【フランス】クルマが家電になる革命 シトロエン超軽量電気自動車「Ami(アミ)」 (試乗動画付き)
気の晴れないニュースが多い昨今。
9月1日付け『ル・フィガロ』の一面がちょっといい感じだった。
「シトロエンが『アミ』で仕掛ける都会の運転革命」というタイトルと一緒に一枚の写真が掲載されていた。
写っている物体はおもちゃではなくて、公道を堂々と走れるれっきとしたクルマ。フランスの自動車メーカー「シトロエン」が今年発売した「Ami(アミ=友達)」という名前の超軽量電気自動車だ。
100%電気自動車といってもいまさら珍しくはないが、驚いたのは運転免許を持たない人でも、しかも14歳から運転できるというところ。
加えて、日本でいうと「ヨドバシカメラ」のような家電大型量販店、Fnac、Dartyという全国のチェーン店で扱っているというのも画期的だ。
「Ami」のスペック(仕様)は次のとおり。
サイズ 長さ2.41m 幅1.36m 高さ1.52m
重量 490kg(バッテリー込)
動力 6000W
連続走行可能距離 70〜75km
最高速度 時速45km
バッテリー 5.5kw
チャージ時間 3時間(家庭用220Vで充電可能)
2シートでトランクはなし。アクセルとブレーキはあるがギアはなし。シートベルトはあるがエアバッグはなし。ラジオなどの装備はないが、スマホのホルダーとUSBポートはある。内装はプラスティック、普通のクルマに比べて部品の数は四分の一と、徹底的にシンプルさを追求した作りだ。
結果、価格もコンパクトで、6,000ユーロ(約75万円)から買える。もしくは、48ヶ月の長期レンタルサービスを利用すると、初回2,641ユーロ、そのあとは月々19.99ユーロ(約2,500円)、初回100ユーロで2回目以降は月々78.49ユーロ(約1万円)などの選択肢から選べるようになっている。ちなみに、首都圏の公共交通機関が無制限で利用できる定期券(navigo)の1ヶ月料金が75.20ユーロなので、それと比べても遜色ない価格設定といえるだろう。
最高時速45キロということは、高速道や自動車専用道には入れないが、制限速度50キロの市街地、しかも渋滞の多いパリ市内などで運転するにはむしろ十分で、自宅から仕事場まで、もしくは子供の送迎がてらお買い物というような使い方が想定できる。
『ル・フィガロ』の記事によれば、すでに1,000件以上の契約があり、その8割は首都圏の人で、自宅でバッテリーのチャージができる環境にあり、2台目、3台目の自家用車としての使用。しかも42%は18歳以下が運転するという前提。親の気持ちとしては、子供をスクーターや電動のキックスケーターで公道を走らせるよりは安心というところだろう。
パリではだいぶ前からエコロジー政策を推進していて、車道が自転車専用道に転換されてきた。クルマの利用者からすると、渋滞がひどくなったとか、駐車スペースがなくなったとか不満が蔓延していたが、新型コロナによって、これまでの方針がむしろ吉と出た形だ。
また、ただでさえストで不通になったりしていた公共交通機関が、やはり新型コロナの影響で、利用者のほうから敬遠傾向にあるのも事実。結果、9月からの新学年度が始まってみると、自転車やキックスケーターがますます増えていて、「市民の足」の勢力図が激変している。
そんななかで登場した「Ami」は、さらに都会の道路の風景を変えていくだけでなく、クルマというものに対する私達の認識をも変えてゆく存在になりそうだ。
折しも、私は堀江貴文さんの『多動力』を読んだところで、そのなかの「もはや自動車の形である必要はなくて、ただの移動するイスになるかもしれない」という言葉を思い出していた。
堀江さんの書は2017年に刊行されたもので、件の言葉は、あらゆる「モノ」がインターネットにつながり、自動運転化が進み、自動車業界、インテリア業界といった産業のタテの壁がなくなってゆくという文脈で書かれたものだが、家電売り場に登場したクルマ「Ami」は、じつに象徴的。フットワーク軽く、次の時代へと向かう移動手段といえそうだ。
※9月7日の試乗体験を動画でご覧ください。