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【英会話】It's easy って言ったら、レモン? って言われた なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 仕事で英語を話すようになって20年ほどになりますが、英語は理窟っぽい言語だなとよく思います。筋が通ってないとすぐに変な顔されちゃう。
 例えば、桜を見るために公園に行った というときに、まぁ、~ために だからfor でいいかと思って、for seeing the cherry blossoms なんて言うとすぐに首を振られる。この ために って、目的ですからね。for doing は原因なんで意味が違ってきちゃうんです。目的なら、to do を使わないといけません。

 そういうわけで、英語を話すときは筋を通すことを意識するわけですが、Native English Speakerだって、そればっかりじゃ疲れるようで、親しい相手だと理窟度外視で巫山戯(ふざけ)てくることもある。こういう時に、ぱっと切り替えられればいいんですが、根が真面目なのか、ニブいのか、上手く切り替えられないことがよくあります。笑いをとれるところを逃すので、ちょっと悔しい。

 そんな私の失敗談や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は読むと英語で巫山戯る言い方を得られるお得なエッセイです。クリスマスのパーティに使ってください。

「簡単だよ」「レモン?」

 最近のわたしの仕事は文章書きが中心になってきていまして、もっぱらこのエッセイやテキストの執筆、あとはお客様に英語の問題をメールなどで送って、返信のご質問にお答えしたりするサーヴィスをやっています。ほかには、英会話のレッスンを受けている受講生が納得できてなさそうな英文法の疑問なんかを、講師に持ち帰って来てもらってのフォローです。この辺りは難しいところなんです。英会話ができないんで、英会話のレッスンをするわけですが、その説明が英語なんでピンと来ないことがあるんですね。卵が先か、鶏が先かみたいになるんで、そこで私がちょっと手助け。

 このあいだもRichが過去完了の質問を持ち帰って来まして、~した なのになぜ過去形じゃなく、過去完了を使うの? というちょっと込み入った質問。まぁ、英会話の初心者に英語で説明するのはかなり難しい。

 Richから質問の趣旨を聞いて、ああ、そこかと思ったんで、いいよ、おれのほうでやっとくよ、とRichに言うと、さすがだねと褒められる。ほめられれば調子に乗るわけで、わたしは、

It's easy.

って言ったら、Rich、のやつ、にやっとして、

A lemon?

って言ってきた。
 私は一瞬フリーズ、なんでレモンがでてくるんだ? って画面くるくるになって、

Pardon?

って言っちゃう。そしたら、Richはすんげ~残念そうな顔。せっかくの振りを逃しやがって、この野暮天って言ってるのが聞こえるよう。悔しい。

 さて、みなさん、Richの振りにどう返せばよかったのか、お判りになるでしょうか?

 みなさんは、英語にも地口というのがあるのをご存じでしょうか? ていうか、そもそも地口って何? と思われる方のためにちょっと説明すると、有名なのは寅さんの売り口上。

「結構毛だらけ、ねこ灰だらけ」

って聞いたことありません? ただ、結構だ(いいものだ)ということを言いたいんですが、それに意味のつながりのない言葉を足して、リズムよく口上を言ってるあれです。

 英語にもそれがありまして、pun(パン)と呼ばれます。それの有名なもので、簡単だよ を巫山戯て 楽勝さ、みたいちょっと軽いノリで言いたいときに言うフレーズがあるんです。それが、

easy-peasy lemon-squeezy!

 easy 以下には全く意味はありません。ただ音が似てるから続けてあるだけ。でも、レモンって単語が入ってるんで、Richはレモン? って振ってくれた。私がこのpunを思い出して、すかさず、Yeah! Easy-peasy lemon-squeezy! って言えば、盛り上がったはずなんですが、Pardon? じゃあ、盛り上がるものも盛り上がりません。痛恨でした。自分のニブさがこんなに恨めしく思えたことはありません。トホホ。

 実はこういうpun は、帰り際によく使われます。たとえば、

See you soon, raccoon.

raccoon に意味はありません。soon とraccoon が韻を踏んでるだけです。あとやり取りで有名なのは、

See you later, alligator.

 これも、alligatorに意味はありません。later の韻を踏んでいるだけです。これの返しは、

After a while, crocodile.

です。while とcrocodile で韻を踏んでいます。ワニにワニで返すのはおしゃれですね。

 来週はクリスマス。Native English Speakerが参加するパーティも多いと思います。別れ際に使ってみてください。ウケますよ。みなさんはニブいわたしみたいに振りを逃さないでくださいね。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ英文法をマスターし、学芸大附属・ICU高校・早稲田高等学院・慶応高校・渋谷幕張・早稲田大学・慶応大学など有名高校・大学に多くの生徒を合格させる。その実績を買われ、英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職。担当した1600名の受講生のVERSANTのスコアの平均伸長点は5.3を超え、3か月の最高伸長点は21を記録する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任し、受講生の英会話力向上に尽力し、業績を伸ばす。現在は独立し、英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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