【英会話】You're smart! って言ったら、首を傾げられた。なんで?
仕事で英語を話し始めて20年ほどになりますが、英語を話すのに慣れてきたころにNative English Speakerたちに言われたのは、British EnglishかNorth American Englishのどっちかに統一した方がいいよ、ということでした。
私はfootballやアーサー・C・クラーク、J・G・バラードといったEnglandのSF作家が好きなんで、英語を話し始めるときBritish Englishで身に付けたんですが、実はちょいちょい北米語の文法や単語が混ざってたんですね。Native English Speakerにしてみれば、British Englishで話している奴なのに、突然North American Englishの言い方が出て来て、戸惑うんで、やめてくれということらしい。
まぁ、共通語のなかに、突然博多弁が入って来ると、戸惑いますからね。上京したとき、「悪いけど、この服、なおしといて」と彼女に言ったら、「どこか破れてるの?」って訊(き)かれましたもの。博多弁の「なおす」は「仕舞う」「片付ける」の意味なんです。それと同じことらしい。
そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は、読むとBritish EnglishとNorth American Englishの違いが判るお得なエッセイです。
頭、いいなぁ
このエッセイに登場してもらっているEnglish man の友人のRichは分子生物学のマスターまで修めた男でして、非常に論理的な思考をする男です。話していても切れがいい。まぁ、話が通じやすいのも助かるんですが、判っていても確認する態度を崩さないんで、わたしがふわっと思っていたことを言語化する機会をくれることもよくあります。そのRichと付き合いはじめの会話でこんなやりとりがありました。
大学で何を勉強したのかという話をしていたんですが、おれは現代思想(哲学)だよ と言ったんです。そしたら、一番印象に残っていることって何って訊かれた。まぁ、いろいろあるんですけど、その当時はあまり親しくもなかったんで、判りやすいところと思って、こんな話をしました。
If somebody helps somebody else, he’s already received some benefit. (誰かが誰かを助けるなら、その人は何らかの利益をすでに受け取っているんだよ)
これは恩師の中村雄二郎教授から言われた言葉でして、初め聞いた時、わたしはぱっと理由が判らなかった。でも、Richはうなずきながら、なんでって聞いて来た。理由は想像していて、確認したかったんでしょうね。わたしはそのときのことを思い出して、
Because that means having his exposed mind accepted. (なぜならそれはその人の無防備な心を受け入れてもらっていることを意味するから)
と続けると、Richはさらっと、
He did what he wanted to do. (やりたいことをやったわけだからね)
と言って来た。
情けは人の為ならず ではないですが、人を助けたらなにかお返しがある みたいに考えるのが普通ですからね。そういう思い込みを越えて、核心を突いてきやがった。こいつ、なんて頭の良さだ、と思って、わたしこう言ったんです。
You're smart!
そしたら、Rich、一瞬首を傾げる。
みなさん、わたしの英語、どこがBritish Englishじゃないか、お気づきでしょうか?
問題は、smart にあります。このsmart という単語は、頭がいい 賢明な という意味で使われることが多いですが、これNorth American Englishなんです。British Englishでは、清潔できちんとした見た目の とか、清潔で魅力的な(服) という意味が主流で(from Oxford Learner's Dictionaries)、頭がいい 賢明なという意味はすぐに伝わらないんですね。とくに、わたしが話していた英語がBritish 発音だっただけに、違和感があったわけです。
この手の違いには、
ポテトチップを
North American Englishではpotato chips、
British English ではcrisps、
フライドポテトを
North American EnglishではFrench fries、
British English ではchips、
茄子を
North American Englishではeggplant、
British English ではaubergine
などがあります。
文法でも、must not はNorth American Englishで、~するな と ~のはずがない ですが、British English では、~するな だけです。
英語の話し初めは、この辺りを気にする必要はないと思いますが、慣れてきたらちょっと気にして、どちらかに統一する方がNative English Speakerを戸惑わせずに済みます。みなさんは、共通語に博多弁を混ぜて、「どこか破れてるの?」って言われないようにしてください。
と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。
おっと、English man のRichにきちんと 頭、いいなぁ! と伝わる英語を書いていませんでした。brilliant, bright というのが正解ですが、口語でよく使うのは、
You're brainy!
です。参考にしてください。
イラスト 大橋啓子