エリザベス女王陛下と競馬、ディープインパクトの曾祖母は女王の愛馬だった
エリザベス女王陛下と競馬
2022年9月8日、イギリスの君主として70年にわたり在位したエリザベス女王陛下が96歳で亡くなった。エリザベス女王陛下は競馬を深く愛したことでも知られており、エリザベス女王陛下の逝去を深く悲しむ競馬ファンは数多いことだろう。エリザベス女王陛下が日々、競馬新聞を読み、レースを見て楽しまれてきたエピソードは競馬ファンにはよく知られていたからだ。
イギリスは近代競馬発祥の地であり、17世紀初頭から競馬が行われてきた。
イギリス王室との繋がりも深く、ロイヤルアスコット開催が行われるアスコット競馬場は1702年から1714年に在位したアン女王がアスコット競馬場を創設した。
ロイヤルメンバーが競走馬を所有することも多く、エリザベス女王陛下も数多くの馬たちを所有している。エリザベス女王陛下は子供の頃から乗馬を楽しんでおり、たくさんの馬たちを所有し競馬や馬の福祉に深く関わってきた姿は英王室のtwitterでも紹介されている。
ディープインパクトの曾祖母の勝利を見るため、渡仏した女王陛下
エリザベス女王陛下と日本の競馬との繋がりも深い。
GIレースであるエリザベス女王杯は、1975年にエリザベス女王陛下が来日されたことを記念して1976年に創設された。
そして、そのエリザベス女王杯の1987年のJRAのCMは特に印象深いものだった。
「1974年夏、エリザベス女王にフランス訪問の予定はなかった。
しかし、彼女は強引に旅立った。愛馬の勝利を見るために。
英国議会はこの愛すべき、いち競馬ファンのわがままに寛大であった。」
その愛馬の名はハイクレア。
1974年にイギリスの1000ギニー(日本の桜花賞に相当)を勝ち、英クラシック競走制覇。続戦は、英国のクラシックではなく、フランスのオークスに照準を定め、このレースを見るためにエリザベス女王陛下はフランスへ渡ったのだ。
そして、のちにこのハイクレアは日本の名馬・ディープインパクトの曾祖母となる。
イギリス王室とロイヤルアスコット開催
2020年6月、エリザベス女王陛下が14歳のポニーに乗る姿も公開されているが、実はこの姿が公開されたころは世界が新型コロナウイルスによって混乱している真っ最中であった。
そして、この半月後、新型コロナウイルス感染症の影響でロイヤルアスコット開催が無観客で行われることになる。
毎年6月に行われるイギリス王室が主催して行われるロイヤルアスコット開催(Royal Ascot Race Meeting)には、エリザベス女王陛下が自ら臨席することで知られていた。
しかし、2020年のロイヤルアスコット開催は、エリザベス女王陛下も観戦を見送った。
そんな中、ロイヤルアスコット開催のレーシングプログラムにエリザベス女王陛下はメッセージを寄せ、競馬関係者やファンへの愛あふれるメッセージを贈り、多くの人々を勇気づけた。
このロイヤルアスコット開催は、エリザベス女王陛下の笑顔が数多くみられることでも知られた。そして、エリザベス女王陛下が競馬関係者と談笑する姿をみて、「いつか自分もその輪の中に入りたい」と憧れた声は何度となく聞く。
このロイヤルアスコット開催では、英国王室の方々が馬車に乗ってお出ましになるのが恒例だった。そして、エリザベス女王陛下の服装の色は庶民の賭けの対象にもなった。
香港競馬 QEII Cup の創設と日本馬
香港で毎年4月に行われるクイーンエリザベス女王2世カップ(QEII Cup)は1975年にエリザベス女王陛下が香港・ハッピーヴァレー競馬場に訪れたことを記念して創設されたレースだ。
日本馬では2002年、2003年にエイシンプレストン、2012年にルーラーシップ、2017年にネオリアリズム、2019年にウインブライト、2021年にラヴズオンリーユーが制している。
女王のディープインパクトへの想い
先述のとおり、ディープインパクトの曾祖母のハイクレア(Highclere)はエリザベス女王陛下の所有馬だった。
そんな背景もあり、エリザベス女王陛下は自らの所有馬の血を受け継ぐディープインパクトへ深い想いを感じていた。自ら所有するディプロマを日本のノーザンファームへ送り、2017年から2018年にディープインパクトを種付けさせた。生まれた2頭の競走馬は英国で出走している。
これほどまで競馬を深く愛したエリザベス女王陛下の逝去、心より哀悼の意を捧げます。