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「ひどい!!全国学力テスト採点現場」の実態を訊いてみた

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

全国学力テストの採点現場がひどい、という話は以前から聞いていたが、ほんとうだった。正式名称は「全国学力・学習状況調査等」で、さまざまな問題があると指摘され反対も多いなかで、2007年から小学6年生と中学3年生を対象に文科省が実施しているテストである。

その導入で、各教育委員会、各学校間での「学力競争」が、ますますエスカレートしてきている。過去問や模擬試験など対策に時間をとられることで正規の授業に支障がでるなど、学校現場での混乱さえ招いている。

だからこそ全国学力テストの採点は厳密に行われている、と思うのは普通の感覚ではないだろうか。しかし、その採点がいい加減すぎる、という話が出まわっているのだ。話題づくりのデマ、という可能性もあるので、確認してみることにした。

そして、採点のアルバイトをしたことがあるという人物を探しあてた。「いい加減すぎる」といわれるなかでも多いのが「正解の基準があいまいすぎる」というものだが、その真偽を訊いてみた。

「ほんとうです。採点していて、唖然とすることが何度もありました」と、あっさり彼女は認めた。「いい加減すぎる」との噂は、ほんとうだったのだ。彼女に聞いた「いい加減」の一例をあげる。

たとえば、数学で「26」が答の問題があったとする。もちろん26と書けば正解なのだが、問題を解く過程の関係で「26/1(1分の26)」との回答があったりする。「それを、いったんは『正解と認める』としながら、翌日には『認めない』となり、さらに翌日には『認める』とされるようなことが、たびたびありました」と彼女は証言する。採点の基準がコロコロ変わるのだ。基準が変われば採点のやり直しになるわけだが、それがミスにつながる可能性もある。

そもそも、なぜ基準をコロコロ変える必要があるのか。「厳しい甘いで平均点が動くので、年ごとの格差が大きいと文科省が非難されかねないので、そうならないように基準をコントロールしてるんじゃないの、と仲間内では笑ってました」と、彼女はいう。もちろん、それは彼女らの推測でしかない。

何の意図かわからないものの、曖昧な基準で採点が行われていることは確かなようだ。それによって採点現場が困惑していることも事実だ。

そんなかたちで採点されている全国学力テストの結果に、教育委員会や学校は目の色を変えている。順位付けのためだけに、必死になっているのだ。そんな全国学力テストに意味があるのか、疑問は大きくなるばかりだ。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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