7.8%。メジャーリーグに占めるアフリカ系米国人選手の割合。ポジション別にも偏りが。
ジャッキー・ロビソンデーに寂しい数字
今シーズン、メジャーリーグの開幕時の出場登録選手に占めるアフリカ系米国人の割合は7.8%であると15日のUSA TODAY紙が伝えた。故障者リスト入りしている選手も含めて868人のうち、アフリカ系米国人は68選手である。
米国出身の黒人選手の占める割合は1986年には19%だったが、ここ数年は8%ほどに落ち込んでいる。セントラルフロリダ大の2014年の調査によると、プロアメリカンフットボールのNFLでは67%、プロバスケットボールのNBAでは77%がアフリカ系米国人選手が占めていた。運動能力のあるアフリカ系米国人たちは、野球ではなく、アメリカンフットボールやバスケットボールを選んでいる。
1947年にジャッキー・ロビンソンがメジャーリーグの人種の壁を破り、4月15日は「ジャッキー・ロビンソンデー」として盛大に記念イベントが開催されているが、黒人選手の数は少ないのだ。
大学からの奨学金? メジャーリーグ機構の対応策
ベテランのアフリカ系米国人選手であるツインズのハンター外野手やヤンキースのサバシア投手は、メジャーリーグに黒人選手が少ないことについて、野球よりもバスケットボールやアメリカンフットボールのほうが大学の奨学金を勝ち取りやすいからだと考えている。ハンターは「大学でバスケットボールやフットボールをするほうが、(大学の)奨学金の全額支給を受けやすい」と話している。
もちろん、メジャーリーグ機構も手をこまねいていたわけではない。アフリカ系米国人選手を増やすための委員会を設置し、マイノリティ世帯の多く住む都市部でRBIという子ども向けの育成プログラムなどを展開してきた。大学がオファーする奨学金が少ないことをカバーするために、数年前にはメジャーリーグが大学に代わって、大学生選手に奨学金を出すことも議題にあがったほど。実際には、高卒や大学中退の選手が各球団との入団契約交渉で、オフや引退時に大学進学や復学するときには、最初にプロ契約したメジャーリーグ球団が大学の授業料を負担することを契約内容に盛り込むことで対応している。
育成プログラムは一定の成果
機構側の努力は決してムダではないことも証明されつつある。USA TODAY紙によると、2013年のドラフトでは一巡目でアフリカ系米国人が7人指名された。同紙によると1992年以来の高い割合だという。スポーツ専門テレビ局ESPNの有望選手トップ100にアフリカ系米国人選手が14人ランクイン。また、RBIプログラムには何らかの形でこれまでに200万人の子どもが参加しているという。数年後には黒人選手の割合が増加するかもしれない。
管理職やポジション別は
今シーズンは監督やGM職にもアフリカ系米国人は少ない。球団社長はホワイトソックスのウィリアムスとマーリンズのヒルの2人。監督ではマリナーズのマクレドン、GM職ではダイヤモンドバックスのスチュワートだけである。
メジャーリーグで活躍する日本選手をポジション別に見るとピッチャーが圧倒的に多い。しかし、アフリカ系米国人の投手や捕手はずっと少ない状態が続いている。アメリカ野球学会(SABR)の会員が1947-2012年までの選手の人種を調べた結果によるとhttp://sabr.org/bioproj/topic/baseball-demographics-1947-2012
ここ30年間は、アフリカ系米国人選手のうち、約6割は外野手であり、次いで内野手。アフリカ系米国人のうち投手は2割に届かず、捕手は極めて少ない状態が続いている。今季のタイガースの開幕投手はデビッド・プライスだったが、ミシガンクロニクル紙によるとアフリカ系米国人がタイガースの開幕投手を務めるのは1968年以来で114年の球団史で2回目のことだと伝えた。マウンドに褐色の肌を持つ投手があがっているし、褐色の肌を持つ捕手もいるが、ラテンアメリカ出身の投手であることが多い。
それは、人種間の身体能力の違いからくるものなのか、それとも、アフリカ系米国人選手が投手や捕手として育成される機会が静かな差別によって制限されているのだろうか。