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チームメートになったサイヤング賞投手プライスと現役最年長投手ホーキンス。2人の黒人投手を直撃取材。

谷口輝世子スポーツライター

メジャーリーグでは、ウエーバーを経ずにトレードできる期限は7月31日まで。そのため、7月下旬には、優勝やポストシーズン進出を狙う球団が大物選手をトレードで獲得しようと動く。今シーズンは、川崎内野手が所属するブルージェイズが積極的な補強をした。

ロッキーズからトロウィツキー遊撃手とホーキンス投手を獲得。7月30日にはタイガースから2012年のサイヤング賞(最優秀投手賞)投手である左腕のプライス投手も獲得した。

プライスは8月3日のツインズ戦で移籍後初先発し、速球、変化球を自在に操り、8回を1失点、11奪三振の好投。

好投プライスを九回からリリーフしたのがロッキーズから移籍してきたホーキンス。投手では現役最年長の42歳だが、長い手足に引き締まった体型を維持し、95マイル、96マイルの速球も健在。ただ力で押すのではなくボールを微妙に動かしたり、変化球も効果的に使い三者凡退に仕留めた。「この年まで大きな手術をしなくて済んだ。力みなくリラックスして投げることを心がけている」とホーキンスは話す。

新加入2投手のリレーによる勝利だった。そして、もうひとつの見方をすれば、2人のアフリカ系米国人投手リレーによる勝利だったとも言える。

メジャーリーグではアフリカ系米国人が少ない状態が続いており、今シーズンの開幕時ロースターでは7.8%。人数では68人。

7.8%。メジャーリーグに占めるアフリカ系米国人選手の割合。ポジション別にも偏りが。

アフリカ系米国人選手は外野手に多く、投手は数えられるほどしかいない。筆者はアフリカ系米国人投手2人の継投は珍しいことのように感じた。

ベテランのホーキンスにたずねると「昨日の試合後、ツインズのハンター(アフリカ系米国人選手)とエディ・グアダード(元ツインズ投手で、現在はブルペンコーチ)と食事に行って、そこでその話をしていたんだ。アフリカ系米国人投手からアフリカ系米国人投手への継投で、同じチームからはこの2投手しか試合に登板しなかったという状況は、いつ以来のことかなって。あまり見たことがないなという話になった。デービッド(プライス)は素晴らしいピッチャーだし、僕にとってもいい試合になった」と話した。

ホーキンスは今の米国では野球はお金のかかるスポーツになっていて、大学から奨学金が出ても野球は全額支給されにくいことから、アフリカ系米国人は大学奨学金の全額支給を得やすいアメリカンフットボールやバスケットボールに人気が集まるのではないかと分析。これはツインズのハンターと同じ意見だ。

タイガースから移籍してきたプライスは意見が異なる。「理由は僕には分からない。これは別の人の意見なのだけど、野球はお金がかかるという理由だけではない。今はバスケットボールやアメリカンフットボールの競技チームに入るのもお金がかかるからね。野球はオールドファッションでゆっくりしたスポーツで、別のスポーツをしたいと思うのかもしれないと。僕もこの意見は、いいポイントをついているのではないかなと思った」とプライス。

2013年のレッドソックス対カージナルスのワールドシリーズでは、両チームを通じてアフリカ系米国人はレッドソックスの控えだったベリーだけだった。

大型トレードをしたブルージェイズ。補強した2人のアフリカ系米国人投手はポストシーズン進出に貢献し、大試合のマウンドに上がることができるだろうか。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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