では、本大会ではこの枠は「1枠」だろう。

WGで言えば、注目されているのはマルコ・アセンシオだ。レアル・マドリーでも、この夏に移籍騒動があった影響もあり、定位置を失っている。ただ、代表ではゼロトップ起用も可能だというところで差別化ができており、ルイス・エンリケ監督にも気に入られている。

またルイス・エンリケ監督は負傷中のダニ・オルモ、ミケル・オジャルサバルの状態を注視している。

オルモはカタールW杯までに回復できるだろう。だがオジャルサバルは間に合う可能性が低い。

加えて、アンス・ファティ、ジェラール・モレノといった選手がいる。とりわけ、ファティに関しては、今回、招集外となりスペインのメディアで議論が巻き起こった。ひざの負傷による長期離脱、4度の手術を経験したファティについては、バルセロナが慎重な姿勢で起用してきている。その選手を招集するかどうかは、最後まで波紋を呼ぶだろう。ただ、筆者の見解としては、ルイス・エンリケ監督の考え方からして「呼ばない」方が濃厚だろうと現段階では見ている。

モラタの決勝ゴールでポルトガルに勝利
モラタの決勝ゴールでポルトガルに勝利写真:ロイター/アフロ

スペイン代表に懸念材料がないかと言われれば、そんなことはない。

ジョルディ・アルバ、フェラン・トーレス、アセンシオらは所属クラブでレギュラーポジションを確保できていない。アスピリクエタ 、サラビラ、ソレールといった選手も同様だ。特筆すべきは、今季に入りアルバやアスピリクエタの序列が下がったことだ。それは、ルイス・エンリケ監督としては計算外だったはずだ。

前述したファティを筆頭に、セルヒオ・ラモス、イアゴ・アスパスと、「招集すべき」と声が挙がっている選手はいる。強豪国ならではの贅沢な悩みではあるが、スペインといえど、チームビルディングは容易ではない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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