プレミアリーグのトッテナムで活躍するソン・フンミンが東京五輪に挑むU-24韓国代表にオーバーエイジとして選出されなかったのは、クラブ側の了解を得られなかったためではなかった。U-24韓国代表を率いるキム・ハクボム監督自らが、最終的にはソン・フンミンを選ばなかった。

東京五輪に挑むU-24韓国代表の最終メンバーは6月30日に発表されている。

注目のオーバーエイジとして選ばれたのは、元ガンバ大阪で現在はフランスのジロンダン・ボルドーに所属するFWファン・ウィジョ、中国スーパーリーグ北京国安で活躍するDFキム・ミンジェ、そして今季までドイツ・ブンデスリーガのフライブルクに所属するも兵役のために5月に退団し、Kリーグの古巣・水原三星（スウォン・サムスン）に復帰したMFクォン・チャンフンの3人が選ばれた。

一部で期待と注目を集めていたソン・フンミンのオーバーエイジ選出は実現せず、筆者を含め多くの韓国メディアは、ソン・フンミンが過去2回オーバーエイジとして五輪やアジア大会に出場しているため、トッテナムが3度目の特例を許すはずがなく、そのために東京五輪招集が叶わなかったと見ていたが、内情は違っていたようだ。

ソン・フンミンに近い関係者が、聯合ニュースを通じて、「フンミン自らがトッテナムから(東京五輪参加の)同意を得ていた」と明かしたのだ。

この関係者によると、ソン・フンミン側はキム・ハクボム監督やKFAからトッテナムからの許可を引き出してほしいとの要請を、6月下旬に打診されていたという。

それを受けてソン・フンミン側はトッテナムに説明。ソン・フンミンとトッテナムは再契約問題も抱えている状況だったが、U-24代表参加で韓国サッカーの助けになりたいというソン・フンミンの意志や韓国における五輪の重要性などを何度も説いて理解を求めたらしい。

ちなみにソン・フンミンは6月の代表招集期間中、「僕が本当に助けになるのであれば拒む理由はない」と発言。「クラブとも話さなければいけない」と付け加えていたが、実際にソン・フンミン自らが説得に動いていたわけだ。

(参考記事:ソン・フンミンが明かす「完敗の“日韓戦”」「東京五輪」「今後の去就」【一問一答／後編】)

前出の関係者によると、そうしたこともあり「最終的にはトッテナムのオーナー(ダニエル・リーヴィ会長)からも裁可を得ていた」らしい。

こうした内情が明らかになって、キム・ハクボム監督もソン・フンミンを選ばなかった理由について説明することが求められた。

U-24韓国代表は7月2日から最終合宿に突入したが、「ソン・フンミンにはありがたく申し訳ない」と口火を切ったキム監督は、「（ソン・フンミンは東京五輪出場の）意志を見せ、直接クラブに電話をして承諾を得た。招集を許してくれたトッテナムにも感謝している」としたあとで、ソン・フンミンの招集を見送った理由を次のように説明した。

「実はソン・フンミンを選ぶことのほうが簡単な選択だった。だが、それでも選ばなかったのは、（ソン・フンミンは）我々が守り、大事にしなければならない選手だからだ。

私はソン・フンミンを尊敬しているし、好きな選手でもある。ただ、長い目で見たとき、五輪代表の練習過程や試合日程に彼を参加させるということは、酷使させる状況になりかねない。

実際、ソン・フンミンは今季、本当にたくさんの試合に出場した。2020-2021シーズンだけで51試合に出場し、交代でベンチに下がったのはそのうち17試合だけだ。そんな中でさらに東京五輪で無理をさせれば、万が一のケガもあるかもしれない。

だからこそ、彼を守らなければならないと考えた。夜通し会議を行った。どうしようもできない決定だった」

つまり、キム・ハクボム監督は酷使を避け保護するためにソン・フンミンを最終メンバーから外したという。そして、その船外理由はソン・フンミン本人にも直接伝え理解も得たらしい。

なお、U-24韓国代表は昨日7月2日から最終合宿に突入。7月13日にU-24アルゼンチン代表、7月16日にU-24フランス代表と国際親善試合を行った後、翌7月17日に来日する予定だ。