さくらの開花前線と山火事前線、13年前は山火事で死者も
さくら開花前線と山火事前線
さくらの開花前線(開花日の等期日線図)は、さくらの開花が同じ地点を結んで地図上に表したものです(図1)。
さくらの開花前線は、3月下旬に九州南部~関東南部の平野部から北上、あるいは、麓から山頂に向かってすすみ、5月のはじめに北海道に上陸します。
さくら前線と同じ頃に、同じように南から北へ、平地から山へと移動するのが山火事前線です。
これは、林野火災(山火事)が多発する地域を結んだ線のことです。
山火事の原因はいろいろありますが、日本では落雷などの自然現象による山林火災はほとんどなく、人間の不注意によるものといわれていることから、春に多く発生してます。
これは、乾燥した日が続き、枯れ木や下草が乾いてくることに加え、雪が解けたことで山菜取りやハイキングなどで多くの人が山に入り始めるからです。
また、草本の新芽が出ない早春には野山の枯れ草を焼く山焼きもあります。
新たに出る若草のための肥料とする効果があるとか、害虫を焼き殺す効果もあるものと考えられています。
このように、春は野山で火を扱うことが増えることに加え、強風やフェーン現象、乾燥した日々が続くなど、いったん林野火災が発生すると大規模になりやすい季節でもあります。
林野庁と消防庁では、例年、3月から5月に山火事が多く発生していることから、毎年3月1日から7日までを「全国山火事予防運動」実施期間としています。
令和4年(2022年)の統一標語は「山火事を 防ぐあなたの 心がけ」です。
13年前の野焼き事故
今から13年前、平成21年(2009年)3月17日に大分県由布市湯布院町では、野焼きをしていたところ、急激に火が燃え広がって4名が亡くなるなどの事故が発生しました。
当日は、移動性高気圧に覆われ、乾燥注意報が発表されていました(図2)。
気象衛星「ひまわり」をみると、西日本にはほとんど雲がありません。
中部から東北地方の山岳地帯で白い部分は、一枚の写真では区別しにくいのですが、時間を少しずつずらして並べた動画で動きがないことから、山は積雪で覆われていることが分かります(図3)。
平成21年(2009年)は、3月から5月にかけて林野火災が全国各地で発生し、前述の由布市のほか、4月に宮城県や山梨県で大規模な火災が発生しています。
戦後最悪の山林火災の一つで、18名の消防士が亡くなった広島県呉市の林野火災が起きたのも昭和46年(1971年)4月27日のことで、春先の山林火災です。
災害復旧工事作業員の焚き火の不始末で出火し、晴天で乾燥していたところに、最大瞬間風速14メートルという強風が吹くという悪条件が重なり、飛び火によって急炎上現象によって、想定外の速度で急斜面を炎が下ってきたことによる惨事と考えられています。
火災気象通報
火災警報は、屋外での火の使用の制限等が行われますので、大雨警報や暴風警報などの気象警報と違って、強制力がある警報です。
気象庁では、市町村長が発令する火災警報の基礎資料として、気象の状況が火災の予防上危険と認められるときに、都道府県知事に対して火災気象通報を行っています。
そして、都道府県知事は、火災気象通報を受けた場合は、直ちにこれを市町村長に通報します。
火災気象通報を行う基準は、担当気象台と都道府県の協議により、その地域ごとに、実効湿度、最小湿度、風速により決められています。
ここでいう実効湿度は、木材(生木ではない例えば柱)の乾燥度を表すもので、当日の平均湿度と前日の実効湿度を用いて計算されます。
平均湿度が低い日が続く場合は、実効湿度がどんどん低くなります。例えば、前日の実効湿度が50%、当日の平均湿度が0%なら、実効湿度は35%となり、翌日も平均湿度が0%なら実効湿度は約25%となります。
当日の実効湿度=0.3×(当日の平均湿度)+0.7×(前日の実効湿度)
北日本から東日本の山間部などでは、まだ積雪が残っていますが、これからは積雪の範囲はどんどん狭くなり、入山する人が増えてきます(図4)。
さくらの開花はニュースでよく報じられますので、このニュースが流れたら、山火事の危険性が高くなっていると、今一度の再確認が必要です。
図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。
図4の出典:ウェザーマップ提供。