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【英会話】夏の特別編2 the plays the piano well にtheがつくのはなぜ?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 仕事で英語を20年ほど話していますが、話し始めたころに困ったのは、a やthe と言った冠詞です。かなりの確率で間違えました。
 普段使いなら間違えたっていいんですけど、人様に英文法を伝えたり、英文法をネタにした小説を出版社に頼まれて上梓したりするとなると、勝手が違ってくる。そんなに間違えることができませんからね。こまった。

 そこで、Native English Speakerたちを質問攻めして、彼らの思考の流れをつかんで、大学で習得した現象学を使って自分なりの理窟を作りました。手前味噌でお恥ずかしいですが、この理窟なかなか優秀で、今ではほとんど間違えずにすんでいます。あくまで私家版ですが、徳田流冠詞の奥義を夏の特別企画として公開します。今回は全4回の内の第2回です(第1回はこちら)。

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彼はピアノが上手いね。

 第1回で、Native English Speakerは名詞に冠詞(the, a(an))をつけるのではなく、見えているモノをカテゴライズして(抽象のレベルを決めて)、そのあとに名詞を置く というまったくわれわれNative Japanese Speakerとは違う現実の切り取り方をするというお話はしました。

見えているモノが
特定のレベルか?⇒the
どれでもいいレベルか?⇒a(an もしくは複数のs) 
ふわっとした概念のレベルか?⇒無冠詞 
という抽象のレベルを決めたいんですねぇ、Native English Speakerって人々は。

 それを踏まえると、

彼はピアノが上手いね。 
=彼はピアノを上手に弾く。

という文は、たしかに

He plays the piano well.

the piano にするべきだと私は納得するんですが、みなさん、なぜかお判りになるでしょうか?

 ポイントはこの日本語をそのまま英語にせずに、いったん内容をイメージすることです。
 彼はピアノが上手い ということは、その話し手は、彼がピアノを弾くところを見たか、聞いたか、したのでしょう。そうすると、話し手の目の前には、男性がピアノに向かっている場面がある(あった)はずです。
 そこにある風景は特定のレベルでしょうか? どれでもいいレベルでしょうか? それともふわっとした概念のレベルでしょうか? 

 そこに一台、もしくは何台かピアノがあったとしても、彼が上手に弾いているピアノは特定のそのピアノですよね。なので、特定のレベルと判定してthe を選び、piano を置くわけです。

 a もしくは複数のs と違って、the はアグレッシヴに現実を切り取るとも言えます。なんといって、他のものとは違うよ と飛び込んでくるわけですから。なので、私はthe のことをよくスポットライトと表現します。

 伝えようとしている現実の中で、スポットライトが当たっていると思ったら、the を使う。そんなイメージを持つとthe の使い勝手はすごく良くなりますよ。お試しください(じつは、このアイディアはハイデガーの企投という考えがもとになっているのですが、ご興味のある方は、夏の読書に「存在と時間」をどうぞ)。

 さて、次は最後に残った概念のレベルです。概念のレベルってどういうこと? と疑問を持たれると思いますが、それは、第3回をどうぞ。こちらです。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ英文法をマスターし、学芸大附属・ICU高校・早稲田高等学院・慶応高校・渋谷幕張・早稲田大学・慶応大学など有名高校・大学に多くの生徒を合格させる。その実績を買われ、英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職。担当した1600名の受講生のVERSANTのスコアの平均伸長点は5.3を超え、3か月の最高伸長点は21を記録する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任し、受講生の英会話力向上に尽力し、業績を伸ばす。現在は独立し、英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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