Yahoo!ニュース

なぜシャビ・アロンソは続投を決めたのか?バイエルン、リヴァプール...ビッグクラブの関心と決断の時。

森田泰史スポーツライター
選手に指示を送るシャビ・アロンソ監督(写真:ロイター/アフロ)

人気銘柄であったのは、間違いない。

現在、欧州で有数の指揮官の一人がシャビ・アロンソ監督だ。レヴァークーゼンはブンデスリーガで、2位のバイエルン・ミュンヘンに勝ち点10差をつけて首位を快走(26試合消化時点)。加えてDFBポカールでベスト4に進出しており、ヨーロッパリーグではベスト8に進出している。

バイエルン戦でベンチから声を出すシャビ・アロンソ監督
バイエルン戦でベンチから声を出すシャビ・アロンソ監督写真:ロイター/アフロ

シャビ・アロンソ監督は2026年夏までレヴァークーゼンと契約を結んでいる。だが今季限りでユルゲン・クロップ監督が退任するリヴァプール、トーマス・トゥヘル監督が去るバイエルンが、虎視淡々とチャンスをうかがっていた。

ただ、シャビ・アロンソ監督は、レヴァークーゼンでの続投を決めている。

「インターナショナルウィークで、少し時間を持てた。会長と話し合い、決断した。私はレヴァークーゼンに残る。シーズン終了まで、全力で走り切る準備は整った。ここが、私がいたい場所だ。選手たちには、私の決断を伝えてある。感謝しているし、これが一緒に歩んでいくためにベストの方法だ」

「私のレヴァークーゼンでの仕事は、終わっていない。選手たちの成長を助けたい。ここでは、すべてがファンタスティックだ。私は若い監督だ。将来を見据えた時、これが最良の決断だと思った」

■シャビ・アロンソの監督キャリア

シャビ・アロンソ監督は現在、42歳だ。

ジョゼップ・グアルディオラ監督(マンチェスター・シティ/53歳)、クロップ監督(リヴァプール/56歳)、カルロ・アンチェロッティ監督(レアル・マドリー/64歳)、ディエゴ・シメオネ監督(アトレティコ ・マドリー/53歳)、ルイス・エンリケ監督(パリ・サンジェルマン/53歳)…。そう考えると、確かに、シャビ・アロンソ監督は若い指揮官である。

クロップ監督に退任で指揮官を探すリヴァプール
クロップ監督に退任で指揮官を探すリヴァプール写真:ロイター/アフロ

監督としてのキャリアは、レアル・ソシエダでスタートさせた。自身の出身地、そのBチーム(サンセ)で、本格的に指導を始める。ソシエダBでは、2020−21シーズンに2部昇格を達成。ソシエダBが2部昇格を達成したのは、1961−62シーズン以来、およそ59年ぶりだった。

■1部で指揮するチャンス

そのシャビ・アロンソ監督に、1部で指揮するチャンスを最初に与えたのがレヴァークーゼンだ。

レヴァークーゼンは2022年10月にシャビ・アロンソ監督を招聘した。当時、チームは獲得可能勝ち点24のうち、5ポイントしか獲得できておらず、17位に沈んでいた。

「シャビ・アロンソの就任に、賛成する人はたくさんいた。一方で、懐疑論があったのも確かだ」と語るのはジモン・ロルフェスSD(スポーツディレクター)だ。

「シャビ・アロンソは世界的なスター選手だった。しかし、監督としては、経験が不足していた。トップレベルのチームで指揮を執ったことがなかったんだ」

就任当初に苦しんだシャビ・アロンソ監督
就任当初に苦しんだシャビ・アロンソ監督写真:ロイター/アフロ

最初は、苦しんだ。初陣でシャルケに勝利したが、その後、6試合で未勝利が続いた。それでも、巻き返しを図り、2022−23シーズン、ブンデスリーガを6位でフィニッシュして欧州カップ戦出場権を確保した。

レヴァークーゼンはシャビ・アロンソ監督を信じた。その結果が、今シーズンの快進撃だ。

■レヴァークーゼンCEOの存在

レヴァークーゼンがシャビ・アロンソ監督を招聘し、そして信じられた背景には、一人の人物の存在がある。フェルナンド・カロCEOだ。

カロは2018年にレヴァークーゼンのCEO職に就任した。バルセロナ出身だが、若くしてビジネスマンとしてのキャリアをドイツで歩むことを決断。そして、レヴァークーゼンのトップ職にヘッドハンティングされた。

「2021年の段階でシャビ・アロンソは我々のリストに入っていた。将来的な監督候補のリストに入っていた。その一年後、監督交代を考えた時に、いくつか案を検討して、シャビに会いに行った」とカロCEOはシャビ・アロンソ監督の招聘を振り返る。

「我々はすぐに彼が求めていた監督だと悟った。選手としての経験、フットボールに対するビジョン…。即座にジモンと打ち解けた。我々はリーダーとしての監督を必要としていた」

■ヤング・プレーヤーの躍動

レヴァークーゼンは“青年指揮官”に率いられ、好調を維持している。

また選手たちも、若い。

フロリアン・ヴィルツ(20歳)、エセキエル・パラシオス(25歳)、ヴィクター・ボニフェイス(23歳)、エドモンド・タプソバ(25歳)、オディロン・コソヌ(23歳)、ピエロ・インカピエ(22歳)、ジェレミ・フリンポン(23歳)…。伸びしろのあるプレーヤーが揃っている。

負傷を乗り越えて成長したヴィルツ
負傷を乗り越えて成長したヴィルツ写真:ロイター/アフロ

若い監督に、ヤング・プレーヤー。レヴァークーゼンには、未来がある。

何より、今季、31年ぶりのタイトルが懸かっている。勝利や戴冠で、大きく化けるのが若い選手たちだ。そんなチームを見てみたい。無論、カロCEOやロルフェスSDの信頼はあるが、そのような野心がシャビ・アロンソ監督の決断に影響したのかもしれない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事